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平成の大横綱が引っ張る貴乃花部屋を徹底解剖

2017 12/4 15:33跳ねる柑橘
相撲部屋
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貴乃花部屋はこんなところ

2017年冬のニュースで語られない日がなくなった貴乃花部屋。言わずと知れた平成の大横綱貴乃花親方が率いる相撲部屋だ。ニュースでは様々な話題がうずまいているが、ここで改めて貴乃花部屋とはどんな部屋なのか見ていく。

貴乃花部屋は江東区東砂にあり、2017年11月現在で2名の幕内力士、1名の十両力士、幕下以下6名の計9名の力士が日々稽古に励んでいる。
独自の方針を打ち出す貴乃花親方はもちろん、部屋のエース貴ノ岩と期待の若手貴景勝、親方の現役時代の再来となるかと期待される双子力士など、注目したいポイントがたくさんある部屋だ。その魅力を探っていこう。

貴乃花部屋の系譜は相撲界のサラブレッドの系譜

貴乃花部屋の系譜をたどると、1962年までさかのぼることができる。この年に初代若乃花(現親方の伯父・花田勝治氏)が、年寄10代二子山を襲名し創設したのが「二子山部屋」だ。
ここで初代貴ノ花(現親方の父・花田満氏)や、二代若乃花ら多くの関取が生まれた。初代貴ノ花は、引退後二子山部屋の部屋付き親方12代藤島として指導に当たっていたが、1982年に独立し藤島部屋を創設。

のちに本家の二子山部屋と合併し部屋名を「二子山部屋」に改名、12代藤島は11代二子山親方を継いだ。ここに親方の実子である貴花田(のちの貴乃花、現親方・花田光司氏)とその兄若花田(のちに三代目若乃花、花田虎上氏)が入門。兄弟そろって持ち前の才能を発揮し、若貴フィーバーと呼ばれる大相撲ブームの火付け役となった。

貴乃花は2003年に引退し、一代年寄貴乃花親方を襲名し二子山部屋付きとして後進の指導に当たっていたが、2004年に二子山部屋を継承。部屋の名前を貴乃花部屋に改めた。

叩き上げで大成した親方が独自のポリシーで指導にあたる

貴乃花親方は独自の哲学をもって、弟子の指導を行っていることで知られている。自身が中学卒業後に入門し叩き上げで育て上げられた経験から、当初は学生相撲出身や外国人力士よりも中卒の新弟子を育て上げる方針を示していた。
だが2008年にはモンゴル出身の貴ノ岩が入門したほか、2017年現在では学生相撲出身の力士も受け入れており、この方針は少しずつ変化しているようだ。

しかし部屋の垣根を越えて親睦を深めることには否定的なようで、「現役のときに違う部屋の力士が酒席などをともにするのはどうなのか」「親睦というなら土俵の上で力いっぱい正々堂々と相撲を取ることが親睦ではないのか」といった発言からもわかるように、独自のポリシーを持っている。

親方悲願の幕内力士 貴ノ岩と貴景勝

そんな厳しい方針の貴乃花部屋の力士を見ていこう。まずは、モンゴル力士の貴ノ岩、そして1996年生まれで若手有望株の貴景勝だ。
モンゴル出身の貴ノ岩は、2008年に貴乃花部屋に入門。2006年には鳥取城北高校に相撲留学で来日している。2009年に初土俵を踏んだ後は、2012年の名古屋場所で十両に昇進。
貴乃花部屋念願の関取第1号となった。その後は十両と幕内を行き来したものの、2016年からは幕内に定着。敢闘賞と殊勲賞を1回ずつ受賞したほか、2017年の初場所では横綱白鳳から金星も上げた。

貴景勝は若貴フィーバー真っ盛りの1996年に生まれた。本名の「貴信」は現師匠の貴乃花親方にちなんでいる。
高校在学中の2014年9月場所で貴乃花部屋に入門。2016年には十両へ昇進し、2017年初場所で幕内デビューと順調に昇進を続けている。さらにこの年には金星を3つ、敢闘賞1回に殊勲賞2回を受賞した、貴乃花部屋を引っ張る頼もしい若手だ。

親方の再来なるか?双子力士「貴ツインズ」

貴乃花親方といえば、兄・若乃花とともに兄弟で活躍し、大相撲ブーム「若貴フィーバー」を巻き起こしたことで有名だが、貴乃花部屋にその若貴の再来とも期待される兄弟力士がいる。
双子の兄・貴公俊(たかよしとし)と弟・貴源治(たかげんじ)だ。「貴ツインズ」の愛称で知られている。1997年生まれ5月13日生まれの二人は、運動神経抜群の兄弟としてバスケットボールでも活躍していたが、中学卒業後に兄弟そろって貴乃花部屋に入門。

2016年の夏巡業から2017年の春巡業までのあいだ、二人で巡業中に行われる「初切(ちょっきり)」を披露していた。初切とは、幕下力士が取組前にルールや禁じ手を面白おかしく観客に説明するパフォーマンスだ。
巡業部長を務める師匠の貴乃花部屋がこの二人を抜擢。双子ならではの貴ツインズの初切は息がぴったりとあっており、人気を博した。弟の貴源治が2017年の五月場所の番付で、十両昇進が決まったことでこの役目は終了。

貴源治は、貴乃花親方が育てた力士で3人目の関取となった。だがまだ十両と幕下を行き来する成績で、今後の成長が期待されている。
兄の貴公俊は弟に先を越された悔しさで奮起しており、これからは師匠とその兄のように兄弟力士として揃って入幕・昇進することが目標だ。

注目の部屋に変わりはない

貴乃花部屋としてスタートして13年が経ち、部屋初の関取貴ノ岩を筆頭に、実力も話題性にも厚みが感じられるようになってきた。貴ノ岩の事件の顛末が心配である。貴ノ岩の復帰を願いつつ残る力士達の奮起に期待したい。

特に2017年に若干21歳にして前頭筆頭を2度経験、金星もすでに3つ挙げている貴景勝の活躍は目覚ましい。彼には今後部屋をひっぱる役割も期待されていることだろう。
平成の大横綱が切り盛りする部屋から新時代の横綱が生まれる日は、そう遠くないかもしれない。