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3人のスターが去ったリーガ・エスパニョーラ ビッグ3の今後は

2018 8/12 11:00SPAIA編集部
クリスティアーノ・ロナウド,アンドレス・イニエスタ,フェルナンド・トーレス,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

リーガ・エスパニョーラで起こるビッグ3の大変革

リーガ・エスパニョーラでは、特にビッグ3と呼ばれる3クラブにおいて、大変革が起きている。

FCバルセロナは、クラブのアイデンティティを体現する数少ない存在だったアンドレス・イニエスタがクラブを去った。主力は軒並み30代に突入しており、早急に軸となる若手を見出す必要がある。

ライバルのレアル・マドリーは、絶対的エースだったクリスティアーノ・ロナウドが突如ユヴェントスへ移籍し、監督も交代。ワールドカップでMVPを獲得したルカ・モドリッチも移籍の噂が絶えない。

そしてアトレティコ・マドリー。サポーターに愛されたフェルナンド・トーレスがサガン鳥栖へ移籍し、主将のガブリエル・フェルナンデス・アレナス(ガビ)はカタールへと去った。

3クラブはそれぞれ、新時代に向けた補強を進めていく必要がある。各クラブの現在地と展望を見てみよう。

バルサは最もクラブのアイデンティティを体現した男が去り、新たな軸が必要に

イニエスタがバルセロナに別れを告げた。彼が去ったことでバルサは一時代を終えたといえる。黄金期を過ごしたカンテラーノで残るのはリオネル・メッシ、ジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケツ・ブルゴスくらいだ。いずれもトッププレーヤーであり、まだ数年は一線でプレーできるだろう。だがすでに彼らは30代だということを忘れてはいけない。クラブはバルセロナというブランドと、哲学を体現できる若手を見つける必要がある。バルサのアイデンティティである「最終ラインからの組み立て、数タッチでのボールさばき、ポゼッションを軸としたサッカー」を続けるためにも、メッシの後継者は難しいとしても、ピケ、ブスケツ、そしてイニエスタの役割を継ぐ選手を見つけなければならない。

20歳手前のカンテラーノである、オリオル・ブスケツやアレックス・コラド、マテウ・モレイは今後トップチームに呼ばれる機会が増えるだろう。さらに、移籍市場から才能を獲得する必要があるが、昨シーズン鳴り物入りで加入したフィリペ・コウチーニョと、ウスマヌ・デンベレのうち、デンベレは適応に苦しんでいる。また、コウチーニョも才能の片鱗を見せているが、まだ本領を発揮できているとは言い難い。

今夏ここまで獲得したのはマウコム、クレマン・ラングレ、アルトゥール、そして31歳のアルトゥーロ・ビダルらだ。

マウコムは将来性を見込んでの獲得と言われ、おそらくレンタル移籍で武者修行に出るだろう。アルトゥールはシャビエル・エルナンデス・クレウス(シャビ)に似たプレースタイルと言われ、バルサのスタイルを継承する可能性はある。クラブは即戦力のベテランと若手を獲得しているが、すぐに主軸となる選手はいない。チームは軸となる選手を見定め、それがカンテラーノでも新加入選手であっても、多大な功績を残したサッカー選手であるヨハン・クライフから続くアイデンティティを注入していく必要がある。それができる現役選手は、もうそう多くはない。

絶対的エースを失ったマドリーはイスコとアセンシオが鍵に

この夏、レアル・マドリーには幾度も激震が走った。類まれなカリスマ性で、スター選手たちを束ねていた監督のジネディーヌ・ジダンがチャンピオンズリーグ三連覇の達成直後に退任。W杯前夜に大きな騒動と共に、前スペイン代表監督ジュレン・ロペテギが就任した。そしてW杯が佳境に差し掛かった7月10日、絶対的エースだったロナウドがユヴェントスへと電撃移籍を発表した。
ロペテギ就任とロナウド退団でマドリーは大きく姿を変えるだろう。カウンタースタイルを変える必要はないだろうが、ロナウドという最強の武器を失ったいま、より前線全体で得点を取りに行くスタイル作りが必要だ。

現有戦力を見ると、去就が不確かな選手と、ロペテギが重宝するであろう選手がいる。

まず前者は、ガレス・ベイルとルカ・モドリッチの元トッテナムコンビだ。ジダン前監督のもと、出場機会が限られていたベイルは、CL決勝のベンチスタートに怒りをあらわにしていた。またW杯でMVPに輝く活躍を見せた中盤の要モドリッチも、移籍が噂されている。

一方、後者はフランシスコ・ロマン・アラルコン・スアレス(イスコ)だ。ロペテギがスペイン代表を率いていた当時、マドリーで出場機会が限られていたイスコは代表戦で躍動した。ロペテギが彼を使わない理由はない。

ロナウドの抜けた穴はとてつもなく大きい。だがその穴を埋められる選手はいない。そんな選手は世界中見てもロナウド本人かメッシくらいである。ロペテギが新たなマドリーのスタイルを探す上で、ベルギー代表エデン・アザールの獲得は一つの解かもしれないが、彼もゲームを作る選手であり、よりゴール奪取に特化した選手が必要だ。現有戦力でそれに応えられるのは、ベイルとマルコ・アセンシオ だろう。特にアセンシオはイスコ同様にロペテギが信頼を置くスペイン人選手である。

このビッグ3で一番大きくチームの作り直しを強いられているのはマドリーだろう。その鍵は、前スペイン代表監督とスペイン代表の未来を担う、イスコとアセンシオの2選手にあるはずだ。

2枚のシンボルが去ったアトレティコだが、最も盤石か?

アトレティコサポーターのアイドルであり、チームのアイコンだったフェルナンド・トーレス。だが彼の移籍は想定内だった。彼は多くの試合で、監督のシメオネのファーストチョイスから外れていたからだ。それ以上に驚きだったのは、主将のガビがアル・サッドに移籍したことだ。ピッチの内外でクラブのシンボルとして君臨した二人が去ったことで、アトレティコを体現して選手やサポーターを束ねる存在が必要になる。それを担うのは、新主将のディエゴ・ゴディン、そして副主将のホルヘ・レスレクシオン(コケ)だろう。アイコンだった二人が抜けても、シメオネイズムを理解する二人がいる。これはイニエスタやロナウドの代わりがいないライバルと比べて大きな強みだ。

アトレティコは、その他の現有戦力の多くが残留したまま新シーズンを迎えそうだ。これまで何度も主力選手を失ってきたアトレティコだが、今オフはエースのアントワーヌ・グリーズマンが残留を表明した。一度はクラブを去ったディエゴ・コスタもいる。バックアッパーとしてGKアントニオ・アダンを獲得し、さらに将来性があり即戦力にもなるフランス代表トマ・レマルが加入するなど、チームはバランスがとれた陣容になっている。懸念をあげるなら、フアンフランやガメイロなど、これまでチームを支えてきた選手が年を重ねてきており、うまく若手にシフトしなければならないポジションがいくつかあることだ。だがマドリーやバルサと比べて、チームの骨格は大きく変わっていない。3クラブで最も盤石と言っていいだろう。

3人のスターが去った、リーガ・エスパニョーラ。今後、ビッグ3がどのようなチーム作りをしていくか、サッカー界の大きな見どころの一つとなる。