「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

横浜F・マリノスをJ優勝に導いたCFGと世界の国際的サッカーグループ 発展とその課題とは

2019 12/31 06:00Takuya Nagata
サッカー_横浜Fマリノス対マンチェスター・シティの試合Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

複数クラブを所有するシティ・フットボール・グループ

J1で15年ぶりに優勝した横浜F・マリノスが、マンチェスター・シティの持株会社であるシティ・フットボール・グループの一員であることは、よく知られている。しかし、その背景については、今まであまり詳しく語られてこなかった。

マンチェスター・シティとCFGの拡大のきっかけを作ったのは、2008年にオーナーになったUAEの王族だ。その巨大な資本をバックボーンにして、施設の拡充、スポーツサイエンスの活用、データ分析を推進。

CFGは、イングランドから世界に進出し、2012年にニューヨーク・シティFC(米国)、2014年1月にメルボルン・シティFC(豪州)、2014年5月に横浜F・マリノス、2017年4月にCAトルケ(ウルグアイ)、2017年8月にジローナFC(スペイン)、2019年2月に四川九牛(中国)、2019年11月にムンバイ・シティFC(インド)、過去にはアフリカのアカデミー等を傘下に収め、5大陸全てに関連クラブを持つ、世界的なサッカー財閥を形成した。

CFGの時価総額は、37億3,000万ポンド(約5,500億円)にものぼる。複数の地域で、サッカーの様々なバリューチェーンに携わった結果巨大なネットワークを構築。その利益とネットワークを生かし「1+1=3」のような相乗効果を生み出すことがCFGの戦略の基礎となる。

サッカーの実務レベルでは複数の地域で、多くのスカウトが、多くの試合を視察し、多くのデータや情報を収集し、多くの選手をスカウティングすることが出来る。そして、これら膨大なデータに基づいて選手への投資の決断を行う。また、グループ内での移籍も頻繁に行われており、グループ全体で柔軟に戦力を整えることが可能だ。

CFGだけではない、国際的なサッカークラブ・グループ

複数の関連クラブを持つグループは、CFG以外にもある。

スペインのアトレティコ・マドリードは2014年、インドプレミアリーグのアトレティコ・コルカタ(現ATK)創設に参画し、2016年には、フランス・リーグ2のRCランスの株式35%を取得。仏リーグ1昇格に向けて選手を連れてきた一方で、フランスからのタレント発掘も目的としているとされる。2017年には、メキシコ2部アトレティコ・サンルイスの株式50%を取得した。国際展開をする上で、メキシコを重要な市場と位置づけているのが分かる。

英国の投資会社ENICグループは、これまでにトッテナム(イングランド)、グラスゴー・レンジャーズ(スコットランド)、SKスラヴィア・プラハ(チェコ)、AEKアテネ(ギリシャ)、LRヴィセンザ(イタリア)、FCバーゼル(スイス)といった欧州の複数クラブの株式を保有してきた。

イタリアのポッザ家は、一時期、ウディネーゼ(イタリア)、ワトフォード(イングランド)、グラナダCF(スペイン)の株式を所有していた。

レッドブルというブランド企業が主体となって、世界中のクラブ運営を行っているケースもある。2005年にSVオーストリア・ザルツブルク改めレッドブル・ザルツブルのメインスポンサーになると、2006年には米国MLSメトロスターズを買収し、ニューヨーク・レッドブルズに改名。2007年には、レッドブル・ブラジルを創設。2009年には、ドイツ下部クラブの経営権を取得すると、クラブ名をRBライプツィヒとし、ブンデスリーガ昇格を果たした。

世界にまたがるクラブネットワーク、公平な競争の担保が課題

欧州サッカー連盟(UEFA)によると、欧州の1部8クラブに、国内のクロスオーナーシップ(複数クラブの株式保有)が見られる。また1部14クラブに欧州内のクロスオーナーシップが見られる。欧州内でのクロスオーナーシップではイングランドのクラブがベルギークラブと関係を持っているケースが良く知られている。

そして欧州の1部7クラブに、他の大陸でのクロスオーナーシップが見られる。この代表例が、マンチェスター・シティだ。

ネットワークを形成することでクラブが力をつけることはCFGの例からも分かるが、一方で課題も存在する。その一つは同じグループに所属するクラブチームが同じ大会に出てしまう場合に起きやすい。レッドブル・ザルツブルクとRBライプツィヒが共に欧州チャンピオンズリーグに出場する際には、競争の公平性をめぐり、議論が巻き起こることとなった。

今後、グループが巨大化するにともない、こういった問題はますます増えてくるだろう。公平性を保つために何らかの対策を講じる必要性もあるかもしれない。