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数字で読む錦織圭の「勝負強さ」 総合力で上回る土壇場での強み

2018 11/17 07:00宮崎二郎
錦織圭,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

「テニス人生が終わったかな」との悲観も乗り越えた錦織のカムバック

昨夏の右手首腱部分断裂によりツアーを離脱していた錦織圭。2018年シーズンは年初から復帰し、ブランクを感じさせない見事な復活劇を演じてみせた。

約半年間にわたって右手首の怪我の治療に専念していた錦織は、復帰後もしばらく不振にあえいでいた。2、3カ月は自分のプレーができず、「テニス人生が終わったかなと思う瞬間もあった」と振り返っている。

しかし、ワールドツアーの大会への出場を再開すると、錦織は次々と上位に進出した。チャレンジャーレベルの2大会に出場したのちに、2月のニューヨーク・オープン(ATP250)でベスト4入りを果たした。これが錦織にとって復帰後初のワールドツアーでの戦績となった。

クレーコートシーズンに入った4月後半には、モナコで行われたロレックス・モンテカルロ・マスターズ (ATP1000)に出場。決勝戦でラファエル・ナダル(スペイン) に惜しくも敗れ準優勝だったものの、グランドスラムに次ぐレベルのマスターズ大会で上位に食い込み、復調を印象付けた。

さらに、錦織はウィンブルドンで準々決勝、全米オープンでは準決勝に進出。日本で開催された楽天ジャパンオープン(ATP500)と、オーストリアでのエルステ・バンク・オープン(ATP500)でも決勝まで勝ち上がった。

年間上位8人による今季最終戦、ATPファイナルズでは予選リーグ敗退となってしまったが、シーズンを通してその勝負強さには目を見張るものがあった。

ATPの統計が裏付ける錦織の「勝負強さ」

復帰後の錦織の「勝負強さ」 を裏付ける統計がある。ATP(男子プロテニス協会)が公表している「アンダープレッシャーレイティング」だ。試合の重要な局面でのパフォーマンスに関するスタッツで、錦織は11月15日時点でトップの座に君臨している。

詳しく見てみよう。同部門は過去52週間のリターンゲームでのブレークポイント獲得率、サービスゲームでのブレークポイント回避率、タイブレークでの勝率、ファイナルセットでの勝率をそれぞれ加算した数値でランキングするもので、重要な場面での得点率などが焦点となっている。

錦織のここまでの数値と順位は以下の通りだ。

錦織表,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

サービスゲームでのブレークポイント回避率は63.0%。 ほぼ3回に2回はピンチを跳ね返していることがわかる。錦織が最も上位にランクされたタイブレーク勝率は76.2%で3位。4回タイブレークになれば3回は勝ってきたことになる。ファイナルセット勝率も70.6%と高い水準を維持した。

その結果、錦織は総合1位に輝き、「勝負強さ」が統計的にも裏付けられた形だ。

「総合力」で優れる錦織の勝負強さ

錦織は上記4項目でいずれも1位には入っていないにもかかわらず総合1位にランクされるということは、勝負どころでの決定力や粘り強さが優れていたと言える。

言い換えればこの1年間で、錦織はトッププレーヤーの間でも無類の勝負強さを見せたということ。2月にワールドツアーへ復帰して以降、劇的な復活を遂げたこともうなずける。一時は39位にまで低下していたランキングも着々と上げ、2018年11月5日付で9位に浮上、約1年半ぶりにトップ10へと返り咲いた。

今後は持ち前の「勝負強さ」を武器に、ランキングをさらに上げていけるか、が焦点の一つとなりそうだ。