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「WTAファイナルズ」初挑戦の大坂なおみ、挑戦者からトッププレーヤーへ

2018 10/18 11:00SPAIA編集部
女子テニス,大坂なおみ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ファイナルズ初出場を果たし強豪の仲間入り

9月の全米オープンで優勝した大坂なおみは、10月13日時点のWTAランキングで自己最高の4位に輝いた。錦織圭、伊達公子と並ぶ歴代最高順位である。

上位8位以内の選手だけが出場できる「WTAファイナルズ」(以下ファイナルズ)への出場権をめぐる「レース・トゥ・シンガポール」でも4位につけ、初出場が確定した。日本人女子選手としては伊達公子、杉山愛に次いで3人目の快挙だ。

“ベイビーセリーナ”との愛称を持つ大坂。だが、セリーナ・ウィリアムズのような女王の座が約束されているわけではない。

グランドスラム優勝とトップ10入りを果たした大坂は、トップ選手たちにとって「挑戦者」ではなく、「互角の相手」となった。ライバルたちの見る目が変わったということは、しっかりと対策を練られるということ。これは、パワーと勢いでリズムを作ってきた大坂にとって大きな壁となる。この壁を超えなければ、セリーナのような“女王”にはなれない。

ファイナルズ出場選手たちの輝かしい実績

東レ・パンパシフィック・オープンで準優勝した大坂は、中国オープンで準決勝敗退に終わり、香港オープンを欠場した。次の大会は10月21日からのWTAファイナルズだ。

ポイント上位8選手が出場権を得られる同大会。現在行われているクレムリンカップで、9位につけていたキキ・ベルテンス(オランダ、3710ポイント)が敗れたことを受け、エリナ・スビトリーナ(ウクライナ)とカロリナ・プリスコバ(チェコ)の出場が確定。これで全選手の顔ぶれが出そろった。

1位 シモナ・ハレプ(ルーマニア、6921ポイント)
2位 アンゲリック・ケルバー(ドイツ、5375ポイント)
3位 キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク、5086ポイント)
4位 大坂なおみ(日本、4740ポイント)
5位 ペトラ・クビトバ(チェコ、4255ポイント)
6位 スローン・スティーブンス(アメリカ、3943ポイント)
7位 エリナ・スビトリーナ(ウクライナ、3850ポイント)
8位 カロリナ・プリスコバ(チェコ、3840ポイント)
(ポイントは10月15日時点)

ポイントでは4位につけている大坂だが、5位以下にもかなりの強者がそろっており、ハードな戦いになることは間違いない。6位のスティーブンスはWTAランキングで最高3位につけたことがある実力者。昨年の全米オープンを制し、今年の全仏オープンでも準優勝を果たしている。8位のプリスコバもグランドスラム優勝経験こそないものの、WTAランキング1位の経験があり、侮れない存在だ。

ライバル同士、今までの勢いだけでは通用しない

トッププレーヤーたちは、高速サーブ対策や縦への揺さぶりなど大坂攻略法を立ててくるだろう。

打つ手がなくなったように思えた時、大坂は気持ちが折れてしまう傾向にある。今シーズンはサーシャコーチのもと成長を見せたが、精神的な強さは一朝一夕で身につくものではない。中国オープンでは再び不安定な様子を見せることもあった。勢いだけではこの先を駆け上がることは難しい。全米の決勝でセリーナ相手に見せていたあの冷静なパフォーマンスが、今後は常に求められるのだ。

これまでも強豪相手に善戦はしてきた。だが数字は厳しい現実を突きつける。大坂はファイナルズ出場が確定した7選手のうち、対戦経験のないクビトバを除く全員に対戦成績で負け越しているのだ。例えばケルバーとは通算1勝3敗。今シーズンはウィンブルドン3回戦で敗れた。

1位のハレプとは通算で1勝4敗、今シーズンも既に2敗を喫している。だがBNPパリバの準決勝では第2セットをベーグル(6-0)で取り、ハレプから初勝利。その勢いのまま決勝でも勝利し、初タイトルを手にした。

トップ10選手が相手でもペースを掴めば勝てる。ただし、まだ安定して勝利をつかみ切れていないのが実情だ。

ハードコートで勝ち進み、道を切り開け

過去の戦績から厳しい見立てをしたが、ファイナルズでの活躍が期待できる要素もある。ファイナルズの舞台、シンガポール・インドア・スタジアムは室内のハードコートで、これまでハードコートで優れたパフォーマンスを発揮してきた大坂にとっては好条件と言える。

優勝した全米オープンをはじめ、準々決勝で5位のプリスコバ、準決勝で1位のシモナ・ハレプを破ったBNPパリバもハードコート。さらに2016年、18年に準優勝した東レ・パンパシフィック・オープンもこのサーフェスだ。

ハードコートが主流であるアメリカ育ちというのが大きな要因だろう。やや高く跳ねるサーフェスのため、彼女の強力なサーブやストロークが勢いを増す。

スペインのガルビネ・ムグルザがクレーコートで無類の強さを誇り、その後芝のウィンブルドンでも結果を残したように、若いころから慣れ親しんだサーフェスで実績を上げ、徐々に別のサーフェスの試合でも結果を出す。こうした進化の道筋を大坂が辿ることも不可能ではないはずだ。

初出場を果たしたファイナルズでも挑戦者として、全米オープン決勝戦のように勢いよく戦う姿を期待したい。