平野佳寿は不運なだけなのかもしれない
昨年8月17日、当時ダイヤモンドバックスに所属していた平野佳寿について、地元メディアのazセントラルはこんな記事を書いている。
「(平野は)不運なだけかもしれない」。
内容を要約すると、2018年のルーキーイヤーに比べて2年目の成績は芳しくなかった。しかし、スタットキャストから算出される期待値のデータは改善しているため、ポテンヒットやシフトの穴を抜けるようなヒットといったアンラッキーが重なったのではないか、ということである。
平野は過小評価されがちだ。それはリリーフという役割や、19年までダイヤモンドバックスという、どちらかと言えば地味な球団に在籍していたからかもしれない。ただ、スタッツを丁寧に見ていくと、実に安定した、信頼のおける投手だとわかる。
平野が過小評価される理由
MLBでは現在、全球場に選手の動きやボールの軌跡を測定し、数値化する「トラッキングシステム」が導入されており、打球速度や野手の落下地点までの到達時間などが計測できる。つまり、これまでの打率や防御率といった結果の成績だけでなく、プレーの質で選手の能力を分析できるようになった。azセントラルの記事では、平野の成績に関して、このトラッキングデータから算出された期待値と実際に残した数字に差があることが示されている。
昨シーズン、平野の被打率は.249だった。決して悪い数字ではないが、トラッキングデータから算出された被打率xBA(Expected Batting Average)(※)は.217と、より優れた数値となっている。
※xBAとは:実際にヒットだったかどうかではなく、ヒットになる確率が高い打球を打たれたかどうかを表した指標。打球速度や打球角度、野手のスプリント・スピードなどから、その打球がヒット性か否かを判断し算出される。
被打率とxBAの差(.032)は、750球以上投げたMLBの投手、373人の中で25番目に大きかった。ということは、本来なら打ちとっているような打球をヒットにされてしまうケースが多かったと推測できる。実際、平野の被ハードヒット率(ヒット性の打球を打たれた割合)は29.3%と低く、MLBのなかでもトップ6%に入るほど素晴らしい数字だった。
xBAや被ハードヒット率は、トラッキングデータが活用されるようになってから誕生した、新しい指標だ。平野が過小評価されがちな理由の一つには、彼の実力を防御率やセーブ数といった伝統的な数字だけでは測れないことがあるのかもしれない。
今シーズンはクローザーとして期待
今シーズン、平野はダイヤモンドバックスからマリナーズに移籍した。マリナーズのディポトGM は「彼の経験とバットの芯を外す能力は、ブルペンに安定性をもたらすだろう」と語っている。マリナーズは再建中の若いチームであり、今年36歳になる平野は40人ロースター枠のなかで最も年齢が高い。リリーフ陣のなかに彼ほどの経験と実績を持つ選手はいないため、クローザーを任される可能性もあるだろう。
キャンプ初日の13日、平野は「チームで一番多く登板して、投げられるようにしたい」と今シーズンに向けての意気込みを口にした。
マリナーズは昨シーズンに引退したイチローをはじめ、多くの日本人プレイヤーが活躍しているチームだ。現在は菊池雄星が在籍しているため、菊池と平野による日本人リレーを見る機会も増えるだろう。また、同じア・リーグ西地区にはエンゼルスも所属しており、大谷翔平との対戦も楽しみだ。
2020年は、ぜひ平野佳寿に注目したい。
※日付は現地時間