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新たなチーム作りに苦しむレアル。浮沈のカギ握る今冬の補強

2018 10/31 18:00橘ナオヤ
ⒸShutterstock.com
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エース(=ゴール)と指揮官(=自信)を失った白い巨人

レアル・マドリーが苦しんでいる。この夏、驚異的な得点能力と人気を誇ったスーパースター、クリスティアーノ・ロナウドがクラブを去ったのだから当然だろう。当初から不安視されていた通り、彼を失ったレアルは得点力不足に悩まされている。サッカーではゴールネットを揺らさない限り、絶対に勝ち目はない。

第9節終了時点で、マドリーはリーガ・エスパニョーラで7位に甘んじ、得点数はわずかに13点だ。得点数ランキングでは4位タイ。1位のバルセロナの23得点、2位セビージャの20得点と比べると物足りない数字といえる。攻撃の原動力となっていたエースの抜けた穴は予想以上に大きかったようだ。

追い打ちをかけるように、監督ジネディーヌ・ジダンもクラブを去った。前人未到のチャンピオンズリーグ3連覇を果たし、選手としてのみならず監督としてもクラブの歴史に名を残したジダン。彼の後任フレン・ロペテギにはCL4連覇、リーガ優勝、そしてチームを勝たせ続けるという任務が課せられた。しかし、ジダンとは異なるタイプのロペテギは白い巨人の扱いに苦しんでいる。勝つことが遠のいている状況で、自信なさげにうつむく選手たちの顔を上げられずにいるのだ。

開幕当初はリーグ戦、CL予選ともに快勝を続け上々の滑り出しだったのだが、両コンペティションで既に4敗し、8時間超無得点という不名誉な記録も打ち立てた。

このような状況で迎えた敵地カンプ・ノウでのクラシコ、バルセロナ戦。1-5で大敗を喫し、監督ロペテギも解任されてしまった。このままでは昨シーズン同様、クリスマスを迎える前にリーガタイトルの行方が決まりかねない。過渡期に入った白い巨人は、多くの懸念を抱えたまま冬を迎えようとしている。

原因はロナウドロスで露呈した歪なチームバランス

何といっても最大の懸念は、得点力不足だ。毎シーズン40~50得点は当たり前だったロナウドを失ったにもかかわらず、クラブは彼に代わるストライカーを補強しなかった。確かに前線にはギャレス・ベイルやカリム・ベンゼマ、マルコ・アセンシオ、そして買い戻されたマリアーノ・ディアスと優れた選手が揃っている。それでもロナウドが決めていた40ゴールを彼らが補うのは困難だ。

ロナウドの代役問題だけではない。マドリーは長らく固定メンバーで戦い続けてきた結果、チームに偏りが生まれている。それが、ロナウドの移籍と主力の高齢化で明るみになった。

現在トップチームに登録されている25人の平均年齢は26歳。決して高くはないのだが、若手とベテランの中間の年齢層が少ない。さらにスタメン11人のうちケイラー・ナバス、セルヒオ・ラモス、マルセロ、ルカ・モドリッチ、ベンゼマという替えのきかない5人が30代だ。ナバスの代役にはティボー・クルトワがいるが、今後体力的に下降線を描いていくフィールドプレーヤー4人とバックアッパーとの戦力差は大きい。

ここ数シーズンでマドリーが獲得した選手たちは若く、最年長がクルトワの26歳で、他は22歳や20歳といった若手ばかり。ヘスス・バジェホ、アルバロ・オドリオソラ、ダニ・セバージョス、ヴィニシウス・ジュニオールといった若手は、レギュラー陣を脅かすだけの力をまだ持っていない。若手が先発した試合で勝ちを逃し主力頼りになった結果、彼らへの負担が増している。

ラファエル・ヴァランはW杯を決勝まで戦った影響か本調子には遠く、新エースと期待されたベイルは相変わらずケガがちだ。ほかにもマルセロ、モドリッチ、イスコ、アセンシオが負傷している。

今冬の補強は不可欠

こうした現状を見ると、クラブの不振はロペテギだけの責任とは言い難いが、一因とは言えそうだ。現在、マドリーのレギュラー陣の多くは、ジョゼ・モウリーニョやジダンというカリスマタイプの監督のもとで結果を示してきた。残念ながらロペテギはそのタイプではなかった。

後任として、セカンドチームの監督を務めるサンティアゴ・ソラリ氏が暫定的に指揮を執ることになったが、クラブとしてはカリスマ性を備えたクラブOB、あるいはモチベータータイプの監督に交代することも視野に入れているだろう。

しかし、これは対症療法に過ぎず、重要なのは冬のマーケットでの動きだ。ロナウドに代わるストライカー、そして即戦力になる選手の補強が不可欠なのだ。いくらベイルが不満を唱えようとも、こうもケガが続くと恒常的な戦力として計算できない。

補強せずマリアーノの将来に賭けるのであれば、いっそレギュラーに固定し、経験を積ませたほうがいいだろう。それより、キリアン・ムバッペやハリー・ケインの獲得に走る方がよほどレアル・マドリーらしく、また得点力アップの即効性も見込める。

マドリーのようなクラブは試合数が多く仮に調子をあげたとしても、経験不足の若手と出ずっぱりのベテランだけではシーズン終わりまで走りきることは難しい。昨シーズンのリーグ戦が好例だ。やはり、経験と体力を併せ持った即戦力を補強すべきだろう。過渡期に入ったマドリーはどのような道を進むのだろうか。