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CL決勝11年ぶりプレミアL勢対決 レッズとスパーズの共通点とは

2019 5/28 07:00橘ナオヤ
トッテナム・ホットスパーズ対リヴァプールⒸvadym_burla/Shutterstock.com
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Ⓒvadym_burla/Shutterstock.com

11年ぶりのイングランド勢同士の決勝

6月1日、アトレティコ・マドリーの本拠地エスタディオ・メトロポリターノ(CLではネーミング・ライツに基づく呼称は使えないため、ワンダ・メトロポリターノとは呼ばれない)でチャンピオンズ・リーグの決勝が行われる。

ピッチに立つのは、プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーズ(以下スパーズ)とリヴァプール(以下レッズ)の2クラブ。ここ5年のCLのタイトルは、スペイン勢が独占していた。そのため、イングランド勢同士の決勝は実に11年ぶりとなり、最後にビッグイヤーを掲げたイングランドのチームは2011-12シーズンのチェルシーにまでさかのぼる。

両者ともギリギリを勝ち抜き決勝へ

今季のCLで決勝まで勝ち上がってきた両者の戦いぶりには、いくつかの共通点がある。1つは、スパーズはグループBで2勝2分け2敗、レッズはグループCで3勝3敗の2位通過と、グループステージでどちらもギリギリ2位通過だったこと。

勝ち点・得失点差が3位インテルと同じだったスパーズは、総得点数で10-5と上回り、辛くも決勝トーナメント進出を果たした。また、3位ナポリと勝ち点・得失点差が互角だったレッズは、総得点数が9-7でこちらも首の皮一枚で、2位の座を掴んだ。

“全員サッカー”で難敵を破ったことも同じ

準決勝では両チーム共に、1stレグで敗れながら2ndレグで劇的な逆転勝利を収め、それがが全員サッカーの賜物であるということも共通している。

エースのハリー・ケインとハリー・ウィンクスが負傷離脱したスパーズ。前線ではソン・フンミンとルーカス・モウラが、中盤ではムサ・シソコがその穴を埋めた。特にルーカスは準決勝2ndレグでハットトリックと大活躍。パリ・サンジェルマンで満足な出場機会を得られず、昨夏イングランドに渡ってきたブラジル人ストライカーが、チームを夢の舞台へと導いた。

また、レッズでも前線3枚のうちロベルト・フィルミーノとモハメド・サラーが負傷により欠場。代わって出場したのがディヴォック・オリギとジェルダン・シャキリだ。準決勝2ndレグで先制点したオリギは決勝進出の決めてとなった4点目も挙げ、得点こそなかったが、前線で攻撃に奮闘したシャキリも大逆転劇に貢献した。

中盤で攻撃のタクトを振るうナビ・ケイタの穴は、運動量豊富な選手たちがカバー。特にジョルジニオ・ワイナルドゥムは2得点と大活躍した。

経験の差が試合に出るか

共通点の多い両チームに違いがあるとすれば、大舞台の経験数だ。CLで過去5回優勝しているレッズは、昨シーズンを含めて8回ものCL決勝進出の経験がある。一方、スパーズが決勝に進出した国際大会といえば、30年以上前のUEFAカップでの優勝時だろう。

この経験の差がメンタルに影響し、スパーズの選手が決勝の雰囲気にのまれるかもしれない。または、レッズが昨年の雪辱を意識しすぎるあまり、ミスを多発する可能性もある。

ケイン、トリデンテともに間に合う見込み

決勝ではベストメンバーが揃いそうなレッズとスパーズ。両チームの指揮官とも、相手の特定選手に合わせてフォーメーションをいじる可能性は低いため、基本的に準決勝と同じ顔触れになるだろう。

全ポジションに注目の選手が配置される両チームの大きな違いは、サイドバックと中盤だ。リヴァプールのサイドバックは、揃って2桁アシストを記録した“クロッサー”であるトレント・アレクサンダー=アーノルドとアンドリュー・ロバートソンが担う。両サイドを切り裂き正確なクロスを供給、ペナルティエリア内でそれを待ち受けるのは“トリデンテ”。スパーズにはないこの武器。サイドを好き放題させると苦しい展開となりそうだ。

一方、トッテナムには、広い視野とパスセンスを持ち今季公式戦50試合で10ゴール17アシストのクリスティアン・エリクセンがいる。レッズにはプレーメーカーのケイタが不在のため、中盤の創造性についてはスパーズに軍配が上がる。ジョーダン・ヘンダーソンやワイナルドゥムらの高いインテンシティで、中盤での組み立てを封じることができるだろうか。

前線は負傷者の仕上がり次第。ケインが100%でないなら、ポチェッティーノの切り札としてフェルナンド・ジョレンテらとともに手札に置かれ、ピッチには、CLで結果を残しており指揮官の信頼が厚いソン・フンミンとルーカスが送られるだろう。

レッズには、ヨーロッパ最強とも称される“トリデンテ”、サラー、フィルミーノ、サディオ・マネの3トップが揃うと予想される。彼らのうちの誰かがスターティングメンバーに入れなかったとしても、オリギがその穴を埋められるだろう。

昨シーズンの雪辱を晴らし、7シーズンぶりのタイトル獲得を狙うレッズ。新スタジアムが完成してクラブの新時代を迎えた今シーズン、更にCLタイトルを獲得し、完璧なハッピーエンドを迎えたいスパーズ。最後に笑うのはどちらだろう。