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バルサからは1選手のみ、スペイン代表は黄金時代の再興なるか

2018 10/12 11:02Takuya Nagata
ルイス・エンリケ,スペイン代表,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ネーションズリーグに唯一召集は、セルヒオ・ブスケツ

スペインサッカー連盟(RFEF)は、10月に行われるUEFAネーションズリーグのウェールズ戦とイングランド戦に向けて招聘する代表チームのメンバーを発表した。レアル・マドリー所属の選手がナチョ・フェルナンデス(DF)、セルヒオ・ラモス(DF)、ダニ・セバージョス(MF)、マルコ・アセンシオ(FW)と4選手選ばれたのに対し、ライバルチームのバルセロナ所属の選手はセルヒオ・ブスケツ(MF)のみだった。

ルイス・エンリケ監督は「メンバー入りしていない選手については、タブーというわけではないが、コメントしない。これは私のチームであって、所属クラブは関係ない。」と強調した。

レアル・マドリーとバルセロナといえば、エル・クラシコ(伝統の一戦)に象徴されるようにスペインの2大クラブであり、今まで多くの代表選手を輩出してきた。今回、唯一バルサ所属のセルジオ・ブスケツもベテランの域に差し掛かっており、近い将来、バルセロナ所属の選手がいないスペイン代表チームを目にする日がやってくるかもしれない。

ロシアW杯を戦ったバルサ選手とその後

2018年ロシアワールドカップに召集された当時、バルセロナ所属だった4選手の現状をみてみると、セルヒオ・ブスケツ(30歳)が順当に選出。

ジョルディ・アルバ(29歳)は現在もバルセロナでプレーするが、エンリケ監督との意見不一致があったと言われており、構想外になっている可能性がある。

スペイン代表の黄金時代を支えたジェラール・ピケ(31歳)は、近年バルセロナのあるカタルーニャ地方の独立を支持していると思われる言動で注目を集めていた。独立運動の渦中において、スペインの他の地域やレアル・マドリーへの挑発とも捉えられるコメントを発していたため、代表チームの練習中にサポーターから大ブーイングを浴びる異様な状況を招いてしまった。

センターバックでピケとコンビを組みキャプテンの立場にあるセルヒオ・ラモスも、「チームの和を乱すコメントは慎むべき」と言わざるを得ない事態であった。そのような状況がどれだけ影響したのかはわからないが、ピケはロシアワールドカップ後に代表引退の決断を下した。

アンドレス・イニエスタ(34歳)は子供の頃から所属していたバルセロナを退団し、ヴィッセル神戸に加入するという一大決心と同時に、スペイン代表も引退した。代表126試合出場という輝かしいキャリアに幕を下ろし、後進に道を譲った形だ。

現在のバルセロナに優秀なスペイン国籍の選手がいないわけではないが、年齢的に若く、世代交代の真っただ中といったところだ。エンリケ監督は、スペインの4つの異なる文化圏のうち、3地域で競技経験があり、レアル・マドリーとバルセロナでもプレーし、チームを融合させるにはこれ以上ない人物だ。メンバーを見ても極端に偏った選考をしているとは思えない。

第一次黄金時代はバルサが先導

スペインは、実力のある選手が揃っており、そのまま力を反映させれば高いパフォーマンスを発揮するが、チームあるいは国として団結に欠けることが歴史的に同国代表のネックになってきた。偶発的要素はあるが、今回バルセロナの選手が減ったことでチーム内にカタルーニャ独立論争がなくなり、チーム分裂を招く要素は一つ減る。

一方で、有力選手が2クラブに集中していたことは、チームワークや共通理解を高めることにもつながった。活動期間が短い代表チームは、クラブチームより連携で劣ると言われるが、欧州選手権とW杯を獲ったスペイン代表のパスワークはまるでクラブチームのようだった。

黄金期の始まった2008年欧州選手権(ユーロ)から2018年ワールドカップ(W杯)までのスペイン代表チーム内の所属選手内訳をみると、この2大大会で、両チームとも3人を割ったことはなく、多い時でレアル・マドリーから6選手、バルセロナからは7選手が代表入りしていた。

やっぱり強い新生スペイン、バルサの影薄い第ニ次黄金時代の到来は?

監督を急遽すげ替えて臨んだロシアワールドカップでは、お家騒動で自滅した形となってしまったスペイン代表。だが、新設され9月に開幕したネーションズリーグでは、ロシアW杯4位のイングランドに2-1、同じく準優勝のクロアチアに6-0とアウェー2試合でしっかり勝利した。

黄金時代が一度、終焉したかに見えるスペイン。しかし底力は本物。前回はバルサのパスサッカーが大きくけん引したが、この先、バルサが主役ではないスペインの第ニ次黄金時代が訪れるかもしれない。