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箱根駅伝2019① ~青学が史上初の快挙へ挑む~

2018 12/29 15:00鰐淵恭市
青山学院,Shutterstock
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正月の風物詩、第95回箱根駅伝

青山学院大が史上初となる2度目の学生駅伝三冠を達成するか、ライバルがそれを阻止するか。正月の風物詩、東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が来年1月2、3日に行われる。すでに各校のエントリーは発表された。今回で95回目となる歴史ある大会を制するのはどの大学か。

青山学院大(前回優勝)

12月上旬に行われた記者会見、箱根5連覇を目指す青山学院大の原晋監督は恒例となった作戦名を発表した。

その名は「ゴーゴー大作戦」。

その作戦の意味はこうだ。原監督が就任15年目。箱根駅伝が95回大会。今回優勝すれば箱根で5度目の優勝。キーになる区間は山上りの5区。ライバルチームはゼッケン5番の東海大。何かと「5」に縁があるのが、今回の箱根らしい。

いつも、記者会見で笑いを巻き起こす原監督だが、史上初となる2度目の学生駅伝三冠を目指すチームの力は本物だ。

10月の出雲駅伝では6区間すべてで区間2位以内。1区途中から先頭を譲らない完勝だった。11月の全日本大学駅伝も8区間中7区間で区間3位以上の安定感。終盤7区で東海大を逆転して2度目の優勝を飾った。トータルで45・1キロと距離が短く、スピードが必要な出雲、トータル106・8キロでバランスのとれた力が必要な全日本を制した。残る箱根はスタミナ重視型だが、これこそ青山学院大が最も得意なタイプだ。

昨年の箱根経験者が、鈴木塁人、森田歩希、梶谷瑠哉、竹石尚人、小野田勇次、林奎介、橋間貴弥と7人(4年生5人、3年生2人)もいるのは心強い。チームの顔と言えるべき、「大エース」は存在しないものの、それを補ってあまりあるだけの戦力だ。

前回の箱根2区区間賞で今年の全日本MVPの森田、出雲の1区で区間賞を取った橋詰大慧、鈴木が三本柱。さらに箱根では、前回に山上りの5区を走った竹石、4年連続で山下りの6区を走ることが濃厚な小野田といったスペシャリストが存在する。 そして、今年の出雲、全日本で新たな戦力も台頭している。少々のブレーキなど問題にしない選手層の厚さだ。よほど大きなトラブルがなければ、史上3校目となる箱根5連覇の達成もが濃厚だろう。

◇注目選手
吉田祐也、吉田圭太

前回の箱根を経験していない「W吉田」に注目だ。

3年生の吉田祐也は今年の全日本で存在感を示した。学生駅伝界の3年生といえば、東海大に有力選手が集まっている。全日本の5区を任された吉田祐は2位でたすきを受けたが、先頭を走っていたのは東海大の3年生・鬼塚翔太だった。実力からすれば鬼塚が差を広げるとみられていたが、吉田祐は区間賞を獲得し、東海大との差を2秒縮めた。次の区間での逆転劇のきっかけをつくる走りだった。

2年生の吉田圭太は、広島・世羅高時代からその実力を知られてきた選手。今季は日本インカレ5000メートル3位、出雲駅伝4区区間賞、全日本大学駅伝6区区間賞と力を発揮してきた。昨年のメンバーに加え、「W吉田」のような選手もいるのだから、青山学院大は強い。

東海大(前回5位)

青山学院大の原監督がライバルとして名指ししたのが東海大だ。チームの主力は、高校からその力で名をはせた選手たちが集結する3年生の「黄金世代」。その中で特に力のあるのが、5000メートルでチーム最速の13分35秒81の記録を持つ関颯人、1500メートルで日本選手権2連覇の館沢亨次、1万メートルでチームトップの28分17秒52を持つ鬼塚翔太、日本選手権3000メートル障害4位の阪口竜平の4人だ。

昨年の出雲を制したように、長距離の中でも短めなトラック種目でスピードだけを競うのなら、青山学院大の選手たちよりも力はあるかもしれない。事実、関東インカレ、日本インカレのトラック種目の長距離では合計得点で1位となった。だが、昨年の箱根も期待されながら5位に終わったように、1区間が約20キロもある箱根ではその力を生かしきれずにいる。

それは昨年と今年の全日本でも如実に表れている。出雲よりは長く、箱根よりは短い全日本で、東海大は2年連続の2位だった。昨年は最終8区で、今年は7区で逆転されてしまった。箱根とほぼ同じ距離である全日本の終盤で逆転されていることからも分かるように、なかなか長い距離に対応できずにいる。ただ、課題が明らかな分、東海大がどう攻略してくるのか、箱根で見るのが楽しみだ。

今季は鬼塚らの故障もあり、出雲、全日本ではなかなかベストメンバーでのぞめなかった。だから、出雲3位、全日本2位というのは、ある意味仕方ないとも言える。箱根では万全の体調でベストメンバーが組めれば、青山学院大を脅かす存在であることは間違いない。

◇注目の選手
中島怜利

黄金世代を形成する3年生の1人。山下り・6区のスペシャリストだ。

1年、2年とも6区を走り、前回は区間2位と好走した。箱根だからこそ、その力を発揮する場所があるランナー。スピード豊かな選手がそろう東海大において、ある意味異質な選手かもしれない。