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錦織圭が2大会連続で初戦敗退 サーブ精度と粘り強さの欠如が致命傷に

2019 4/23 07:00橘ナオヤ
錦織圭,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

巻き返せず4大会連続早期敗退

クレーコートシーズン最初のマスターズ1000、モンテカルロ・マスターズは、イタリアのファビオ・フォニーニのマスターズ初優勝で幕を下ろした。フォニーニは今季、クレーコートの大会で4連続初戦敗退を喫していたが、ここにきて調子を上げてタイトルを獲得した。

一方、ここまで4大会連続で早期敗退が続く錦織圭。第5シードで今大会に参戦したが、フォニーニのように敗戦続きから巻き返すことができず、この大会でも初戦敗退に終わった。

2018年大会では負傷明けの復帰戦として臨み準優勝。モンテカルロとは相性が良いと言われていたが、その期待は裏切られた。モンテカルロの前には、こちらも相性が良いとされたマイアミ・オープンで初戦敗退。2月のロッテルダム(ATP500)で準決勝に進出して以降、4大会連続で早期敗退に終わっている。相性の善しあしに関係なく、錦織のプレーは明らかに精彩を欠いている。

モンテカルロの2回戦、錦織の対戦相手は世界ランキング49位のピエール・ユーグ・エルベールだった。同世代のフランス人選手で、これまでの対戦成績は錦織の2戦全勝。粘り強さが武器で、楽な相手ではないものの、タイトルを狙う上でつまずいてはならないレベルの相手だ。

しかし、試合結果は1時間42分で0-2とストレート負け。エルベールは攻撃に工夫を見せ、また気迫も感じられた一方で、錦織は先に仕掛けるもののその精度はいまひとつ。武器であるはずのサーブの精度や粘り強さも感じられず、ジャッジミスでボールを見送ってしまったり、ラリーで早々に力尽きたり、集中を欠く場面が目立った。

武器だったサーブがさえない

ファーストサーブの精度、そしてファースト成功時の得点率が、全豪シーズンの頃の水準に戻っていないことが、錦織の不調を物語っている。第1セットはお互いにあまり成功率が高くなく、錦織が59%、エルベールが57%にとどまった。ただ、成功時の得点率はエルベールが76%だった一方で錦織は64%と差が開いてしまった。

第2セットの錦織は成功率84%と精度自体は向上していたが、ファースト成功時の得点率は69%にとどまり、89%のエルベールに水をあけられたままだった。

ファーストサーブはラリーを始めるプレーであり、また主導権を握るきっかけとなるプレーのため、高い成功率で決め、得点を積み重ねることが求められる。トップ選手は、たとえビッグサーバーでなくても高い精度を誇り、さらにコースやバウンドを使い分けて主導権を握る。エルベールがトップ選手に求められるレベルのサーブができていたとは言い難いが、錦織ができていなかったのは間違いない。

致命的なミスの多さ、そしてウィナーの少なさ

サーブ以外でも、錦織は主導権を握るプレーができなかった。第1セットの第5ゲーム序盤、エルベールに先んじて攻めに出たことで、0-40とブレークチャンスが訪れた。にもかかわらず、そこからボレーやパッシングショットのミスを連発。結局このチャンスを生かせずエルベールがキープした。

第11ゲームでは対照的なプレーをエルベールが見せる。見事なコートカバーでポイントをもぎ取ると、ダウンザラインでのウィナーを奪ってラブゲーム。攻守両面でのナイスプレーで、セット終盤ながら勢いに乗ると、この気勢に飲まれたのか、錦織がミスを連発。早々に諦めるような所作も見られ、初のブレークを許し、このセットをエルベールに奪われてしまった。

第2セットは多少改善されたものの、ウィナー数、エラー数ともにエルベールを下回る水準に終始し、走らされる場面も散見。なすすべなく敗れた。 アンフォーストエラーは第1セットで錦織が14本、エルベールが16本、第2セットで錦織が11本、エルベールが9本と、両者ともミスが多かったためスコア上は接戦となった。

しかし、ウィナーの数では7対20とエルベールが圧倒し、第2セットもこの構図は変わらなかった。結局、試合全体ではウィナー数で14対31と、2倍以上の差がついた。エルベールのウィナーの多くは、錦織の返球が甘いことが原因だ。錦織自身、ミスの多さとエルベールのサーブの良さを敗因に挙げているが、アンフォーストエラーという数字に表れない部分でのミスも多かったといえる。

粘りの源「執着心」を取り戻せ

走らされたことによる疲労は見られたものの、フィジカルコンディションが悪いようには感じられなかった。となると、問題は精神面、特に執着心にあると考えられる。ここ2大会は簡単に諦める、甘い返球が続くといった、粘れないプレーが目立った。

錦織の本来の持ち味である粘り強さは、執着心から生まれるものだ。ノヴァク・ジョコヴィッチやセリーナ・ウイリアムズはセルフトークによって自身を鼓舞し、諦めないプレーを続ける。セルフトークが錦織にとって最適な解決策かは分からない。だが少なくとも、安易な判断ミスやチャンスボールをプレゼントするようなプレーを減らすためには、どんなボールにも食らいつき厳しく返球する意地を取り戻す必要がある。

敗戦翌日には練習を再開するなど、改善に向けた努力を続ける錦織。次の戦いの舞台はバルセロナ・オープン(ATP500)だ。第4シードで出場するこの大会は、2014年、2015年大会で連覇を果たした「相性の良い大会」。ここでもう一度調子をあげ、全仏に向けて勢いを付けられるか。