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「錦織圭2世」西岡良仁選手のこれまでの軌跡

2017 5/17 09:55跳ねる柑橘
nishioka
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世界ランクトップ100入りで期待が高まる西岡良仁選手に注目

ATP世界ランキングトップ10の常連となり、日本男子テニス界をリードしている錦織圭選手。そんな錦織選手に続く若手スターの一人として活躍を期待されているのが、西岡良仁選手です。
西岡選手は2016年にはランキング100位以内に入り、めきめきと頭角を現しています。今回はそんな西岡選手にフォーカスを当ててみます。

ジュニア時代―テニス一家で育ち、錦織選手と同じ名門スクールへ留学

西岡良仁選手は三重県津市出身で1995年9月27日生まれの左利き。テニスコーチを両親に持ち、4歳の頃にテニスをはじめました。2歳年上の兄もテニスを習っており、まさにテニス一家で育ちます。津市にあるニックインドアテニスカレッジでテニスのキャリアをスタートさせています。
小学校低学年の頃から試合に出始め、2007年には全国小学生テニス選手権大会、ダンロップ全日本ジュニアテニス選手権、Dunlop Cup 全国選抜ジュニアテニス選手権大会で優勝するなど、小学生の頃から日本テニス界にその名を轟かせてきました。
中学校進学後もめきめきと腕を磨いていき、中学3年の2011年には、西岡選手が尊敬する先輩・錦織圭選手も在籍したアメリカの名門テニススクール、IMGテニスアカデミーに留学します。
中学卒業後はスポーツの名門である青森山田高校に進学。その後も国内外の大会で活躍を見せます。2012年には全米オープンジュニア大会で、シングルス・ダブルスともにベスト4の成績を残し、2013年にはメキシコフューチャーズ大会で、念願のプロ大会初優勝を達成します。フューチャーズはプロ大会ですがカテゴリは低く、西岡選手のように将来が期待される選手も多く出場するシリーズ。ここでタイトルを獲得したことで、キャリアに俄然勢いがつきました。
同年の第88回ニッケ全日本テニス選手権では、自身初の決勝進出を果たしますが、決勝では同じ三重県出身の伊藤竜馬選手に6-3,6-3のストレートで敗れ、悔しい準優勝となりました。12月にチリで開催されたフューチャーズの2大会に出場し、どちらも決勝はストレートで優勝。ジュニア選手ながらプロ大会3勝を飾っています。

高校卒業間際にプロ転向、初年度に全米OP本戦出場、アジア大会優勝

高校卒業を控えた2014年1月にプロ転向を表明。その直後の2月にアメリカでのフューチャーズで優勝したのに続き、同年6月には国内初のフューチャーズ大会である札幌フューチャーズに出場すると、決勝で内山靖崇選手を破り優勝し、プロ大会通算5勝目となりました。
この年の8月、テニスの4大大会のひとつ全米オープンの予戦に出場。これが4大大会予選への初挑戦でしたが、見事予選を突破しました。本戦1回戦はイタリアのパオロ・ロレンツィ選手との対戦でしたが、2セットダウンで迎えた3セット目に途中棄権します。グランドスラム初挑戦は手ごたえと厳しさ両方を感じる経験になりました。
この経験を糧に、9月にはフューチャーズのひとつ上のカテゴリとなるATPチャレンジャーツアー、上海チャレンジャーで優勝しています。そして同月に韓国で行われた仁川アジア大会に出場すると決勝まで勝ち進みます。決勝では大会第1シードで当時世界ランク37位だった台湾の盧彦勲選手をストレートで下し、日本人選手として1974年以来となる同大会男子シングルス金メダルを獲得しました。

着実に実力をつけた2015年

2015年には、デルレイビーチ国際テニス選手権の予選を突破。グランドスラム以外でのATPツアー大会で初の本戦出場を果たします。本戦でも2回戦を突破し、錦織圭選手以来のベスト8入りとなりました。
5月にはグランドスラムのひとつ全仏オープンに初挑戦。予選を突破し、昨年の全米オープン以来2度目のグランドスラム本戦出場を果たします。本戦では1回戦でチェコのトマシュ・ベルディヒ選手にストレートで完敗したものの、弱冠19歳ながら着実に実力をつけていることを示しました。
9月には全米オープンの予選に出場。日本人では唯一の予選突破を果たします。本戦1回戦では、フランスのポール=アンリ・マチュー選手との対戦になりました。元世界ランク12位の実力者マチュー選手と3時間を超える激戦を展開し、フルセットまでもつれ込んだ試合となりましたが、見事西岡選手が勝利しました。この試合がグランドスラム本戦の初勝利となりました。続く2回戦ではブラジルのトマス・ベルッチ選手に対戦しストレートで敗れましたが、手ごたえをつかんだ大会となりました。
11月にはダンロップワールドチャレンジテニストーナメントで優勝。この大会はATPチャレンジャーツアーのカテゴリで、西岡選手はチャレンジャー大会2度目の優勝となりました。

2016年、マスターズ初勝利、世界ランクトップ100入り

2016年はまず1月の全豪オープンに出場。前年の全豪オープン・アジア=パシフィックワイルドカードプレーオフで勝利していた西岡選手は、ワイルドカードで本戦出場を決めていました。ただ、1回戦でウルグアイのパブロ・クエバス選手にストレートで敗れています。
2月にはメンフィス・オープンに出場。予選から勝ち上がった西岡選手は本戦でも勝ち上がります。ツアー2度目の進出となった準々決勝では、勝ち上がれば憧れの錦織選手との対戦となったものの、地元アメリカ出身のサム・クエリー選手に敗れてしまいます。なおこの大会では、準決勝で錦織選手がサム・クエリー選手を破ったうえ、見事優勝。大会史上初の4連覇を達成しています。この時点での西岡選手と錦織選手の距離がわかる大会となりました。
3月のマイアミ・オープンでは予選決勝でアルゼンチンのオラシオ・セバジョス選手を破り、自身初のマスターズ1000本戦出場を果たします。本戦でも勢いは止まらず、1回戦でアメリカのジャレッド・ドナルドソン選手にストレートで勝利し、マスターズ初勝利。2回戦では当時世界ランク23位のスペインのフェリシアーノ・ロペス選手を6-4, 6-4のストレートで破り3回戦進出を決めます。3回戦では当時世界ランク14位のドミニク・ティーム選手との対戦となりましたが、快進撃もここまで、ストレートで敗戦しています。
この年の全仏オープンは予選で敗退してしまい、本戦出場はなりませんでした。続く6月のウィンブルドン大会は予選を突破。本戦は1回戦敗退となりましたが、これで4大大会すべての本選出場を果たしました。 アメリカのイリノイ州で開催されたニールセン・プロテニス選手権では、決勝で地元アメリカのフランシス・ティアフォー選手に6-3, 6-2で勝利し、チャレンジャー3勝目を挙げました。
着実に実績を積み上げていった西岡選手は、7月11日付の世界ランキングで100位となり、初のATP世界ランクトップ100入りを果たしました。
8月のアトランタ・テニス選手権では2回戦でシード選手の、ウクライナのアレクサンドル・ドルゴポロフ選手に勝利。準々決勝でオラシオ・セバジョス選手をストレートで下し、自身初となるツアーベスト4に進出を果たしました。準決勝ではオーストラリアのニック・キリオス選手に3-6, 6-3, 3-6で敗れてしまいましたが、この大会後に発表されたランキングでは、自己最高となる85位に順位を上げています。

2017年―ナダルとの熱戦、さらなる飛躍を目指す

2017年に入ると、全豪オープン本戦1回戦で、地元オーストラリアのアレックス・ボルト選手に勝利し、全豪初勝利をあげました。
2月末に開催されたメキシコ・オープンでは1回戦で世界ランク18位のアメリカのジャック・ソック選手に逆転勝ちすると、2回戦も勝利しATP500ツアーで初となるベスト8に進出します。準々決勝では世界ランク6位、かつて世界ランク1位に君臨したスペインのラファエル・ナダル選手と対戦しました。
この試合ではストレート負けとなりましたが、この大会での躍進で、世界ランクを70位前後にまであげることになっています。

プレースタイル―卓越したコントロールで相手を翻弄

西岡選手は171cm63kgと、テニス選手としては決して恵まれた体型ではありません。世界トップの選手と並んで小柄に見える錦織圭選手が178cmであることからも、西岡選手の小兵ぶりがわかると思います。ですがこの小さな体で、とても気迫あふれるテニスを見せるのが西岡選手の特徴です。
基本のテニススタイルはベースライン付近でのストロークで、コート上をすばやく動き回ってラリーを重ねる、守備型のプレーを得意としています。上背が無いためサーブのスピードはそれほど速くありませんが、コースの打ち分けが非常にうまく、リターンで打ち込まれることを避けて得意のラリー戦に持ち込む形をもっています。
ストロークはスピンが強くかかったボールで、こちらもコントロールに優れており、粘り強くラリーを続け、チャンスでコースに攻め込むパターンがあります。こうしたプレースタイルから守備型の選手と考えられていますが、両手打ちのバックハンドストロークは強烈で、チャンスでダウンザラインを奪うなど、最近は攻撃力にも磨きがかかってきています。

デビスカップでの活躍も期待される

西岡選手のこれまでのあゆみを見てきました。
2017年3月時点で、西岡選手は21歳の若さで4大大会すべての本戦に出場し、プロ大会で9回の優勝、アジア大会優勝を経験しています。ツアータイトルこそまだありませんが、これまでの実績からも、今後の活躍が最も嘱望されている選手といって間違いありません。
また、西岡選手は2015年から男子国別対抗戦デビスカップのメンバーにも選出されています。日本チームはデビスカップのトップカテゴリであるワールドグループと、その下のグループ1の間を行ったり来たりしている状況で、エース錦織選手の勝敗がチームの行方を決定づけている現状にあります。ワールドグループ常連となり、さらに上を目指していくためにも、西岡選手が今後さらに力をつけて、両輪としてチームを支えていってくれることが期待されます。