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【最高の相棒】カリム・ベンゼマなくしてあの男の存在はなし

2017 11/22 16:07dai06
カリム・ベンゼマ選手
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ベンゼマの生い立ちとジダンとの共通点

レアル・マドリードCF(以下、マドリード)でプレーするカリム・ベンゼマは、1987年12月19日にフランスのリヨンで生まれ、フランス代表選手としてもプレーしてきた。彼はフランス人だが、ベンゼマ家は祖父の時代にリヨンにやってきたため、ルーツはベルベル系のアルジェリア人だ。
フランスにはこうしたアルジェリアをルーツとする人々が多く、それはサッカー界でも例外ではない。ベンゼマと同じようなケースでは、あのジネディーヌ・ジダンもそうだ。

ベンゼマは1996年にオリンピック・リヨン(以下、リヨン)のユースに入ると、あっという間に頭角を現すようになる。同年代の少年らとは全く違う動き、成長スピードを見せ、2004-05シーズンよりリヨンでプロデビュー。2008-09シーズンまで同クラブでプレーし、2009-10シーズンからはマドリードでプレーすることになる。
前述のジダンもフランスで少年時代を過ごし、ユヴェントスFCを経て、マドリード入りしている。時代は違えども、アルジェリアルーツ、フランスでの武者修行という点は両者を結びつけ、ベンゼマにジダンの姿を重ねる人々も多かった。

苦難のマドリード!同い年のイグアインとの競争

リヨンで名声を手にし、見事名門であるマドリード入を果たしたベンゼマ。しかし、彼を待ち受けていたのは、熾烈な競争だった。
名門であるマドリードには、多くの優秀な選手が在籍しており、ベンゼマが主戦場とするトップの位置にも多くのライバルがいた。ラウール・ゴンザレス、ゴンサロ・イグアインらがそうだ。
ラウールはベンゼマより約10歳年上で、絶対的な存在感を放っていた。イグアインはベンゼマと同い年、誕生日も9日しか違わないのだが、ベンゼマ同様に新進気鋭の選手として捉えられていた。

3500万ユーロ(約47億円)という高額な移籍金も相まって、開幕当初こそスタメン起用されるベンゼマだったが、やがてライバルに出場機会を奪われていくようになる。
台頭したのはイグアインだった。両足を器用に扱えるイグアインは、瞬く間にゴールを量産し、2009-10シーズンのリーグ得点ランキング2位となる27得点を記録した。ベンゼマのマドリードデビューは苦しい幕開けとなった。

モウリーニョ就任で変わるチーム、そしてベンゼマ

イグアインの評価は揺るぎないものとなりつつあったが、2010-11シーズンは負傷もあり出場機会が伸び悩む。そして2011-12シーズンには、当時の監督であるモウリーニョがベンゼマを重用し、チーム内の序列が変わる。
モウリーニョの就任によって、チームは瓦解したとも後に評価されるのだが、彼の指導によってチャンスを掴んだ選手、才能を開花させた選手もいる。まさにベンゼマがそうだった。
2011-12シーズンからベンゼマは大活躍。リーグでは21得点。その他の大会なども合わせれば34得点を記録し、チームの大黒柱となった。

ロナウドの相棒として、ベンゼマのプレースタイル

マドリードの大黒柱となったベンゼマだったが、チーム内で彼以上に目立つ存在がいる。それが、クリスティアーノ・ロナウドだ。ロナウドはサッカー界のアイコンであり、ラウールが去ったマドリードの絶対的存在だ。いくらベンゼマが活躍しようとも、その地位が揺るぐことはないだろう。
しかし、ロナウドの優れた攻撃力はベンゼマの存在なしに語ることはできない。

ベンゼマは足元でのボールの扱いが上手く、その力によりゴール前でも落ち着いてゴールを決めることができている。相手のプレスをいなし、ゴールへの筋道をつくることができるのだ。
この動きはポストプレーにも活かされ、サイドから切り込んでくるロナウドとのワンツーや、ラストパスにも役立っている。ロナウドの動きが派手な分、ベンゼマのこの地味なプレーが注目されることは少ない。
しかし、相棒であるベンゼマの動きなくして、ロナウドの活躍もマドリードの勝利もないのだ。

競争相手ゼロのベンゼマと受け継がれる系譜

マドリードにはアルバロ・モラタという若く優秀なストライカーがいた。彼はレンタル移籍を経てマドリードに復帰するが、ベンゼマの牙城を崩すことができず、結局退団してしまう。彼にはロナウドを活かす術がなかったからだ。
マドリードがロナウドをエースとして起用し続ける限り、その相棒となるベンゼマの起用も必要になってくる。モラタや他の選手では、ロナウドを活かすことができないだろう。

かつて自身に姿を重ねられていたジダンは、今やマドリードの監督であり指導を仰ぐ立場にいる。プレーする位置は違っても、現役時代のジダン同様、ベンゼマもマドリードに欠かせない存在となった。
アルジェリアにルーツを持つフランス人の系譜は、今もマドリードに受け継がれている。