本塁打よりも魅力は「出塁率」?
筒香嘉智の移籍先がレイズに決定し、いよいよ来季から活躍の場を大リーグに移すこととなる。
筒香といえば、DeNAで長く主砲の座に座り、WBC(2017年)でも侍ジャパンの4番を務めた日本を代表するスラッガーだ。2014年から6年連続で20本塁打以上を放ち、キャリアハイは2016年の44本。これまでプロ10年で通算205本塁打と、“横浜の空高く”描くアーチでファンを魅了してきた。
ただ、移籍を報じたMLB公式サイトの記事によると、評価されたのは一発の魅力だけではないようだ。「出塁率」こそが筒香の特徴として重要で、レイズ打線の一員として期待されている部分だという。
筒香はNPB通算で.382の出塁率を残し、2015年(.400)、2016年(.430)は2年続けて4割以上の数字をマークするなど、安定して高い出塁能力を示してきた。今季の出塁率.388はリーグ6位だが、<出塁率-打率>で選球眼を評価するIsoDの.116は同3位で、選球眼の良さも数字に表れている。
歴代日本人打者も出塁率には苦戦
日本人打者のメジャー挑戦を振り返ると、現在は大谷翔平が快進撃を見せている。だが、それまでは日本でシーズン50本塁打を放った松井秀喜も30本超えが1回のみであり、長打力に関しては壁にぶつかってきた印象だ。
では、筒香に期待される出塁率に関してはどのような結果になっていただろうか。以下は大リーグでレギュラー格としてシーズンを通してプレーしたことのある打者を対象に、メジャー挑戦までの期間のNPB通算出塁率と、MLB通算出塁率を比較している。

これまでMLBでの通算出塁率がNPB時代を上回った打者はいない。
MLB通算出塁率の最高は松井秀の.360だが、日本時代からは.053下がった。松井秀のほかに、イチロー、城島健司、青木宣親と大リーグで好成績を残してきた打者たちも通算出塁率は5分以上下がっている。松井稼頭央は.040、福留孝介は.038のマイナスとなった。
筒香と同じく、NPB時代にシーズン40本塁打を放った左打者である岩村明憲はマイナス.021と、出塁率の下げ幅が少なかったが、一方で長打率は.144ダウン。レイズ時代は1番打者として起用され、長打を捨てて出塁重視にモデルチェンジすることで活躍の場を見出した。新庄剛志、井口資仁も出塁率はNPB通算とあまり変わらなかったが、長打率はダウンの結果となった。
NPB通算と変わらない数字を残しているのは大谷だ。成長途上の段階で渡米したということもあるが、出塁率はマイナス.007にとどめ、長打率は.032プラスになっている。
レイズのチーム事情も考えると……
現役の大谷を除いては、長打だけでなく、出塁率に関してもこれまでの日本人打者が苦戦してきているのは事実だ。だが、守備や走塁を評価されたことでメジャー契約を掴んだわけではない筒香は、バットで期待される結果を残していくしかない。
6年ぶりにポストシーズンへ進出した今季のレイズ打線のチーム成績を見ると、本塁打数はリーグ11位の217本。対して出塁率はリーグ6位の.325で、出塁率に重きを置いてチームが編成されていることがうかがえる。
しかしこのオフ、今季チームトップの出塁率.369をマークしたファムがトレードで退団。交換要員の一人としてレイズ入りした前パドレスのレンフローは今季33本塁打をマークしているが、出塁率は.289と低かった。
ファムが抜けた状況で、レイズにとって筒香の出塁能力は魅力。筒香にとってもレギュラーが確約されていない中、出塁率はライバルを押しのけてポジションを掴むカギとなるのではないだろうか。過去の流れを覆すような数字を残し、大リーグでも主軸として活躍する姿を見せてほしい。