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ジョコヴィッチ、フェデラー、錦織…ATPファイナルズの行方は

2018 11/9 11:00橘ナオヤ
錦織,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

錦織が2年ぶり4度目のファイナルズ出場

最後のツアー大会、ロレックス・パリ・マスターズが終わり、残すは今シーズンの王者を決める大会、NITTO ATPファイナルズを残すのみとなった。

日本の錦織圭は今シーズン優勝こそ無かったものの、楽天ジャパンオープンでは準優勝、パリ・マスターズでも準々決勝進出を果たすなど複数大会で勝ち上がったほか、グランドスラムでも健闘。着実にポイントを積み上げ、9位でツアーを終えた。

本来は上位8選手が出場するファイナルズだが、2位のラファエル・ナダル(スペイン)、4位のフアン・マルティン・デルポトロ(アルゼンチン)が負傷によりファイナルズの欠場を表明。その結果、9位の錦織と、10位のジョン・イスナー(アメリカ)に出場権がまわってきた。

自分の実力だけで勝ち取ったわけではないが、着実に復調してきたからこそ、ファイナルズ出場の権利を手にしたといえる。

8人がまず戦うのはラウンドロビン

今大会の参加者は次の8選手だ。

・ノヴァク・ジョコヴィッチ(1位:セルビア)

・ロジャー・フェデラー(3位:スイス)

・アレクサンダー・ズベレフ(5位:ドイツ)

・ケビン・アンダーソン(6位:南アフリカ共和国)

・マリン・チリッチ(7位:クロアチア)

・ドミニク・ティーム(8位:オーストリア)

・錦織圭(9位:日本)

・ジョン・イスナー(10位:アメリカ合衆国)

ロンドンのO2アリーナで行われるファイナルズでは、まず8人が2グループにわかれてラウンドロビンを戦う。ジョコヴィッチ、ズベレフ、チリッチ、イスナーの4人がグループ「グーガ・クエルテン」に、フェデラー、アンダーソン、ティーム、錦織がグループ「レイトン・ヒューイット」に入った。

グループ名の「グーガ・クエルテン」「レイトン・ヒューイット」はいずれも往年の名選手の名前だ。

グーガ・クエルテンことグスタボ・クエルテンはブラジル出身の選手で、1995年にデビュー。2008年の引退までに3度の全仏オープン優勝、マスターズ5勝をあげ、ランキング1位にも輝いたブラジル最高のテニス選手。

レイトン・ヒューイットはクエルテンと同時期にプレーしたオーストラリア出身の選手。小柄ながらエネルギッシュなプレーが人々に愛された。近年はデビス杯オーストラリア代表の主将を務めている。

このように、グループ名には毎年、往年の名選手の名前がつけられるのが慣行となっている。

ジョコヴィッチが本命、フェデラーが対抗馬は揺るがず

出場する8人はいずれもトッププレーヤーだが、フェデラーとジョコヴィッチの2人が抜きんでている。

ファイナルズという大会の実績を見ても同様で、フェデラーはこれまでに6回優勝、4回準優勝しており、同大会の最多優勝者だ。対するジョコヴィッチは5回優勝、1回準優勝。こちらは4年連続優勝という連覇記録を保持している。

一方、他の6人は決勝進出の経験はなく、最高成績は錦織のベスト4だ。錦織は過去3回出場し、2014年と16年にベスト4に入っている。

チリッチは今年が3年連続4回目(14,16,17)、ティームも3年連続で3回目(16,17)の出場、ズベレフは昨年に続き2年連続。いずれもラウンドロビンを突破したことはない。アンダーソンは初出場で、イスナーは15年に補欠だったものの、出場するのは今大会が初となる。

この戦績から見ても、優勝候補は各グループの一番手、ジョコヴィッチとフェデラーだろう。特にジョコヴィッチは今シーズン完全復活を遂げ、絶好調だ。パリ・マスターズでは優勝こそ逃したものの、2016年以来となるATPランキング1位に返り咲いた。6度目の優勝を果たせば優勝回数でフェデラーと並ぶことになる。

パリ・マスターズ準決勝では2度のタイブレーク突入となる大激戦の末、ジョコヴィッチが勝利。これでジョコヴィッチが過去4試合では全勝。通算成績も25勝22敗とわずかに勝ち越している。

フェデラーは今シーズン、勝ちに行って勝てない試合が多く、一騎打ちとなるとややジョコヴィッチに分があるか。

錦織はまずラウンドロビン突破が目標

最後に錦織について少し見てみよう。

ファイナルズ出場の7選手とはイスナー以外と対戦しているが、ジョコヴィッチには4連敗、フェデラーにも2連敗と勝てていない。トップ選手との対戦が良くて五分、悪ければ全敗。これがタイトルに恵まれなかった原因と言えそうだ。

同組の3選手とは、奇しくも10月に全員と対戦している。10月中の対戦成績はフェデラーに2連敗、アンダーソンとは1勝1敗、そしてティームから1勝している。最近の対戦はパリ・マスターズ準々決勝のフェデラー戦。この試合の錦織は良いプレーを見せていたが、ミスをせず、錦織の甘さを見逃さないフェデラーの完勝だった。

ファイナルズではラウンドロビン突破が最初の目標。フェデラー戦はチャレンジとなる。アンダーソンとティームの2人には勝たないと、突破は難しいだろう。

復活を遂げたジョコヴィッチ、最多優勝更新を目指すフェデラー、若手筆頭のズベレフ、そして錦織。シーズン王者に輝くのはいったい誰か。今年最後の戦いの火ぶたが間もなく切って落とされる。