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賞金増額、日程短縮…男子テニスのデビスカップが変わる

2019 1/6 11:00橘ナオヤ
デビスカップフォンで自撮りする出場選手たち,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

大会形式に不満噴出

男子テニスの国別対抗戦デビスカップが、2019年から新たなフォーマットで生まれ変わる。これまで、ATPツアーの間を縫って行われてきたが、ツアースケジュールがタイトになるにつれ、デビスカップの大会フォーマットの在り方に、選手やコーチから不満が噴出していた。

まず、旧来のフォーマットをおさらいしよう。

デビスカップは5つの階層で構成され、最上段に「ワールドグループ」がある。その下にはアメリカゾーン、ヨーロッパ/アフリカゾーン、アジア/オセアニアゾーンと世界各地の地域ごとに「グループ1」「グループ2」…とクラス分けされている。これは新フォーマットでも同様だ。

旧フォーマットでは、ワールドグループは16カ国によるトーナメントで、4つの日程がATPツアーの間にちりばめられてきた。2018年は、1回戦が2月2~4日、準々決勝が4月6~8日、準決勝が9月14~16日、そして決勝戦が11月23~25日に行われた。

1回戦に敗れた8カ国は、グループ1を勝ち上がった8カ国とのプレーオフにまわり、これに勝利した8カ国がワールドグループ残留、そして敗れた8カ国は翌年グループ1に降格。プレーオフは準決勝と同日程で行われてきた。

旧フォーマットの問題点とは

旧来のフォーマットではこの日程が問題視されてきた。1回戦の直前まで全豪オープン、準々決勝の直前までマスターズ1000のマイアミ・オープン、準決勝の直前は全米オープンが行われてる。そしていずれの日程も翌日からATP250の大会が開幕する。

デビスカップはATPツアーの試合ではないが、ワールドグループの試合では勝者にATPポイントが付与される、とは言え大きなポイントではない。この過密スケジュールの中で、トッププレーヤーたちはグランドスラムやマスターズ1000などの大きな大会を優先し、デビスカップ出場を見送ってきた。決勝戦以外トップ選手が参加しない事態に、運営も頭を悩ませてきた。

そこで新フォーマットでは大会期間を1週間に短縮。ATPファイナルズが終わった後の11月後半に集中開催することになった。また2月に予選大会を行い、これがこれまでのプレーオフに相当する。

大きく2つの日程に集約した新フォーマット

新フォーマットでは、まず2月に24カ国による予選大会が行われる。決勝大会に出場した12カ国にシード権が与えられ、グループ1からアメリカゾーンの上位3カ国、アジア/オセアニアゾーンの上位3カ国、そしてヨーロッパゾーンの上位6カ国の12カ国の非シード国と対戦する。勝利した12カ国が、次の決勝大会に進む。

予選は全5試合で先に3勝したほうが勝ちなのは旧フォーマットと同様だが、日程が短縮されている。これまでは1日目にシングルス2試合、2日目にダブルス1試合、そして3日目にシングルス2試合が行われていたものが初日にシングルス2試合、2日目にダブルス1試合とシングルス2試合が行われ、2日に短縮された。また試合のレギュレーションも変わり、5セットマッチから3セットマッチに短縮されている。

決勝大会は11月、前回大会のベスト4とワイルドカード2カ国、そして予選を勝ち上がった12国の計18カ国だ。開催期間は1週間。出場国は3チームによる6グループにわかれ、月曜から木曜の4日間でラウンドロビンを戦う。3セットマッチのシングルス2戦とダブルス1戦が1日の間に全て行われ、2勝したチームが勝利し、各組1位と、各組2位のうち成績の良い上位2国の計8国がトーナメント進出。そして休みなく、金曜から日曜の3日間で準々決勝、準決勝、決勝がそれぞれ1日で行われる。

ベスト4に入った国は翌年の決勝大会出場が内定。一方ラウンドロビンで成績の悪い2カ国はグループ1に降格となり、予選大会から戦うことになる。

中立地開催へ変更

開催地についても変更がある。これまで開催地は1回戦から決勝戦まで、対戦する国のどちらかの国内となっていた。どちらがホームになるかは、初対戦か最後に対戦してから時間が経っている場合は抽選で決まり、過去の対戦が近年の場合は交互に開催となる。

そしてサーフェスはホームチームが決められる。そのためスペインはクレー、オーストラリアやアメリカはハードを選ぶことが多い。新フォーマットでは、予選大会は旧来通りのホーム・アウェー方式で開催地を決めるが、決勝大会は中立地となった。

新フォーマットを巡る期待と懸念

新フォーマットになったことで、日程の短縮が実現した。これによりトッププレーヤーたちの参加が見込めることは大会にとっても、そしてその国のファンにとっても喜ばしいことだ。

予選大会、決勝大会とすることで、ワールドグループへの参加国数も増加した。決勝大会に進めば最低2戦できるため、選手たちは国際経験を積むこともできる。またFCバルセロナのジェラール・ピケが代表を務めるコスモスグループがスポンサーとなり、25年で総額30億ドルの契約を結んだ。これにより賞金も増額され、グランドスラムと同等の金額となった。

一方で、決勝大会が中立地開催されることについて批判もある。

ホーム・アウェー方式で行うことで、一方の国はホームで戦い、自国民の目の前でプレーしてきた。それこそが国別対抗戦の醍醐味だという主張だ。

伝統ある大会が大金で変えられてしまったという批判もある。巨額の資金によりチームや大会、リーグが変化するということは、近年のスポーツ界でしばしばみられる構図だ。それがテニス界にどんな影響を及ぼすのか、注目だ。

2019年大会、日本は予選シードで出場

新フォーマットになって初の2019年大会では、予選大会は2月1日と2日に行われる。リニューアル後初開催のため、シード権は2018年のプレーオフで勝利した8カ国と準々決勝敗退の4カ国に与えられる。

決勝大会は11月18日から24日の1週間、スペインのラ・カハ・マヒカで開催される。トーナメントには2018年ベスト4のクロアチア、フランス、スペイン、アメリカ、そしてワイルドカードを獲得したアルゼンチンとイギリスの2国、計6か国が既に出場権を獲得している。

日本は予選大会からの参加だ。シードを獲得しており、予選大会では中国と対戦することが決まっている。両国は2009年に大阪で対戦しているため、今回の対戦は中国がホームサイド。広州市が開催地の予定だ。日本は中国と過去9戦しており、8勝1敗。中国を下し、11月にスペインの地でプレーできるだろうか。