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【2017年夏】リーガ・エスパニョーラ強豪クラブの課題と補強通信簿

2017 10/13 10:05dai06
スペインサッカー
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ネイマールの退団で狂わされたバルセロナ

FCバルセロナ(以下、バルセロナ)は、色々な意味でこの夏の話題の主役となった。
クラブが主力のネイマール選手(以下、敬称略)を失ったことは、大きな痛手であり、サッカー界をも震撼させた。しかし、彼の放出で得たのは290億円という想像もつかないような大金だ。

ネイマールは、バルセロナにフィットしており、MSNという世界最高峰の攻撃陣の一角だった。ボールを持たせれば華麗なドリブルスキルでいくつもの相手選手を抜き去り、誰にも真似できないようなコースからチャンスメイクをし、ゴールを奪った。
バルセロナに2013年の夏からの日々はあまりに短く、唐突に終わりを迎えた。

そんな状況のなか、バルセロナは彼の後釜探しに奔走した。
多くの選手の名前が挙がるが、どのクラブからも足元を見られ、簡単に選手を獲得することはできなかった。市場の値は上がりに上がり、結局獲得できたのはウスマン・デンベレ選手(以下、敬称略)だった。デンベレは若く、スペースを見つけて突破することが得意な選手だが、ネイマールに次ぐ存在とはまだまだ言い難い。

その上、フィリペ・コウチーニョ選手、アンヘル・ディ・マリア選手らの獲得にも失敗し、ネイマールの放出で得た大金は、前述のデンベレとパウリーニョ選手(以下、敬称略)の獲得のために消えていった。パウリーニョは、世界最高峰のクラブであるバルセロナで通用するかどうか、疑問視する声も多い。約50億円という価格は高過ぎた。

ネイマールの退団で傷付いたサポーターの心は癒えることなく、怒りの矛先はクラブのフロントに向いている。これからデンベレとパウリーニョがチームにフィットし、タイトルを獲得することができなければ、この怒りが収まることはないだろう。

クラブの大黒柱であるリオネル・メッシ選手にアンドレス・イニエスタ選手、中盤を引き締めてきたセルヒオ・ブスケツ選手などなど、バルセロナの生え抜き選手は年齢を重ねている。彼らに代わる逸材の発掘と育成が、バルセロナの未来を大きく左右しそうだ。

若手の発掘で順風満帆のレアルマドリード

レアル・マドリードCF(以下、マドリード)は、不運なライバルを尻目に必要な箇所に必要な人材、しかも若手の有望株を獲得し選手層の厚みをもたらしている。

SBであるマルセロ選手(以下、敬称略)の控えには、テオ・エルナンデス選手(以下、敬称略)を獲得。テオ・エルナンデスはアトレティコ・マドリード(以下、アトレティコ)のユースの出身で、兄も同クラブのセンターバックとしてプレーしている。
テオ・エルナンデスは非常にスピードがあり、サイドから駆け上がれば正確なクロスが供給できる。マルセロ同様に前線への攻撃参加が期待できるだろう。

中盤にはダニ・セバジョス選手を獲得。設定されていた契約解除金は約15億円だったが、最終的には約20億円が支払われた。これはバルセロナも獲得を狙っていたからであり、このライバルを退けるためにマドリードが一肌脱いだ形だ。

マドリードは、マルコ・アセンシオ選手やラファエル・ヴァラン選手ら現有戦力の成長も著しい。新戦力とあわせて今後のマドリードを築き上げる存在となっていきそうだ。
監督であるジネディーヌ・ジダン監督がローテーション制を採用していることもあり、若手にも出場機会が与えられる。マドリードの選手達は、リーグだけでなくCLでも猛威を振るうはずだ。

補強禁止もエースの復帰を狙う?アトレティコ・マドリード

アトレティコは、補強禁止の処分を受けており、選手をクラブに登録することができない。従って、この夏は現有戦力の保持することが不可欠だった。

エースのアントワーヌ・グリーズマン選手(以下、敬称略)は、クラブの状況を見かねて移籍を踏みとどまった。候補にあがっていたのは彼のアイドルであるデイヴィッド・ベッカム氏も所属したマンチェスター・ユナイテッドFC(以下、ユナイテッド)だ。
グリーズマンは彼と同様に長袖のユニフォームを愛用し、ユナイテッド伝統の背番号7を受け継ごうとしていた。今夏の移籍はなかったが、今後移籍する可能性はかなり高いだろう。

登録ができないアトレティコではあるが、チェルシーFCでストライキ状態にあるジエゴ・コスタ選手(以下、敬称略)の獲得には動いていた。アトレティコはコスタが才能を開花させたクラブであり、コスタが愛してやまない古巣だ。両者の関係は公然のことだ。
アトレティコは彼を獲得し、登録が可能になる冬まで別のクラブにレンタルに出すつもりだったが、交渉はまとまらなかった。

コスタはまたもや宙ぶらりの状態となり、アトレティコの動向もわからなくなった。グリーズマンの流出に備えなくてはならない状況が今後も続くだろう。

有望株を続々とレンタルで、バレンシアCF

バレンシアCF(以下、バレンシア)は、若手の発掘と育成を得意とするクラブだ。
今夏はジョフレイ・コングドビア選手、ジェイソン・ムリージョ選手、ゴンサロ・グエデス選手ら有望株をレンタルで獲得。いずれもバレンシアでの成長が期待されている。

その一方で、ジョアン・カンセロ選手(以下、敬称略)という超がつくほどの有望株を、買い取りオプション付きのレンタルで放出している。これはいただけない。
バレンシアはレンタルでの獲得が多く、クラブの厳しい財政状況が窺える。そんな時こそ、持ち前の発掘と育成の力でクラブを盛り立てなくてはならないのだが、逸材の放出によって財政を維持しなくてはならない状況にあるのもまた事実だ。

これからもバレンシアの苦境は続くのかもしれない。リーガ・エスパニョーラがより面白くなるためには、この強豪になんとしても頑張ってもらいたいところだ。

スペクタクルな攻撃でタイトルを狙う、セビージャFC

セビージャFC(以下、セビージャ)は、2013-15のEL連覇、当たり前のようにリーグ上位入賞を成し遂げ、強豪としての位置付けが盤石になってきた。

これから狙うべきなのはより一層のタイトル獲得と、バルセロナ、マドリード、アトレティコらスペインの3すくみに割って入ることだろう。
今夏はエベル・バネガ選手やルイス・ムリエル選手を獲得。選手起用の巧みなエドゥアルド・ペリッソ監督の下で、スペクタクルな攻撃を展開することだろう。鮮やかなパス供給と間隙を抜き出る選手達の動きは、対戦相手を混乱に陥れる。

中盤の抑えだったビセンテ・イボーラ選手の放出は痛手となったが、十分に高みを目指せる陣容が整った。セビージャは今大きく羽ばたこうとしている。