センパイとマツトモ
昨年夏のリオデジャネイロ五輪でブレークしたバドミントン女子ダブルスの「タカマツ」こと、高橋礼華と松友美佐紀がダブルスを組んだころの話を前回しました。今回は彼女たちが、世界のトップへと駆け上がり始めた時に行ったインタビューをもとに、振り返ります。
お互いの呼び方を聞きましたが、高校時代から変わっていません。一学年下の松友は高橋を「センパイ」と呼び、高橋は松友を「マツトモ」と呼びます。
2人の愛称「タカマツ」は、昨年の流行語大賞の候補にもなりましたが、かつてはそこまでうれしくなかったようです。松友は2年前、こう語っています。
「『高松』という固有名詞もあるので、高橋、松友と書いてくれた方がうれしい」
ちなみにメジャーになる前から、香川県高松市の市長から祝電が届くことがあったそうです。
仲が良さそうに見えますが
高校時代からペアを組み、金メダルまでたどり着いた2人です。コート上では助け合い、勝った時に抱き合う姿も見られましたが、プライベートはどうなのでしょうか。
「完全別々。そこまで一緒だとカップルですよ」
高橋はきっぱりこう言いました。理由はいたってシンプル。
「寮は一緒で部屋は隣(現在は不明ですが)。遠征でも部屋は同じなので」
しっかりものの「姉」と、頼りない「妹」
クレバーなプレーが持ち味で冷静沈着を絵に描いたような松友ですが、高橋から見ると、普段の松友はそうではないようです。
「松友は結構抜けてます」
その理由を聞くとこうでした。
「ご飯を食べにいって上着を脱ぐと、すぐに忘れる。私が忘れものはないかを確認します。妹みたいです。本当の妹が1人いますが、もう1人できたみたい」
松友もそんな姉貴分の高橋を頼りにしているようです。
「遠征の時、鍵とか服とかよく物をなくしてしまうんですが、すごく気がついてくれる人でよかった。先輩がいないと、上着を結構なくしてたかも」
プレー中には見られない関係ですが、まさに姉と妹という感じでしょうか。
頼りになる「妹」へ
ちょっと頼りない「妹」の松友ですが、コート上では変化します。「姉」の高橋はこう見ていました。
「戦闘モードの妹になる。頼りになる」
どんなところが戦闘モードなのか。高橋はこう言います。
「勝負どころになると、『ここで仕掛けるの』っていうぐらい強気になる」
かたや松友はコート上で「姉」の高橋をどう見ているのでしょうか。
「試合中、よく緊張するんですが、『大丈夫だよ』って、いつも声をかけてくれます」
高橋は、プライベートでもコート上でも姉貴分のようです。
どんな東京五輪になるのだろう
筆者が2人に話を聞いたのは、2015年。直前にスーパーシリーズファイナルで優勝し、リオデジャネイロ五輪まであと1年半という時でした。今でこそ、東京五輪に向けて期待の2人ですが、当時は東京五輪を高橋はこのようにとらえていました。
「東京五輪のある2020年は30歳になる年。その時に競技を続けているかどうかは分かりません」
これは決してネガティブな考えではなく、目の前の目標を実現したいという思いからでした。さきほどの言葉の後にこう続けてくれました。
「今はリオ五輪しか見えていない」
そんな思いが、金メダルにつながったのかもしれません。
最近、高橋は東京五輪に向けてこう語っています。
「最強の自分を見たい。歴史を作りたい」
東京五輪まであと3年余り。2人はどんな進化を見せてくれるでしょうか。