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クラブW杯ボイコット示唆、欧州クラブ協会とは

2019 4/7 15:00Takuya Nagata
サッカー,ⒸSPAIA
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欧州が反発、クラブW杯拡大案にノー!

国際サッカー連盟(FIFA)は米国マイアミで行った理事会で、クラブワールドカップを現行の毎年7チーム開催から、4年毎に24チームで開催する方針を決定。欧州の理事はこの案に反対だったが、FIFAは、理事会の決定事項として2021年大会からの実施を発表した。

そこで即座に反応したのが欧州クラブ協会(ECA)だ。ECAに加盟する232クラブが、改編後のクラブW杯に参加しない意向を明確に示したのだ。

レター送付「許容不可」

レアル・マドリ―、バルセロナ、マンチェスター・ユナイテッド、バイエルン・ミュンヘン、ユベントス、パリ・サンジェルマン(PSG)等、15クラブの署名入りで欧州サッカー連盟(UEFA)に送られたレターの内容が、ドイツのズッドドイチェ・ザイトゥング祇で明らかになった。

「クラブワールドカップのリフォームに強く反対します。ECAに加盟するクラブは、そのような大会に参加しません。2024年まで現行の大会と試合スケジュールが決まっている状況で、欧州クラブにとってこのような世界大会は、いかなるものもであっても許容できません。欧州クラブの正当な懸念と利益に適切な方法で対応がなされるまで、FIFAには、クラブワールドカップのいかなる決定も延期することを要請します。」

ECA は、収益の分配の仕方を検討し直すタスクフォースの設置を要求しているが、FIFAはそれを拒んでいるとも言われる。

もうひとつの問題は、2021年があまりに性急だという点だ。ちなみにFIFAは、各国代表チームで戦うW杯の拡大も当初の2026年から2022年に前倒しを決定している。ECAは、既に年間の試合数が、とりわけ代表選手にとって許容しがたいものになっているとし、W杯の32チームから48チームへの拡大にも反対の姿勢を示している。

また現行のクラブW杯に完全に満足しているというわけでもなく、12月という欧州のシーズンの真っただ中で行われることが欧州勢からは問題視されている。

欧州クラブ協会(ECA)の成り立ち

FIFAの方針にことごとく反発する欧州クラブ協会(ECA)とは、いったい何者か。一言でいうと、欧州クラブの利益や立場を守り、主張するための団体だ。その原型となるのがG14と呼ばれた欧州ビッグクラブの任意団体だった。

サッカーという競技の初の統括団体、イングランドサッカー協会(FA)が1863年に創設された時も、クラブの集まりだったが、それと何が違うのか。代表チームの上には直轄管理する各国協会がある。それらの協会が加盟するのがUEFAなどの各大陸・地域の連盟。その上にFIFAとピラミッドが連なる。

年間を通して選手と契約し、給料を支払っているのはクラブだ。しかし国際試合への選手召集へ応じる義務があり、選手が代表の試合で負傷しても何の補償も以前はなかった。

そこで有力クラブが集団で、クラブの権利を主張したり訴訟を起こしたりして、FIFAの予算や政策にも大きな影響を与えてきた。それがやがて、UEFA傘下の正式な団体ECAとなり加盟クラブは232にまで増え今に至る。

日本と欧州、代表チームの認識に違い

日本でもクラブと代表チームの対立は一部に存在する。しかし、召集されれば、選手もクラブも名誉なことというのが一般的な認識だろう。日本代表の人気は高く、代表選手を輩出することは、クラブの価値を高めることにもなる。

一方、欧州ではクラブの大会が代表チームの大会と肩を並べるくらいの人気を誇っている。強豪クラブの関係者は、選手が代表チームに呼ばれないことを切に願っている。たとえ補償があるとはいえ、有力選手が負傷したら、タイトルレースで不利になる。順位が一つ違うだけで、リーグからの分配金には億単位の差が出る。

欧州のビッグクラブは、代表選手の集まりだ。国際試合があるごとに、選手がごっそりいなくなり、疲弊して帰ってくる。これがクラブが選手を供出したくない理由だ。

FIFA改革は頓挫、クラブW杯の再考必至

FIFAは、クラブW杯改革で増収することを強調し、支持を取り付けようとしている。しかし、欧州では、各国リーグやクラブへの配慮が不十分だという意見がある。

FIFAジャンニ・インファンティーノ会長は理事会後に「最強のチームが集い、真の世界王者を決める、真のクラブワールドカップをファンにお見せすることができるのは、非常にうれしいです。」と語っていた。

しかし、優勝候補筆頭の欧州勢のボイコットとなれば、ワールドカップと言えなくなってしまう。Jリーグ勢の今後にも大きく影響するクラブW杯。FIFAは再考を余儀なくされるだろう。