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主要国リーグやビッククラブに集中する富の再分配を 欧州リーグ統括団体会長が提案

2019 10/19 17:00Takuya Nagata
ヨーロピアン・リーグズのラース=クリスター・オルソン会長Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ヨーロピアン・リーグズ会長がロンドンで登壇

10月5日から6日、ロンドンのトゥイッケナム・スタジアムで「リーダーズ・スポーツ・ビジネス・サミット」が開催され、サッカーの欧州各国リーグで構成されるヨーロピアン・リーグズのラース=クリスター・オルソン会長が登壇。現在、紛糾する欧州クラブ大会改編の議論について意見を述べた。

4大リーグの欧州CL枠を4から3に縮小、同時に減らせば問題なし

ヨーロピアン・リーグズのオルソン会長の提案の一つは、4大国内リーグであるプレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガ、セリエAの欧州チャンピオンズリーグ自動出場枠を4から3に減らすことだ。

「チャンピオンズリーグに優勝した場合、それを防衛すべく翌年の出場権を与えられるべきです。残りは国内リーグでの最近の成績により決めるべき。国内リーグ1部優勝なら、次のレベルでプレーする機会を得るべきですが、出場枠は3チームだけにすべきです。イングランド、スペイン、イタリア、ドイツの大きなリーグには、4枠も必要だと思いません。他の国々のチームの機会が制限されるからです」

この案の実現可能性について「プレミアリーグに4枠を与え、ブンデスリーガから1枠減らすと問題が発生しますが、全ての主要リーグが同じように扱われれば問題ないと思います。ビッグリーグは、同等に扱えば、新たな取り組みに参加する用意があります」と述べた。

試合数増加に難色、その解決策は更に格差を拡大

チャンピオンズリーグのグループステージは現在、4チームからなる8グループで構成されている。それを6チームからなる6グループ、または8チームからなる4グループにする案が出されているという。そうなると、各チームのグループステージ試合数が増えるが、オルソン氏はこれには否定的だ。

「選手が1年間に70から80試合に出場すると、負傷する可能性が高くなります。選手をケアする必要があります」

オルソン氏は、増加する試合に対処する唯一の方法は、クラブがチームの選手数を40人に拡大することだと考えている。しかしこれは、裕福なクラブが有利になり、幅広い競争の機会を奪うことになるとも考えている。

多くのサッカークラブは、一般的に主力選手とその控えとなる若手選手で構成されており、クラブ全体のパフォーマンスを維持しつつも控え選手の年俸は抑えて、チーム予算をコントロールしている。

しかし、試合数が増えるとコンスタントに勝つためには、2チーム分の主力選手を抱える必要が出てくるため、選手の年俸がかさみ、結果的に予算が潤沢なクラブに有利になる。これではオルソン氏が主張する、幅広い競争を促すことには逆行してしまう。

また観戦するファンとしても、このシーズンで、最強のチームはどこなのかということに注目している。仮に欧州3冠を果たしたら、このメンバーは最強だという印象を持つ。しかし、試合の度に、選手が大幅に入れ替わってしまったら、シーズンが終わった時に、一体どんなチームだったのかがぼやける。どんな選手の連携や戦術が機能したのか、印象に残らなくなってしまうのではないだろうか。

選手を頻繁に大幅入れ替えすることは、チームの成熟度を低下させ、ひいては競技レベルの低下につながる懸念もある。その結果として、ファンの興味が薄らいでしまう恐れもある。

富を分配し連帯を高めよ、既得権益持つビッグクラブの抵抗も予想

オルソン氏は現在、ビッグクラブに偏ってお金が流れる仕組みにもメスを入れようとしている。「資金の分配全体を検討する必要があります。伝えたいメッセージは、連帯を高めなければならないということです」

現在、欧州サッカーはビッグクラブにお金が回りやすい仕組みになっている。ドル箱である欧州CLの収益を、出場チーム以外にも幅広く還元するというのがオルソン氏の案だが、既得権益を持ち発言力が強いビッグクラブの抵抗が予想される。




【欧州クラブサッカー改編は新たな敵「eスポーツ」出現で潮目が変わるか】に続く