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V11達成の赤土の王者ナダル 対戦相手「倒すのは不可能」

2018 6/14 18:30SPAIA編集部
ラファエル・ナダル,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

前人未到!11度目の優勝

全仏オープン男子シングルスは、前回大会王者のラファエル・ナダルが優勝を果たした。ロジャー・フェデラー、アンディ・マリーが欠場し、ジョコビッチは25歳のチェッキナートにアップセット(番狂わせ)を許すなどビッグ4の牙城は崩れつつある。

彼らに続く世代では、昨シーズン復活を遂げたフアン・マルティン・デルポトロは今シーズンも好調でベスト4に勝ち上がったものの、前回大会ファイナリストのスタン・ワウリンカが初戦敗退。錦織圭は次世代のスター、ドミニク・ティームに完敗を喫した。ビッグ4の最後の一角にして、この大会で絶対の強さを誇る赤土の王者ナダル。彼を倒せるかもしれない、そう期待を集めたのがデルポトロとティームだった。

だが手負いのキングは彼らの挑戦をやすやすと跳ね返し、前人未到の11度目の優勝を果たす。今大会落としたセットはわずか1つ。これが王者の風格というべきか、まさに圧巻のプレーを見せつけた。

好調のデルポトロも「倒すのはほぼ不可能」と舌を巻く

ナダルの準決勝の相手はアルゼンチンのフアン・マルティン・デルポトロ。長年手首のケガに苦しんでいたが昨シーズンに復活すると、調子を落とすことなく今シーズンもすでにツアー2勝をあげ、4年ぶりにトップ10に返り咲いている。 タイトルのひとつは3月のBNPパリバ・オープンで、ロジャー・フェデラーを倒してのものだ。そんな好調のデルポトロは、全仏でナダルを止められるかもしれない選手の一人として注目されていた。

だが、いざふたを開けてみると、3-0でナダルのストレート勝ち。第1セットこそ迫力ある攻撃を見せたデルポトロだったが、ナダルのペースを乱すことはできず6-4で先制を許す。第2セットからはナダルが圧倒。第2セットを6-1で奪うと第3セットも6-2とし、ストレート勝ち。この試合、ナダルは7本のブレークポイントを全てしのぎ、デルポトロに主導権を渡さなかった。

試合後、デルポトロは「ラファを倒すのはほぼ不可能だ」と舌を巻いた。「彼は疲れていないように見えたし、体に問題もない。彼が持っている武器に加えてメンタル、まさに完全無欠だ」と、ナダルの調子の良さに驚きを示した。今シーズン見事なパフォーマンスを見せるデルポトロ。そんな彼をして「倒すのは不可能」と言わしめるほど、赤土でのナダルは手が付けられないようだ。

赤土の若きプリンス ティームも「彼の凄さは簡単に言い表せない」

決勝の相手は次世代スターの筆頭ドミニク・ティーム。これまで獲得したツアー10勝中8勝がクレーでのもので、赤土の王者ナダルの座を脅かす“ネクスト・クレーキング”との呼び声も高い。実際に過去何回かクレーコートでナダルに勝利しており、今シーズンも全仏前哨戦のマドリー・オープンの準々決勝でストレート勝ちを収めていた。全仏の決勝でナダルを倒すことになれば、世代交代を象徴する勝利になるとして注目が集まったが、結果はストレート負け。王座の交代が実現することはなかった。

第1セット、第2セットを6-4、6-3で奪ったナダルだが、コンディションは万全ではなかった。第3セット途中で何度かトレーナーを呼び左腕に処置を行う。それでもティームは試合の主導権を握ることができず、第3セットも6-2とナダルが完勝。ストレートでV11達成を許した。

ティームの武器は強力なフォアハンド。だがナダルは赤土で、とりわけ決勝の舞台フィリップ・シャトリエでは信じられない粘りを発揮する。

加えて、 ティームのバックハンドにボールを集めるナダルの戦略も機能していた。ナダルより8本多い34本のウィナーをあげたティームは、同時に相手より18本も多い42本のアンフォーストエラーをおかした。これだけのエラー、きわどいところを攻めようと勝負に出た結果だろうが、それを決めないことにはナダルを越えることはできない。

ティームは試合後「(ナダルの)プレーがとてもよかった。それこそ彼が11回も優勝している理由。」と称賛。「グランドスラム(の同じ大会)を11回制するというのは異例だし、信じられないことだ。飛び抜けた技術の才能、そして努力がそろわなければ、達成できないと思う」と子供のころからのアイドルの偉業を称えた。

ナダルも「間違いなくティームは数年のうちにここで優勝するだろう」と若き才能の飛躍に太鼓判を押す。だがまだまだ自身も身を引くつもりはないだろう。来年もまたこの舞台で2人が躍動することに期待したい。