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【デビスカップ】中国相手に辛くも勝利。錦織に次ぐNo.2の底上げが不可欠

2019 2/6 11:00橘ナオヤ
西岡良仁,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

激闘を制し決勝大会進出を決める

最終戦は2時間47分というまさに激闘を制し、日本が世界に挑戦する切符を手に入れた。今年から新フォーマットに生まれ変わった男子の国別対抗戦デビスカップの予選が、2月1、2日に行われた。24カ国が参加し、ホーム&アウェー方式で行われた予選で、日本は隣国中国に辛勝した。

全豪オープンでフルセットの死闘続きだったエース錦織圭が不参加。とはいえ日本チームには西岡良仁、ダニエル太郎といったツアー優勝経験者に加え、2017年の楽天ジャパンオープンで優勝したマクラクラン勉・内山靖崇組も参加。中国はというと、ホームとはいえATPランク200位台や300位台の選手ばかりだ。元ジュニア世界1位の期待の若手ウー・イービンや、全豪本戦出場を果たした32歳のリ・ジェなど侮れない相手がいるが、それでもランキング順位で見れば日本が順当に勝利するとみられていた。

しかし一発勝負の戦いはやってみないとわからない。日本は総力戦の末、3-2とまさに薄氷の勝利で決勝大会進出をもぎ取った。日本勢が苦戦した理由は、一言にまとめるならアウェー会場の環境面、そしておそらくあったであろう慢心だ。

会場の広州オリンピックセンターのサーフェスはハード。メルボルンよりも球足が速くバウンドしないコートに、日本勢は手を焼いた。また中国勢はいずれもパワーヒッターで、ホーム戦ということもあり、サーフェスの特徴を生かして前へ前への積極的な攻めを見せた。日本勢は完全に勢いに飲まれてしまった。

初戦、ダブルスと見込んでいた勝利をことごとく取りこぼす

初戦のシングルス1で西岡がいきなりリ・ジェにストレート負け。リは強力なストロークを武器にアグレッシブな姿勢で試合に入ったのと対照的に、気温が前日から大きく下がりガットのテンションが狂った西岡は、球が跳ねないサーフェスにも苦しんで全く調子が上がらない。

ラケットのガットは、気温が低下すると収縮してテンション(張る強度)が上がり過ぎる。これにより西岡の打球の飛びが悪くなった。また右足の不調も相まって一向にプレーが改善しなかった。

シングルス2ではダニエル太郎が相手のストロークに苦戦しながらもストレート勝ち。スコアをイーブンに戻したものの、日本が勝ちを見越していた2日目のダブルスで星を落とす。ジャン・ザの積極的な攻めの姿勢と、ダブルス専門のゴン・マオシンが得意とする巧みなリターンに手を焼いた。第2セットでは2度マッチポイントを握ったものの、それを凌がれると相手を勢いづかせ、逆転負けとなった。

優位と見られていたダブルスを落とし後がなくなった日本。しかしシングルス3で西岡が新鋭ウー・インビンにストレートで完勝し名誉挽回すると、最終戦ではリ・ジェとダニエルが意地と意地がぶつかり合う大熱戦を繰り広げ、2時間47分の末にダニエルが勝利した。

快勝したのは2日目の西岡のウー戦のみ。ダニエルは2戦とも勝利したが、いずれも相手の時間帯が長く、苦しみながらの勝ちだった。通常のツアーと違う環境で勝ちを掴めたことは大きい。だが受け身で試合に入り、相手に試合を作らせてしまったことは決勝大会、そして個々のツアーでの戦いを見据えて改善すべきポイントだ。

決勝大会のカギは錦織に次ぐNo.2

この勝利によって、日本は11月18-24日にスペインで行われる決勝大会進出を決めた。決勝には前回大会優勝国のクロアチアと準優勝国フランス、ベスト4のアメリカとスペイン、そしてワイルドカードのアルゼンチンとイギリスが予選前から出場を決めている。

そしてこの予選の結果、日本のほかにベルギー、セルビア、オーストラリア、イタリア、ドイツ、ロシア、カザフスタン、オランダ、コロンビア、チリ、カナダが決勝進出を決めた。決勝大会ではトップ選手たちが参戦する可能性もあり、もしそうなれば、各国のNo.1には錚々たる顔ぶれが並ぶことになる。

旧フォーマットのデビスカップでは1回戦での敗退が続いていた日本。新フォーマットでも変わらずチャレンジャーの立場だが、決勝大会ラウンドロビンは3チームによる総当たり戦を行う。短期間で行われる総当たりの団体戦では、No.1が突出しているだけでは勝てない。No.2を担う選手がカギだ。

日本チームは以前に比べるとチーム力は底上げされているが、錦織が2勝し、もう1勝をとれたかで勝敗がわかれた試合が多い。決勝大会に錦織が参加する前提でいえば、西岡やダニエル、あるいは杉田祐一がNo.2になる。総当たり戦ではNo.2の入れ替えもあり得る。彼らの誰が起用されても勝負できることが、日本が決勝大会で勝つためには不可欠だ。そのことを考えれば、錦織抜きで3勝をもぎ取ったこの中国戦は彼らにとって大きな経験だ。

彼らは再びツアーでの戦いに戻る。11月の決勝大会は今シーズンの集大成ともいえる。その時、日本チームがさらにレベルアップしていることを期待して、個々の戦いを見守りたい。