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錦織圭、3回戦敗退も調子は上向き 次戦で自信を取り戻せるか

2019 5/14 15:00橘ナオヤ
マドリード・オープンでワウリンカに敗れた錦織圭Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ワウリンカに連敗も…手応え感じた敗戦

テニスのATPツアーはクレーコートシーズンが本格化している。5月前半戦の山場、マドリード・オープン(マスターズ1000)は、世界ランク1位のノヴァク・ジョコヴィッチ(セルビア)が33回目のマスターズ制覇を成し遂げ、幕を閉じた。

この大会、第6シードの錦織圭は2回戦から参加。前週のバルセロナ・オープンではベスト4と、いくらか自信を取り戻したなか臨んだ今大会では、順当に準々決勝進出を果たした。準々決勝の相手はABNアムロの準決勝で敗れたスタン・ワウリンカ(スイス)だ。

錦織は、初戦敗退を続けていた3月、4月と比べると迷いも少なく、目的がはっきりとしたプレーをしていた。それでも試合結果は0-2のストレート負け。これでワウリンカ相手に3連敗。敗退が決まった瞬間、錦織はラケットを放り投げ、失意をあらわにしたが、この行為には、悪いプレーはしていないのに勝てなかったことへの悔しさがにじみ出ていた。

1st成功時得点率93%で錦織を圧倒したワウリンカ

実際、錦織はベストとは言えなかったものの、ひどいプレーはしていない。ただ、ワウリンカのプレーがすばらしかった。

圧倒的だったのが、第1セットだ。第2ゲームで、ワウリンカは得意のバックハンドではなく、フォアハンドでのショットがさえわたった。スロースターターでまだエンジンが温まっていない錦織にミスが続いたこともあり、早々にブレークに成功したワウリンカはこれで勢いに乗り、6-3で第1セットを先取した。

このセット、錦織はワウリンカのサービスゲームでたったの2ポイントしか取れなかった。第1セットのワウリンカの1stサービス成功率が68%、1stサービス成功時の得点率がなんと93%。15本決めた1stサーブのうち、ポイントを失ったのはわずかに1本だった。ワウリンカは試合開始から高い集中力で臨み、自信のあるサーブから試合の流れをつかむことに成功したのだ。

最後の要所でミスが出た錦織

だが、第2セットになるとワウリンカのサーブに錦織が対応し始めたことで、試合は拮抗した展開となる。両者とも1stサーブの成功率が落ちたものの、得点率は70%台をキープしていた。

錦織がネットプレーやドロップショット、パッシングショットと攻撃のバリエーションを増やしたことが奏功した。4月に見せていたような苦し紛れのプレーではなく、流れを読んだプレーの選択ができるようになってきた。それでも相手はワウリンカだ。流れを自分のものにするまでには至らず、タイブレークに突入した。

タイブレークでも二人の好プレーが続き、観客を沸かせたが、要所で錦織にミスが出た。グラウンドスマッシュやドロップショットといった決めどころで相次いでミスし、自ら流れに乗れるチャンスをふいにしてしまった錦織に対し、最後まで集中が途切れることのなかったワウリンカが勝利を手にした。

錦織らしいプレーは取り戻した。ローマで自信を取り戻せるか

敗因を挙げるなら、これまでも度々指摘されているが、集中力と自信の差ということになる。試合を読む目や、プレーの判断などは取り戻しつつある。錦織自身が試合後に語った通り、第1セット第2ゲーム、そして第2セットのタイブレークでのミスが無ければ、試合の展開が変わっていた可能性はあった。

大事なポイントをものにできれば、その試合の流れを引き寄せることができる。そして、いい試合内容でワウリンカのような強敵相手に勝利を挙げられれば、大きな自信を生み、大会全体、ひいてはシーズン全体でも好結果を生むはずだ。

今大会決勝まで勝ち上がったステファノス・チチパス(ギリシャ)がまさにそうだ。エストリル・オープン(ATP250)でタイトルを獲得したことはもちろん、今大会アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)やラファエル・ナダル(スペイン)を撃破したことも大きな自信になったはずだ。激戦続きの影響でジョコヴィッチとの決勝戦は完敗したが、自己最高のATPランク7位で臨むBNLイタリア国際(マスターズ1000)や全仏オープンでは、自信を持って戦うことができるだろう。

全仏オープン前最後の大会であるBNLイタリア国際では、錦織は第6シードで2回戦から登場する。順当に勝ち上がれば3回戦でマリン・チリッチ、準々決勝でズベレフ、準決勝でジョコヴィッチと対戦するドローだ。全仏に向けて、チリッチやズベレフといったトップ選手から勝利を挙げ、自信を取り戻すことが、ローマでの錦織のミッションといえるだろう。