レアル下部組織出身者は全クラブ中最多39人
スイスのサッカー専門調査機関「CIES Football Observatory」が10月21日、欧州5大リーグでプレイする選手の出身クラブに関するランキングを公表した。首位にレアル・マドリードが選ばれている。
同ランキングは、欧州5大リーグのサッカークラブにおける下部組織別のデータを集計。UEFAの「トレーニングクラブ」の定義にもとづき、15〜21歳の間に少なくとも3シーズンプレイしたクラブを出身クラブとみなし、選手たちのその後の動向を追ったもの。定義に沿うと、10〜13歳頃まで4年間バルセロナに在籍した久保建英(マジョルカ)はランキングの対象外となる。
このランキングを上から見ると、5大リーグで活躍するレアルのカンテラ出身者の数は、前年比3人増の39人(10月1日時点)。2位はバルセロナで、前年と同じ34人。3位は、前年比5人減の30人を記録したリヨンだ。
選手育成に定評のあるアヤックスは、前年と同じ14人。ただし、5大リーグ以外も含めた欧州圏全域のトップリーグで見ると2位。72人がプレイしている。アヤックスに勝り、欧州圏全域のランキングで首位に立ったのは、セルビアのパルチザン・ベオグラードで75人だった。
レアルから放出の場合も5大リーグ中心
レアル下部組織の出身者が5大リーグに多いのは、偶然ではない。
例えば2019-2020シーズン前の移籍市場で、同ランキング1位のレアルから16人の選手が移籍した(完全移籍含む)。そのうち15人、約94%が5大リーグの1部リーグに在籍する形となった。マルコス・ジョレンテ(スペイン)にいたっては、同じマドリードを本拠地とする強豪アトレティコ・マドリードへ禁断の移籍を実現している。
一方、2位のバルセロナは15人中12人、80%が5大リーグに移籍。残り20%、トーマス・フェルマーレン(ベルギー/ヴィッセル神戸)やマウコム(ブラジル/ゼニト)、ドウグラス(ブラジル/トルコ)は5大リーグ圏外に放出された。
一部報道によれば、バルサは高騰する選手年俸などが災いし、クラブの負債は約1億5700万ユーロ(約189億円)に膨れ上がり、選手の年俸減につとめているという。そうした背景が選手放出にも影響してか、アンドレス・イニエスタ(スペイン/ヴィッセル神戸)やパウリーニョ(ブラジル/広州恒大)などクラブで活躍した選手ですら、高額の移籍金で遠方へ放出される傾向がある(もちろん選手の意向もあるだろう)。
加えてバルサは近年、ネイマール(ブラジル/パリ・サンジェルマン)の再獲得に奔走している。今冬以降も金策に走る可能性が大きく、“移籍金ファースト”の傾向は継続すると見込まれる。条件さえ揃えば、5大リーグ圏外の金満クラブへの選手売却をいとわないだろう。
ランキング3位のリヨンは、約77%が5大リーグ1部に移籍した。バルサやレアルに比べて移籍者が9人とやや少なく、5人がリーガ・エスパニョーラ、2人がリーグ・アン、2人がリーグ・ドゥ(仏2部)に移った。
5大リーグへの移籍は、選手にとって金銭・キャリアの面から見て重要だ。だが選手を放出するクラブにとっては、移籍した選手たちが自国リーグやチャンピオンズ・リーグで脅威になる恐れがある。それでもレアルは、多数の選手を5大リーグ内に移籍させる。選手のキャリアや意向を優先する移籍が、今回のランキングの結果に反映されたと言えるだろう。
中井もプロ契約間近?流出防ぐため早期契約傾向
こうして見ると、約5年前に白い巨人のカンテラに入団した“ピピ”こと中井卓大(レアル・マドリード)は、欧州5大リーグ入りに向けて最良の選択をしたと考えることもできる。
レアルは、将来有望な選手と早期に契約し、外部流出を防ぐ傾向もある。マルティン・ウーデゴール(ノルウェー/レアル・ソシエダ)やダビド・デ・ラ・ビボラ・ボニージャ(スペイン/レアル・マドリード)らと16歳時にプロ契約を結んだ。一部報道にあるように、今年10月24日に16歳の誕生日を迎えた中井も、プロ契約の噂が絶えない。
もちろん、その後トップチームでプレイできるかどうかは、チーム事情と本人次第だ。とはいえ順調にステップアップする中井は、生き残り競争に負けてトップチームにたどり着けなかったとしても、リーガを筆頭に、5大リーグへの移籍をクラブがサポートしてくれることが想定される。特に、マジョルカやレアル・バリャドリードなどリーガ内でのパイプは太い。中井のキャリア形成においてきっとプラスに働くはずだ。
世界屈指のプレイ環境と手厚いキャリアサポート。カンテラの厳しい競争をくぐり抜ける中井の前に、サッカー選手として“勝ち組”のレールが敷かれ始めている。
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