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今やマンチェスター・ダービーは男子だけではない 欧州女子サッカー人気で男女白熱

2019 9/14 11:00Takuya Nagata
マンチェスター・シティのジェシカ・シグスワースを追うマンチェスター・ユナイテッドのデミ・ストークスⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

マンチェスター・シティ女子が、クラブ史上最多の観客動員

マンチェスター・シティFCは、9月7日にFAウィメンズ・スーパーリーグ(FA WSL)で、ホームにマンチェスター・ユナイテッドを迎えたマンチェスター・ダービーで31,213人を動員し、クラブの女子チーム史上最多観客動員数を更新した。

試合はサポーターの熱烈な応援を背にシティが1-0で接戦を制した。

ユナイテッドがリベンジの狼煙、オールド・トラフォード解禁か

相手サポーターの声援と勢いの前に1点差で惜敗したマンチェスター・ユナイテッドは、このままではなるものかと、早速男子チームが本拠地として利用する“The Theatre of Dream (夢の劇場)“オールド・トラフォードで女子チームの試合開催を検討している。

75,811人を収容出来るスタジアムが、ユナイテッドファンで埋まれば、相手を威圧できる。しかもこの巨大な箱はアウェーサポーター席からの歓声がピッチに届きにくくなっているのだ。

これらの一連の動きは、女子サッカーでも、いよいよマンチェスター・ダービーが本格的にヒートアップしてきたことを物語る。

”官軍ユナイテッド”と”賊軍シティ”の時代

現在、マンチェスター・シティの男子チームが本拠地として使用するエティハド・スタジアム(シティ・オブ・マンチェスター・スタジアム)は、55,097人の収容能力があるが、サッカー専用スタジアムとして使われるようになったのは、2003年のことだ。

それ以前は、メイン・ロードと呼ばれる旧式のスタジアムを使用していた。35,150人収容で、およそ100年前の1923年から使用されていた。見るからに古めかしく、それはそれでアンティーク感が漂っていて趣があるのだが、ユナイテッドの最新鋭の本拠地オールド・トラフォードと比較してしまうと、やはり見劣りしてしまうのは否めなかった。

一昔前までは英国全土、そして全世界にファンがいるユナイテッドと、マンチェスター市だけで熱狂的に盛り上がっているコアなファンを抱えるシティという対比だった。誤解を恐れずに言えば「官軍と賊軍」ぐらいのイメージの差があった。

悠々自適に戦うユナイテッドと、ゲリラ兵のようにしがみつくシティ。シティが勝つと、それは大きなニュースとして英国中に伝わった。シーズンによっては、シティが2部に降格して、対戦が実現しない時さえあった。

マンチェスター・ダービーを戦う両者は長らくこのような状態だった。

シティ急成長でユナイテッドと立場逆転

最近サッカーファンになった人たちは、この図式に違和感を覚えるに違いない。

マンチェスター・シティは、プレミアリーグで毎年優勝候補にあがり、ユナイテッドと比較しても決して劣るチームではない。それどころか、シティ・フットボール・グループを設立し、世界中で球団運営や提携を行い、巨大サッカー財閥を形成しているのだ。ちなみにJリーグの横浜F・マリノスも現在シティー・グループのメンバーだ。

以前、圧倒的優位にあったユナイテッド・サポーターにとって、シティに遅れをとる現状は受け入れがたいものだ。

強烈なライバル意識を持つ2クラブの力関係が変わったことで、近年のマンチェスター・ダービーは男子チームでも尋常ではない盛り上がりを見せている。この火が、遂に女子チームにも飛び火した格好だ。

これには近年、欧州で女子サッカーが盛り上がりを見せていることも、影響しているだろう。2019年女子ワールドカップで、イングランド代表が、準決勝進出と躍進し、男子代表チーム顔負けの人気を誇ったことも大きい。

世界中の様々なリーグにローカルダービーは存在するが、マンチェスター・ダービーは今、世界で屈指の盛り上がりを見せている。

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