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錦織圭の2018年。“復活”と“無冠”のシーズンを振り返る

2018 12/29 11:00橘ナオヤ
錦織圭Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

18大会中11大会でベスト8入り

アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)のATPファイナルズ優勝で幕を閉じた、今シーズンのATPツアー。錦織圭は、3シーズンぶりにファイナルズ出場、ATPランキングではトップ10に返り咲き、“復活”とも思えるような1年を過ごした。負傷から復帰したシーズンに、これだけの成績を残すとはさすがだ。

ただし、調整のために臨んだチャレンジャーズの大会以外では、タイトルを獲得することはできず、無冠でシーズンを終えた。この“復活”と“無冠”から何が見えてくるだろうか。

簡単に、今シーズン錦織が残した成績を振り返る。主要な大会成績は、4月のモンテカルロ・マスターズ準優勝、7月のウィンブルドンでベスト8、全米オープンベスト4、楽天ジャパンオープン準優勝、エルステバンク・オープン準優勝、そしてファイナルズ出場だ。

全豪シーズンを負傷の影響で欠場したにもかかわらず、2つのグランドスラムでベスト8以上に入ったことは称賛に値する。今シーズンは、ツアーで18大会(ファイナルズ、チャレンジャーズを除く)に出場し、11大会でベスト8以上、うち3つの大会で準優勝と安定した成績を残した。

終盤戦で追い上げトップ10復帰

ランキングの推移を見ると、シーズン開幕時は22位。ケガからの復帰の途上にあったため、全豪オープンを含むシーズン序盤はツアー欠場を余儀なくされた。

ツアー初戦となった2月のNYオープンでは、準決勝進出とまずまずの成績を残したが、全豪シーズンは欠場。昨シーズン前半戦にマスターズなどで積み上げたポイントが徐々に失われ、4月2日付のランキングでは今シーズン最低の39位までランキングを落とした。

だが、その後は4月のモンテカルロ準優勝を皮切りにウィンブルドンベスト8で20位に浮上するなど、サーフェスを問わず随所で良いテニスを見せ、ポイントを取り戻し安定した成績を残していく。

ランキングを駆け上がったのはシーズン終盤。全米オープンでベスト4に入り12位にまで順位を上げると、以降に出場した全大会でベスト8以上に入り、楽天ジャパンオープンとエルステバンクでは準優勝を果たした。 最終的に、ATPランクトップ10復帰とともに、上位陣の負傷欠場という(錦織にとっての)幸運も手伝い、2016年以来となるファイナルズ出場も成し遂げた。

強敵との連戦を勝ち抜けない

錦織圭は日本人最高の男子テニス選手と言っていい。だが、これまでグランドスラムはもちろん、マスターズでも1度も優勝経験がない。どちらのカテゴリも準優勝が最高成績で、キャリアで獲得した11のタイトルはATP500が6つ、ATP250が5つとなっている。

今シーズンもモンテカルロ・マスターズで決勝進出を果たしたものの、タイトル獲得はならなかった。エルステバンクの決勝でアンダーソンに負けた結果、錦織は決勝戦9連敗という不名誉な記録を打ち立てている。

自身と同格以上の選手、つまりトップ10選手相手でも勝てる力を持つ錦織。これは誰もが知るところで、実際に今シーズンもトップ10選手相手に7勝している。しかし、決勝ではラファエル・ナダル(モンテカルロ・マスターズ)、メドヴェージェフ(ATP500楽天オープン)、そしてアンダーソン(ATP500エルステバンク・オープン)に敗れた。その他、ウィンブルドンと全米オープンでジョコヴィッチに敗北している。

復活から飛躍、そして東京への1年に

今シーズンを終えた錦織はファイナルズでのラウンドロビン敗退を悔やみつつ、「十分すぎる1年だった」とこの一年を振り返った。

手首の違和感と戦いながらポイントを積み続けたが、決勝戦で9連敗、今季だけでも3連敗していることを鑑みるとタイトルという点では不十分。全米オープン準決勝のジョコヴィッチ戦後、フィジカルとメンタル両面での疲労に苦しんだことに言及した。

グランドスラムやマスターズといった大会では、強敵との連戦が避けられない。トップ選手とわたり合う実力を持っていても、レベルを保ちながら戦い抜くことは難しい。それが改めて浮き彫りになった。

2020年東京五輪で最高の結果を手にするために、重要な1年となる2019年。フィジカルとメンタルのスタミナを強化し、マスターズ、グランドスラムのタイトルを手にしてほしい。