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欧州クラブサッカー改編は新たな敵「eスポーツ」出現で潮目が変わるか

2019 10/20 17:00Takuya Nagata
欧州クラブ協会のアンドレア・アニェッリ会長Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

欧州クラブ協会がヨーロピアン・リーグズに発言

10月5日と6日に「リーダーズ・スポーツ・ビジネス・サミット」がロンドンで開催された。サッカーの欧州各国リーグで構成されるヨーロピアン・リーグズのラース=クリスター・オルソン会長と、ビジョンが異なる欧州クラブ協会(ECA)のアンドレア・アニェッリ会長が登壇し、意見を戦わせた。

欧州クラブ協会は反論「閉鎖的にはならない」、しかし透けて見えるビッグクラブの意図

「スーパーリーグ案」や後に妥協した「汎欧州リーグ案」を超ビッククラブに編重していたことが物議を醸したが、ヨーロッパ各地のクラブで構成される欧州クラブ協会(ECA)のアンドレア・アニェッリ会長は反論。

「この数ヶ月のヨーロピアン・リーグズの『ノー、ノー』といった否定的な反応は、健全とは言えません。どんな改編があっても、パリ・サンジェルマンやレアル・マドリーに大きな変化をもたらすことはありません。どのような改編があるにせよ勝利し、出場権を獲得するからです。単にクラブが降格するのではなく、システム内で成長できる枠組みを作る必要があるのです」

この発言には、ユヴェントスの会長でもあるアニェッリ氏の心の底にある「ビッグクラブはビッグクラブであり続け、大会で好成績を収め続ける」という考えが透けて見える。

スーパーリーグ案は実質、各国リーグを下部リーグにしてしまう急進的な内容だった。反論を受け始めた汎欧州リーグ案は、複数の欧州クラブ大会を統合し、3部制にするというものだ。アニェッリ氏が言う「システム内で成長できる枠組み」はこのことを指していると思われるが、ディビジョンを3つに分けることでジャイアントキリングも少なくなるうえに、1年を通して大きな失敗をしなければ降格する可能性も低く、ビッグクラブが守られている印象がある。

「国内リーグ圧殺を企てていると、あちこちで言われています。しかし、重要なのは欧州のリーダーたちがオープンなシステムを維持する価値を認識しているため、決して閉鎖的なリーグになることはありません」
アニェッリ氏は、欧州クラブ大会の拡大により、再び閉鎖的な仕組みになるといった意見や国内リーグに悪影響を与えるといった懸念も否定したが、幅広い支持は得られなかった。

サッカーの敵はサッカーにあらず、欧州は一致団結するか

これまではサッカー界の中の話に議論はとどまっていたが、この集会の中でアニェッリ氏は、eスポーツがサッカーに及ぼす脅威をサッカー界の古参関係者が完全には理解していないと警告した。

「Z世代先の動向を考えなければなりません。今日のサッカーの競合相手は、他のスポーツでも隣のクラブでも隣国のクラブでもなく、リーグ・オブ・レジェンドやフォートナイトといったeスポーツであることを真剣に考え始める必要があります。これらが、今後の競争相手になるでしょう」

今までの欧州サッカー界は、自分のクラブや自国リーグといった異なる立場の利益にかなう主張に終始しており、まとまりに欠いていた。世界で圧倒的な競技人口と人気を誇るサッカーに対し、テクノロジーの進歩という巨大な波に乗じて急成長しているeスポーツ。この認識を持つことで、eスポーツに対抗するという一つの目標を共有する可能性が出てくる。

互いの狭量な言い分で対立するのではなく、サッカー界のために一致団結することは出来るだろうか。対eスポーツという考えに立つのであれば、アニェッリ氏が当初提案していた急進的なスーパーリーグ構想もあながち利己的な提案だったとは思えなくなる。このサミットのすぐ後にヨーロピアン・リーグズの会議(ロンドン)を控える中、もしかすると今回の議論が欧州サッカーの潮目を変えるかもしれない。