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【全豪オープン】ジョコビッチ1強時代へ 消耗しきった錦織の今後の課題とは?

2019 1/29 07:00橘ナオヤ
ジョコビッチとナダル,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

決勝は二人の王者の戦いに

日本メディアが大坂なおみの優勝一色となった1月27日、メルボルンでは全豪オープン男子シングルスの決勝が行われた。ファイナリストはATPランキングNo.1のノヴァク・ジョコヴィッチ(セルビア)と同2位のラファエル・ナダル(スペイン)だった。

彼ら2人と、前回大会チャンピオンのロジャー・フェデラー(スイス)とともに「Big4」と称されたアンディ・マレー(イギリス)が今大会の前に今シーズンでの引退を発表。ナダルはブリスベン国際を欠場するなど、Big4時代の終焉が現実味を帯びていた。

だが、いざ大会が始まると、マレーは死闘の末初戦敗退となったものの、フェデラー、ナダル、ジョコヴィッチは順当に勝ち上がっていった。フェデラーが20歳のステファノ・チチパス(ギリシャ)に敗れた4回戦は世代交代を象徴する一戦とも称されたが、そんなチチパスもナダルには0-3で完敗。

ジョコヴィッチは決勝までの6試合でわずか2セットしか失わず、ナダルに至っては1セットも奪われずに勝ち上がってきた。まだまだこの2人の時代が終わる気配はない。

完璧な試合でナダルを圧倒

そんな2人の決勝戦は、3-0でジョコヴィッチが勝利。これによりジョコヴィッチはフェデラーを上回る同大会史上最多7度目の優勝を果たした。この記録も偉業に違いないが、それ以上にナダルとの決勝が一方的だったことが驚きだ。

過去52戦でジョコヴィッチから見て、27勝25敗と実力は拮抗していた。2012年の決勝で顔を合わせた時には5時間を超える熱戦を演じた両者だったが、この夜はわずか2時間4分で決した。

第1セットからまさに圧巻のテニスだった。第2ゲームで早々にブレークに成功すると、自身のサービスゲームではわずか1ポイントしかナダルに奪われなかった。ファーストサーブ成功時の得点率は何と100%。ナダルにミスが目立ったことを差し引いても完璧な第1セットだった。

第2セットに入るとナダルがジョコヴィッチのファーストサーブに対応し始めるが、ジョコヴィッチはセカンドサーブ成功時の得点率も86%と、サービスゲームを落とす気配が感じられなかった。

さらにアンフォーストエラーはたったの1つと、このセットも完璧に近いプレーでナダルを圧倒。不安定なナダルをよそにダウンザラインがさえわたり、2つのブレークを奪って第2セットもジョコヴィッチが取った。

第3セットは後がないナダルが攻めに出る。しかしジョコヴィッチは冷静に対処し、ナダルを前後左右に揺さぶり、第3ゲームでブレークに成功する。第6ゲームではジョコヴィッチの連続ミスから、この試合初めてナダルがブレークチャンスを迎えるが、ナダルはここで決め切れず、結局ジョコヴィッチがキープ。第9ゲームでジョコヴィッチがこの日5度目のブレ―クに成功し、全豪チャンピオンに輝いた。

好調の錦織だったが、序盤から苦戦しスタミナ切れ

一方、今大会の錦織には期待が寄せられていた。なぜなら、昨シーズン後半戦から好調を維持しており、前哨戦のブリスベン国際では全豪シーズン初のタイトル獲得を遂げていたからだ。

だが、初戦から予選を勝ち上がったカミル・マイシュジャク(ポーランド)に2セットを先取される。試合開始から飛ばし過ぎた相手が棄権したものの、いきなりの苦戦を強いられた。その後も2回戦のイボ・カルロビッチ(クロアチア)とは3時間48分、4回戦のパブロ・カレノブスタ(スペイン)戦では5時間を超える死闘になった。どちらの試合も複数セットでタイブレークにもつれ込み、フルセットの試合だった。

準々決勝で顔を合わせたのは、チャンピオンになったジョコヴィッチ。錦織は連戦の疲労からか調子を崩し、そのような状態ではジョコヴィッチには勝てるはずはなかった。1-6で落とした第1セットでは安定してサービスキープするジョコヴィッチに対して、錦織のファーストサーブ成功時の得点率は5割を切っていた。

これまでは精度の高いワイドサーブが武器になっていたが、この試合ではことごとくジョコヴィッチに攻略されてしまった。またアンフォーストエラーも19本を数えた。 セット間にメディカルタイムアウトを取り、右太もものマッサージを受けた錦織だったが、第2セットも調子が上がらない。5ゲームの間に2ブレークを喫し、ジョコヴィッチのサービスゲームでは1ポイントも奪えない。錦織自身「力が入らなかった」というように、体力の限界に達し、第5ゲームをブレークされた時点で棄権を申し出た。

錦織がこのベスト8の壁を超えるためには、準々決勝以上での対戦が見込まれる選手を相手に全力を出せるよう、大会序盤の試合を簡単に終わらせる必要がある。ナダルやジョコヴィッチはそうやってピークを決勝に持ってきている。万全な錦織ならジョコヴィッチとも互角の戦いができる可能性がある。

負傷とスランプで苦しんだジョコヴィッチだったが、昨シーズンに復活を印象付けるプレーを見せ、今年も全豪で好調ぶりを見せた。若手に押されたフェデラー、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)やケヴィン・アンダーソン(南アフリカ共和国)らは早々に敗退。

死闘続きでスタミナ切れを起こした錦織を全く寄せ付けず、1セットも落とさず勝ち上がってきたナダル相手にも完勝と、今のジョコヴィッチを脅かす存在は見当たらない。このままジョコヴィッチの1強時代突入となるのだろうか。