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94回目の箱根を制するのはどこか 有力校、注目選手をさぐる(1)

2017 12/24 12:07きょういち
駅伝
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出典 lzf/ Shutterstock.com


 年の瀬も迫り、いよいよ大学(学生)3大駅伝の締めくくりとなる箱根駅伝が近づいてきた。94回大会は例年同様、2018年1月2、3日、10区間、217・1キロで争われる。

 今回の箱根は「3強」と言われている。

 3年の大学駅伝3冠で、箱根4連覇を目指す青山学院大、2年生に「黄金世代」をそろえる東海大、前哨戦となる全日本大学駅伝を20年ぶりに制した神奈川大の3校である。

 ただ、217・1キロの長丁場のレースは、思いも寄らぬドラマを生み出す。大ブレーキあり、棄権ありで、下馬評に挙がらなかった大学が勝つこともまれにある。2006年に優勝した亜細亜大がまさにそうだ。

 2018年の箱根はどんなドラマが待っているのか。今大会で、注目される選手、大学を、筆者の思い入れも込めながら紹介する。

1秒に泣いた男

 駅伝シーズンになると、彼のことを考えずにはいられない。

 東海大2年の鬼塚翔太である。

 2015年の全国高校駅伝でスター選手が集まる1区の上位6人中5人が入学し、「黄金世代」を形成する東海大。その中ででも、筆者が鬼塚に注目するのには理由がある。

 鬼塚の存在を初めて知ったのは、2013年の全国高校駅伝である。

 当時、鬼塚は1年生。古豪、福岡・大牟田高の赤いユニフォームに身を包み、髪形は丸刈りだった(今の鬼塚は茶髪でかなり長めである)。

 2013年の全国高校駅伝は史上まれにみる激戦だった。山梨学院大付高、三重の伊賀白鳳高、広島の世羅高、そして、大牟田高が一団となってゴールのある競技場に帰ってきた。その中に鬼塚の姿があった。彼は1年生ながら、アンカーという大役を任されていた。

 残り200メートルまではどこが優勝するか分からなかった展開。そこから抜け出したのが、山梨学院大付高と大牟田高だった。当時からスピードに定評があった鬼塚だが、残り100メートルで振り切られ、1秒差の2位に終わった。42・195キロをたすきでつないできて、最後の差は1秒。距離にして1メートルもないぐらいである。

 鬼塚が泣いていたかどうかは分からない。しかし、YouTubeにアップされている動画を見ると、茫然としているのが分かる。

 それもそのはず。大牟田高は過去5度の優勝を誇りながら、21世紀に入って低迷が続いていた。そこに舞い込んだ久々の優勝のチャンス。どれだけの期待が彼にかかっていたかは分かっていたはずだ。そして、その中で勝負には出て、十二分に役目を果たす走りだった。ただ、あと1秒が足りなかった。

 1年生にして1秒差に泣く――。重すぎるほどの責任を感じただろう。高校生の間は「十字架」を背負い続けてきたに違いない。そう考えると、鬼塚翔太というランナーのことが、必然的に気になるようになった。

 いつか、鬼塚が優勝のゴールテープを切り、背負ってきた十字架を下ろす日がくると期待していたが、現実はドラマのようにはいかなかった。

 2年生の時、大牟田高は26位、3年生の時は10位だった。3年生では花の1区を走り、区間4位。3年生の時に鬼塚はこう語っている。

 「1秒の意味を問いながら走ってきた」

 だが、高校時代にその1秒を取り返すことはできなかった。

競り勝った選手、競り負けた選手

 鬼塚の大学での話を続ける前に、少し気になったことがあった。2013年の高校駅伝で優勝を争った4人はその後、どうなったのかということだ。

 鬼塚については先述の通り。鬼塚に1秒差をつけて山梨学院大付高を初優勝に導いた当時高校3年の西山令は山梨学院大に進んだ。山梨学院大付高の優勝メンバーのうち、山梨学院大には西山を含めて5人が進んだ。「箱根を夢見てきた。優勝する気持ちでいく」と5人で語っていたが、2018年の箱根駅伝のエントリー選手をみると、5人のうち3人しか名前がなかった。そして、漏れた2人の1人が西山だった。西山は現在4年生。結局、大学時代には高校の時のように輝くことはできなかった。

 あの高校駅伝で3位に入ったのは伊賀白鳳高2年の中畑亮人だった。彼はその後、東洋大に進み、現在3年生。残念ながら彼の名前も箱根駅伝のエントリーリストになかった。

 4位になったのは世羅高の中島大就だった。当時は鬼塚と同じ1年生。2年、3年と連続で全国高校駅伝を制し、あの競り合いの負けの悔しさを晴らした。

 中島は今、明治大の2年生となった。だが、残念ながら中島の姿を箱根で見ることはできない。今年、明治大は箱根の予選会で敗退したからだ。

 あの激戦から4年。全国高校駅伝の優勝を争った4人のうち、箱根で雄姿を見ることができるのは、鬼塚だけになりそうである。

(続く)