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ファイナルズへ向けた錦織最後の戦い、パリ・マスターズ

2018 10/31 11:20橘ナオヤ
錦織圭,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ツアー最終戦がいよいよ開幕

2018年のATPツアーも、最後の大会ロレックス・パリ・マスターズを残すのみとなった。四大大会に次ぐマスターズ1000クラスのこの大会には、多くのトップ選手が出場する。マスターズはグランドスラムに次ぐタイトルであり、どんな選手も手にしたい栄誉だ。そして上位入賞者に与えられるATPポイントも大きい。ATPランキングのトップや上位を狙う選手、ATPファイナルズ出場を確定させたい選手にとっては最後にランキングを駆け上がるチャンスだ。

10月29日現在のATPランキングトップ10のうち、負傷でシーズンを終えた4位フアン・マルティン・デルポトロ以外は全員が参戦。先週ウィーンで行われたエルステ・バンク(ATP500)で準優勝した錦織圭も出場する。そしてこの大会には、ATPファイナルズの出場権をかけて錦織としのぎを削るドミニク・ティームとジョン・イスナーの姿もある。つまり、ファイナルズ出場の可否を賭けた戦いの最終局面だ。

一つでも勝ち進みたい瀬戸際の3選手

パリ・マスターズはインドアのハードコートで行われる、今年で47回目の歴史ある大会だ。マスターズ1000クラスなので、優勝すればATPポイント1000、そして賞金約97万ユーロが授与される。準優勝では600ポイントと約48万ユーロ、ベスト4で360ポイントと約24万ユーロ、ベスト8で180ポイントと約12万ユーロ、ベスト16で90ポイントと約6万3000ユーロが与えられる。ベスト4でもATP250クラスで優勝する以上のポイントが手に入り、優勝すれば仮にそれまで0ポイントだった選手でも50位以内はほぼ確約される。それだけ大きなポイントが動く大会なのだ。

今大会前のレースランクでは、8位がティーム(3,535ポイント)、9位が錦織(3,300ポイント)、そして10位がイスナー(3,065ポイント)と拮抗している。通常、ファイナルズの出場権は上位8選手だが、デルポトロが負傷し既にツアーを離れており、ファイナルズ欠場も確定。そのため今年は9位の選手までがファイナルズに出場できる。

現時点で9位の錦織は暫定で最後のチケットをつかんでいる状態だが、上述の通りイスナーとのポイント差はわずか235。今大会でイスナーがベスト4以上に入り、錦織がベスト16以前に敗退すれば出場権はイスナーのものになる。一方8位のティームも安泰ではない。もし早期敗退すれば、錦織とイスナーの勝ち上がり次第で一気に10位に転落。ファイナルズ出場を逃す恐れがある。

錦織の行く手にはアンダーソン、そしてフェデラー

大会のドローを見てみると、錦織は第10シード。シード選手はいずれも2回戦からの参戦となる。錦織の最初の相手はフランスのアドリアン・マナリノ。1回戦からの出場だが、クレムリンカップで決勝進出するなど好調を維持しており、簡単な相手ではない。

3回戦では、週末に行われたウィーンでの決勝でストレート負けを喫したケビン・アンダーソンとの再戦が濃厚。パワーサーバーに為す術無く敗れた姿は、2014年の全米決勝の記憶を呼び起こした。だが通算戦績は4勝3敗と勝てない相手ではない。リベンジとしても勝ちたいし、なにより錦織は、ファイナルズ出場に向けてできるだけポイントを積み上げなければならない立場。3回戦は突破しないとファイナルズ出場は難しいと考えたほうがいい。

準々決勝まで勝ち進むと、ロジャー・フェデラーと当たる可能性が高い。フェデラーとは2勝5敗と勝利した経験はあるが大きく負け越している。2015年以来となる同大会出場が期待されるフェデラーは、出場する以上はもちろん優勝を目指してくる。対する錦織も、いつまでもチャレンジャーとしてフェデラーに挑んでばかりはいられない。3勝目をあげてベスト4にまで進めば、ファイナルズ出場はぐっと近くなる。

ライバルたちも高い壁に挑む

錦織のライバル2選手はどうか。イスナーは今大会第8シード。2回戦ではエルベール対ククシュキンの勝者と、3回戦ではマシュー・エブデン対カレン・カチャノフの勝者と当たる。カチャノフはクレムリンカップで優勝している。準々決勝ではアレクサンダー・ズベレフかディエゴ・シュワルツマンと当たる模様。ズベレフは現在ランク5位の強豪、シュワルツマンもランキング19位で実力をあげてきた選手だ。

第6シードのティームは2回戦でジル・シモン対リュカ・プイユの勝者と戦う。どちらも実力と経験のある選手で、初戦で戦うには難しい相手だ。3回戦ではボルナ・チョリッチと対戦の可能性が高い。チョリッチは上海マスターズで決勝進出。ノヴァク・ジョコヴィッチに敗れたが今季好印象を残す選手の一人だ。そして準々決勝ではATPランキング1位のラファエル・ナダルとの対戦が濃厚。厳しいドローだ。

ATPランク1位を巡る戦いの行方は

パリ・マスターズはファイナルズ出場のための大会ではない。出場を決めている選手たちも当然欲しいタイトルだ。特にATPランキングで2位のジョコヴィッチは高いモチベーションで臨んでいる。

現在ランク1位のナダルより1ラウンドでも上に勝ち進むことができれば、2016年11月以来2年ぶりとなるランク1位に返り咲くことになる。ナダルは全米オープン以降、負傷のためツアーを離れ休養していた。どれくらいフォームを戻しているか注目だ。錦織のファイナルズ出場の行方、そしてNo.1の座を巡る戦い。今シーズンを締めくくるツアー最終戦は、多くのドラマを生みそうだ。