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マンチェスターU史上最高額ポグバの行く末は 紆余曲折のシーズン終了

2019 5/14 11:00Takuya Nagata
ポール・ポグバⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

レアル・マドリーに超大型移籍の可能性、欧州CL制覇へ

プレミアリーグの今シーズン全試合が終了した。

ここからの話題は以前からざわついていた、マンチェスター・ユナイテッド史上最高額8900万ポンド(約118億円)の男、ポール・ポグバの移籍だろう。レアル・マドリーのジネディーヌ・ジダン監督が獲得に乗り出しているという現地報道もあり、実現した場合は超大型移籍になることが予想される。

苦しんだ今季、戦術めぐり監督と衝突

2018-19シーズンは、ポグバにとって非常に難しいシーズンだった。開幕前にも移籍リクエストをしたとも言われているが、残留が決まると今度は戦術的な意見の食い違いから、ジョゼ・モウリーニョ監督との関係が破綻してしまった。キャプテンマークをはく奪され、ベンチを温める日々。これは、ポグバがあまりにも大物だから生じた衝突といえる。

モウリーニョ監督は、MFのポグバに守備から入るように指示した。しかし、「守ってよし」「攻めてよし」と万能なポグバは納得せず、「守る事しかできない選手であれば無用」の論争。攻撃能力でも秀でているポグバの器だからこそ、飼い殺しの目に遭った。

結局、ユナイテッドの宝の持ち腐れは誰の目にも明らかで、チームが絶不調に陥るとモウリーニョ監督が任を解かれた。

甦ったかに見えた怪物、欧州CL出場権獲得ならず年俸ダウン

オーレ・グンナー・スールシャール新監督の下で積極的な攻撃参加が奨励され、息を吹き返したポグバ。水を得た魚のようにいきいきと動き回り、得点とアシストを量産した。

シーズンの終盤は何とか鬱憤を晴らしたと思えるポグバだが、必ずしもそうは言い切れない。シーズン前半のもたつきが響き、マンチェスターUは今季プレミアリーグ4位以内に食い込めないことが確定。来季の欧州チャンピオンズリーグ(CL)出場権を逃した。

これにより、ポグバの来季の年俸は約4分の1ダウンするといわれている。本来は出場ボーナスだから足し算なのだが、欧州CL出場を当然の使命と考えるマンU選手たちにとっては引き算的な印象に映ってしまう。基本給を上乗せして穴埋めすることも考えられるが、欧州CLからの収入がなくなるのだから、クラブとしても簡単な決断ではない。

大金を稼ぐプロになった今でも、プライベートでサッカーに興じるような根っからのサッカー少年であるポグバ。CLの試合数がなくなり、喜ぶような選手ではない。代理人が間に入り交渉を進めているのだから、年俸ダウンといった金銭的な条件ももちろん検討材料になる。

しかし、一番大きいのは選手としてのアンビションだろう。U20ワールドカップでフランスを優勝に導いた際には、怪物の出現を予感させた。190cm超のセンターバックのようなフィジカルがありながら、中盤で華麗に攻撃をつくりゲームをコントロールし、当時から既に異次元の選手だった。2018年はフル代表でW杯優勝しており、残るビッグタイトルは欧州CL。昨季まで欧州CL三連覇していたレアル・マドリーへの加入は、その近道だともいえる。

フランス司令塔・世界一の男、ジダンとポグバの共通点

レアル・マドリーに復帰したジネディーヌ・ジダン監督は王者復権を目指し、鬼気迫る勢いで来季チームの刷新に動いており、ポグバを高く評価している。ジダンと同じくアフリカ移民系フランス人で、ポジションも同じ中盤。お互い世界最高峰を知り、自然と心を通わせる間柄。

マンチェスターUは、当然ポグバを戦力として高く評価しており、移籍金要求額は1億6千万ポンド(約200億円)とも1億3千万ポンド(約163億円)とも言われる。しかし、心ここにあらずの選手を無理に引き留めても、チームで高いパフォーマンスを発揮することは難しい。それは、モウリーニョ時代に誰もが目の当たりにしている。

契約期間は残すところ2年となっており、減額してでも売れるうちに売っておいた方が良いという考えに傾くかもしれない。一度は、ユヴェントスにフリートランスファーを許しているため、またしても超大物選手であるポグバをフリーで移籍させてしまえば、クラブフロントへの風当たりも強くなる懸念がある。最後は移籍金交渉が決め手になるだろう。

世界一になるために生まれてきた男、ポグバ。今季、ユナイテッドは世界最高の選手を冷遇し、その結果として欧州CLへの出場を逃した。ユナイテッドのサポーターは、ポグバが退団することになっても責めずに受け入れられるだろうか。