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ピケが世界最強の非公式代表チームではつらつ スペイン代表引退で「バルセロナでも好調」

2019 4/3 15:00Takuya Nagata
ピケ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

カタルーニャ代表がベネズエラに勝利

FIFAが定めるインターナショナルウィークには、クラブに所属する選手たちが、代表に招集され、世界各地で国際試合が行われる。ヨーロッパでは、いよいよ欧州選手権(ユーロ)予選が始まった。優勝候補の一角、スペインは、ルイス・エンリケ監督が個人的事情でマルタ戦を欠席したが、順当に2勝しグループFの首位。しかしそこには、もう一人の重要人物の姿がなかった。FCバルセロナのジェラール・ピケだ。

圧倒的な実力がありながらスペイン代表引退宣言

ジェラール・ピケ(32歳)は、2018年ロシアワールドカップを最後にスペイン代表を引退した。当時スペイン国内は、バルセロナ市を首都におくカタルーニャ自治州の独立運動でざわめいていた。ピケは、積極的にカタルーニャ独立を支持するコメントを発していたため、スペイン代表に招集された際に、サポーターからブーイングの嵐を浴び、練習が異様な雰囲気に包まれることもあった。スペイン代表でプレーする資格があるのかとの声が聞かれる中、監督や本人は、政治とサッカーは別物だと言い続けてきた。

しかし、バッシングのさなか、ピケはあっさりと身を引いた。代表引退後もFCバルセロナの主力選手であることに変わりはない。eスポーツのプロサッカーリーグ創設にも参画し、194cmの長身で2枚目なことからモデルも務め精力的。妻は南アW杯公式ソング「Waka Waka (This Time for Africa)」を手掛けた歌手シャキーラで、様々な層から注目され続ける存在だ。

カタルーニャ代表でプレー、即席ながら尋常でない強さ

サッカーの2大国際大会の一つが始まる大事な3月の国際週間をピケがどのように過ごしていたかは、気になるところだ。エンリケ監督は、バルセロナ時代も師弟関係にあり、気心は知れた仲で、スペイン代表復帰の誘いもある。しかしピケは、カタルーニャ州にあるジローナFCの本拠地エスタディ・モンティリビの芝生に、見慣れない赤と黄色のストライプのユニフォームをまとい立っていた。そこでカタルーニャ代表の一員としてベネズエラとの試合に出場し、勝利に大きく貢献した。

Jリーグが発足する前の日本サッカー冬の時代、主要国の代表チームは、なかなか日本代表と試合をしてくれなかった。一地方の選抜チームが一国の代表チームと試合をし、勝ってしまうというのは、ただ事ではない。しかもベネズエラは、その数日前にメッシ擁するアルゼンチン代表を3-1で下しているのだ。FIFA公認の代表チームではないため、カタルーニャに選手の拘束力はない。したがってクラブが拒否し召集できない選手も多々おり、寄せ集めの急造チーム。活動日は僅かに1日で、これだけの実力があるのは、異様にも映る。

幻の代表チームで晴れ晴れのピケ

この非公式の国際試合を組んだのは、カタルーニャ・サッカー連盟だ。直接FIFAには加盟しておらず、カタルーニャは、スペイン・サッカー連盟の管轄地域だ。しかし、カタルーニャ連盟創設は、1900年でスペイン連盟より13年も早い。

カタルーニャ代表は、単なる州選抜とは片づけられない。カタルーニャ自治州は、独立運動が盛んで、自治州政府は、一方的な独立宣言で一時、スペイン中央政府から自治権を凍結され選挙をし直したが、またしても独立派が過半数を握っている。

カタルーニャ代表とは、FCバルセロナと同じく、一国として認めてもらえない地元住民の想いを代弁し、ひのき舞台で活躍する存在なのだ。この試合も、スタジアムは超満員のファンで埋め尽くされた。

スペインに対抗する決起集会的な意味もあり、スペインを意識するようなチャントも聞かれたが、ピケは言う。「カタルーニャは、良い手本を見せないといけない。」自分は散々、スペインサポーターにしごかれたが、やり返す気は全くない。

「決断を後悔はしていない。国際試合を退いた選手全般に言えることだが、スペイン代表を引退してから、バルセロナでのパフォーマンスが好調だよ。カタルーニャ代表は、1日だけだからスペイン代表引退とは何も関係ないよ」

ピケはスペインへの因果関係を否定する。ただスペイン代表が公式戦に臨む一方で、参加義務のないカタルーニャ代表で進んでプレーした。心の声に従い、いい汗をかいた。心地よい時間と空間、そんな感覚なのかもしれない。