毎年接戦のハンデ戦
2020年8月23日(日)に小倉競馬場で行われる北九州記念だが、芝1200mのハンデ戦として定着したのは2006年から。その年はコスモフォーチュンがコンマ3秒差をつけて優勝したが、実はそれが最大着差。2007年以降も勝ち馬と2着馬の差は全てコンマ3秒以内の決着だった。今年もハンデ戦らしい大熱戦を期待していいだろう。
なお、先週の小倉記念と違って北九州記念は例年とほぼ同時期に行われる。このレースに限っては開催が短縮された影響はないとみて、いつも通り過去10年のデータを基にして検証していく。

まずは年齢から。昨年は3歳馬ディアンドルが内から抜けて2着。成長力を見せつけられたのだが、3歳馬が連対したのは昨年を含めて2度だけ。このレースで活躍しているのは4歳馬で、7頭が連対して連対率は25%近くある。
5歳馬も同じく7連対しており、4、5歳だけで14連対。6歳馬も3勝しているが、連対率が10%を切っており信頼度は高くない。7歳以上だとさらに数字が落ちてしまう。
今回は牝馬の出番

先週行われた小倉記念は牝馬より牡馬の方が成績が良かったが、この北九州記念は牝馬の方が勝率、連対率とも上。数字にして約2倍の差があるのだから、牝馬優勢のレースと考えていいだろう。昨年も1~4着が牝馬だった。
またハンデだが、バラつきがあった小倉記念と違って、このレースは傾向がはっきりしている。性別で分けると分かりやすく、牡馬は55キロを背負った馬の成績がよく、牝馬は52~53キロ、または55~56キロを背負った馬が勝率10%を超えている(54キロは連対率0%)。牝馬の56キロは牡馬でいうところの58キロ。
ハンデが重い牡馬は見送りで、逆に牝馬は買いだ。斤量が軽すぎる馬は総じて苦戦の傾向となっている。

ただ斤量が軽い馬が苦戦の傾向といっても、条件戦を経て挑戦してきた格下馬の成績が悪いわけではない。特に2勝クラスからここへ挑んできた馬は5頭いて2連対、3勝クラスからも5頭の連対馬が出ている。逆にGI、GⅡから来た馬は3着が最高で、連対した馬はいない。

「夏は牝馬」のほかに「夏は格より出来」という格言もあるが、このレースは前走1着馬の成績が【4-7-3-18】。連対率が35%近くもあり、このレースで連対した馬の半分以上が前走1着ということになる。前走を勝って調子がいい馬に逆らう手はない。
また、前走で1、2番人気に支持された馬も12連対と好成績を残しているが、このうち10頭が牝馬だった。また、前走が1番人気に支持されていた牝馬に限ると【2-5-3-3】となり、連対率が50%を超えている。それなりにサンプル数があり、それで半分以上が連に絡んでいるのである。かなり信頼していいデータといえるだろう。今年はこれに当てはまる馬がいればいいのだが、果たして。
今回は2頭が抜けている
このレースは「牝馬優勢」「4歳馬、次いで5歳馬」「牡馬は55キロ、牝馬は52~53、または55~56キロ」「前走GIを走った馬は苦戦」「前走1着馬、前走1、2番人気は好走率高し」というデータとなった。
今回は登録の時点で4歳馬がアウィルアウェイ1頭だけしかいなかったので、まずはこの馬を検証してみる。性別、前走クラスは問題ないが、前走着順、前走人気はクリアならず。ハンデは55.5キロだが、実はこれがくせ者。この0.5キロを軽くしてもらったのか、それともオマケに加えられたものか意見が分かれるところだが、余計に課せられたと見る向きが多いように思う。筆者もその一人である。このレースもコンマ5キロを背負った馬の成績は【0-0-1-5】で連対馬なしだ。
高松宮記念を勝ったモズスーパーフレアもハンデが56.5キロ。過去にこの斤量を背負ったのは牡馬しかいないとはいえ、いずれも圏外だった。前走でGIを使った馬も連対がなく、人気を考えても今回は見送りが正解だろう。
では、どの馬が軸にふさわしいのか。それはジョーカナチャンにほかない。4歳馬の次に成績がいい5歳馬で、しかも牝馬。牝馬の55キロは連対率37.5%、牝馬の前走1着馬も連対率38%である。今回は前走1番人気馬がいないので、前走2番人気が最も強いことになり、条件をほぼ全て満たしていることになる。さらに前走アイビスSD組は最多の7連対。データ上での信頼度はかなり高いといえる。
次点はトゥラヴェスーラ。55キロのハンデは牡馬で最も成績がよく、この馬もジョーカナチャンと同じく前走2番人気で1着。性別の差だけで、この馬も文句をつけるところはほぼない。
今回はこの2頭が抜けている。以下の順番は悩むところだが、まずはブライティアレディ。7歳という年齢が減点対象だが、ハンデと前走着順がプラス材料。2年連続で連対中のダイメイプリンセスは今年7歳で好走年齢から外れているが、昨年も成績がいいとはいえない6歳で連対。アイビスSDを経て56キロを背負った牝馬といえば2016年の2着馬ベルカントと同じパターンでもあり、今年もマークは怠れない。
◎ジョーカナチャン
〇トゥラヴェスーラ
▲ブライティアレディ
△ダイメイプリンセス
《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。北九州記念といえば追い込みが決まる印象が強いのですが、今年は開幕2週目でまだ馬場が傷んでいない状態で行われます。前有利なのか、それとも追い込みがさく裂するのか。その点にも注目ですね。