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【時代が変わる?】サッカーで注目すべきル新ール事情とは?

2017 10/13 10:05dai06
サッカー
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熱さか正確さか?!ビデオ判定導入の是非

テクノロジーは急成長を遂げ、様々な分野に革新をもたらしている。テクノロジーによって、人の力を借りずとも自動で簡単に行える物事も増えてきた。非常に便利な時代だ。

サッカー界においては、「ビデオ判定」がテクノロジーとして入ってきた。正式には「VAR(ビデオアシスタントレフェリー)」というルールだ。2017-18シーズンからは、ブンデスリーガやセリエAなどで導入されている。

これは名前の通りビデオ映像を使って判定をするというもので、ファウルが疑われるような局面があると、試合を中断しレフェリーが映像を確認する。そしてその映像を参考にPKを与える、あるいは与えないという措置を下すことになる。
この時レフェリーは、手で四角(ビデオ映像の意)を描き、「私は映像を参考にしてこの判定を下す」といった主旨のジェスチャーをするようだ。この一連の過程を経て試合は再開される。

この判定方法が講じられることになった背景には、一部の選手たちの「ダイブ」と呼ばれる違反行為がある。ダイブは相手選手から転倒するほどのタックルやスライディングを受けていない、あるいはまったく触れられていないのにも関わらず転ぶ行為だ。
つまりはファウルを促すための演技で、触れられてもいないのに痛がったり、転げまわったりするような選手もいる。ダイブによって不当にPKを得たり、相手選手は退場を命じられることもある。無論、片方のチームが不当に不利になることがある。

ダイブは違反行為であるため、バレればダイブを行った選手にカードが出されるのだが、如何せんこの判断が難しい。審判は常に動き回り、約20人もの選手の動向を観察しなくてはならない。最も目を向けるべきはボールの保持者だが、ボールの関係のないところでダイブやファウルが起こることがある。
また、ペナルティエリアでは混戦状態になることが多く、ファウルかどうかの判断は非常に困難になる。こういった理由からビデオ判定が導入された。

だが、映像の確認のため試合は一時中断されるため、選手からは「試合のリズムが崩れる」、サポーターからは「興冷めする」といった声が寄せられている。
熱いプレーに水を差してまで正確さが必要なのか。まだまだビデオ判定導入の是非は問われ続けるだろう。

B側が有利?PKのABBAルールはどうなる?

PK戦はカップ戦などで決着がつかない時に行われる。カップ戦の勝敗は選手もサポーターも期待を寄せており、PK戦に駆ける想いも大きくなる。ゴール前に立つキッカーやGKに対して向けられる眼差しは熱く、一瞬たりとも見逃すことのできない時間が続く。まさにハラハラドキドキだ。

これまでこのPK戦は、「ABABルール」といい、AのチームがPKを蹴れば、その後にBが蹴る。そしてまたAが蹴り、Bが蹴るというように、交互に行われていくのが普通だった。
その一方で「ABBAルール」という方式も導入され始めており、その動向に注目が集まっている。これはAのチームが蹴った後にBが蹴り、またBが蹴った後にやっとAが蹴るというものだ。つまりは最初の1回を除いて、1つのチームが連続してPKを蹴ることになる。
2017-18シーズンには、チェルシーFCとアーセナルFCが対戦したコミュニティシールドで試されている。

このルールが導入された背景には、「PK戦は先に蹴るAのチームが有利」というデータが出ているからだ。Aは先に蹴ることができる分、Bにプレッシャーを与えることができ、PK戦自体の勝利率も高くなるという図式がある。

しかし、「ABBAルールも平等ではない」とする見方がある。それは「BのGKが連続して守ることになると、目が慣れ2本目のシュートを止めやすくなる」からだ。
もちろん、後にAのGKも連続して守ることにはなるのだが、PKを先に止められることほど大きなプレッシャーはない。PK戦は必ず成功するものとまでは言い切らないが、止められることができれば万々歳というものだ。相手に与えられるプレッシャーは先にPKを決めるよりも、先にPKを止められることの方が大きいだろう。価値が違うからだ。

ABABルールとABBAルールのどちらを採用すべきかは、答えを出すのが難しい。今しばらくはできる限り試行を重ね、どこまで勝率に開きが出るのかを調査する必要があるだろう。

マタ提案!給与の1%を慈善団体に寄付

ルールとは少し違うのだが、2017年8月に素晴らしいニュースがあった。それは、スペイン代表でマンチェスター・ユナイテッドFCに所属するファン・マヌエル・マタ選手(以下、敬称略)の、「給与の1%を慈善団体に寄付しよう」という提案だ。

1%というとわずかな割合のように思うかもしれないが、マタ自身の年俸は2017年時点で約10億円であるから、その1%ということは約1000万円が寄付されることになる。これだけの金額を寄付するのは、多くの人々にとってとても難しい。

マタはインドのムンバイに訪れた際に貧困を目の当たりにし、実際に慈善団体に寄付をしている。
「小さな動きかもしれないが、シェアしていくことで世界を変えることができるんだ。僕はこの活動を率先していくつもりだけれど、1人にはなりたくない」とコメント。
1人1人が協力することの重要性を説いた。また今後の目標としては、「サッカーという産業そのものから、1%の寄付を求めたい」としている。

近年のサッカー選手は大金を稼ぐようになった。10億円プレーヤーもざらになり、なかには副業や兼業を含めて50億円以上もの金額を稼ぐ選手もいる。
寄付というものは1人1人の心持ちこそが大事だが、やはり彼らほど経済力のある選手が協力することで、支援は活性化するだろう。

幸いなことに、マタの提案以前から個人的に寄付をしている選手、支援が必要な地域に実際に赴きサッカーを教えるような選手もいる。だが、今回のマタの提案を機に、より一層この支援の輪が広がっていくことを願ってやまない。

サッカー界のグローバル化とホームグロウンの考え方

サッカー界では多額の金銭が動き、選手の動きも活発になってきた。国や地域を問わず、選手たちは様々な国のリーグで戦うようになった。
特にこの流れは欧州のクラブで顕著だ。ボスマン判決により、EU圏内のクラブ、国籍の選手たちは自由に行き来するようになった。そのため自国の選手メインでスタメンが構成されないクラブも多い。
資金力の豊富なビッグクラブでは、特にこの流れが顕著だ。資金力を武器に国外から多くの有望な選手を連れてきてスタメンとして起用するため、ピッチを眺めても外国人選手ばかりということがある。

FIFAはこの流れを「自国の選手が育たない」と懸念。「ホームグロウン枠(HG枠)」の重要性を説き、「6+5ルール」というスタメンに自国の選手を6人以上出場させるというルールの導入なども検討してきた。
しかしこの措置は、前述したようなビッグクラブにとっては痛手となる上、就労の自由にも反するといったことなどから反発を買い、根本的な解決には至っていない。

各クラブは自国の選手を獲得することにやぶさかではないのだが、全力を注いでいるとも言い難いのが現状だ。

ワールドカップの出場国数の増加が検討中

ワールドカップの本選に出場する国の数は、2026年大会から32ヵ国から48ヵ国に増える。
これにより、これまでワールドカップに進むことのできなかった、サッカー発展途上国にも本戦出場のチャンスが増えることになる。

48ヵ国になることで試合数が増え、選手に課せられる負担も増えると危惧する声もあるが、決勝トーナメントに進むためのグループステージは3ヵ国16グループに細分化される。これにより1チームあたりの最多試合数は現行の7試合のままになるようだ。

しかし細分化したことで、1試合1試合の重みが増すことになる。3ヵ国の総当たり戦になると、試合がない国も生じるため、連戦する国は不利になる可能性があり、必ずしも強豪が勝ち抜ける可能性が高いとは言えなくなる。

これを平等と見るか不平等と見るかはそれぞれだが、「やはり強豪に勝ち上がってもらいたい」、「大会そのもののレベルが下がりそうだ」とする声があるのも事実だ。