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【2017年時点】サッカー界を取り巻く5つのトレンドに迫る

2017 10/13 10:05dai06
サッカーボール,ゴールネット
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選手の高額移籍は当たり前になった

2010年前後から、選手が移籍する際に高額の移籍金が支払われることが当たり前になってきた。30億、40億、50億と移籍金は山のように積み上げられていき、100億円規模の移籍も当たり前になりつつある。

2009年にマンチェスター・ユナイテッドFC(以下、ユナイテッド)からレアル・マドリードCF(以下、マドリード)に移籍したクリスティアーノ・ロナウド選手(以下、敬称略)には約120億円という値がつけられた。
ただ、その後2013年にはギャレス・ベイル選手(以下、敬称略)にもほぼ同額、もしくはロナウド以上の値がつけられたとされている。

その後も、2016年のポール・ポグバ選手が約130億円でユヴェントスFC(以下、ユヴェントス)からユナイテッドへ移籍。そして2017年にはネイマール選手が約290億円でパリ・サンジェルマンFC(以下、PSG)に移籍するなど、高騰の流れはとどまることを知らない。
なお、この年のPSGはキリアン・ムバッペ選手のレンタル移籍も成功させている。しかもこのレンタルには、約236億円という買い取りオプションまで付いている。

このPSGの一連の動きに対しては、多くのクラブが動揺し、選手の市場価値の底上げを招いた。どのクラブも安売りをしない、もしくはネイマールがFCバルセロナ(以下、バルセロナ)から離脱することによって生じる玉突き的な移籍の行方を追った。
結果としてバルセロナはネイマールの後釜探しに奔走するも、どのクラブも手頃な価格で売ってくれることはなかった。その状況下において、トランスファーリクエスト(移籍志願)まで出したフィリペ・コウチーニョ選手が移籍できなかったのはこの年の悲劇だった。

流動的な市場がバンディエラの誕生を阻む

「バンディエラ」というイタリア語をご存知だろうか。 この言葉は「bandiera」表記し、直訳すると「旗頭」、「旗手」といった意味合いになる。サッカーにおいては、クラブの柱、軸となる選手を指す時に使う。

バンディエラとなるには、いくつかの条件がある。具体的には「選手としてのクオリティが高いこと」、「ピッチ内外での影響力があること」、「カリスマ性や人間としての魅力があること」などが挙げられるだろうか。
だがそれらに加えて、「1つのクラブに長く在籍していること」というのも大前提としてあるだろう。何年在籍していれば良いかというのは、人によって違うとは思うが10年近くは在籍する必要があるだろう。人によってはそれ以上という場合もあるかもしれない。

しかし、こういったバンディエラの存在はどんどんと貴重になってきた。それは前項で紹介したように、頭1つも2つも抜きん出た資金力を持つクラブが増えてきたために、選手の動きが流動的になってきたためだ。
選手は1つのクラブに留まることが難しくなった。若手もベテランも関係ない。フロントや選手に文句を言わせない金額を支払えるクラブへ活躍の場を移す。

資金力の開きとバンディエラの流出が止まらない

「あのクラブがあんなに素晴らしい選手を放出するわけがない」と思っていても、実現してしまう移籍が続発している。これは選手の意思よりもクラブの意思が先行する時もある。経営的に厳しいクラブは、スター選手を売却することによって経営を成り立たせている場合もあるからだ。
資金力の豊富なクラブ、特にプレミアリーグの各クラブとそれ以外のリーグのクラブではその資金力に大きな開きが生じている。これはサッカー界でも大きな問題となっている。

近年のサッカー選手は、クラブで確固たる力と成績を出し続けても、バンディエラとなるための在籍年数が足りない。ただでさえ貴重なバンディエラは、誕生する人数よりも減っていく(引退していく)人数の方が多くなっているのだ。

2017年にはFCバイエルン・ミュンヘンのバンディエラであるフィリップ・ラーム氏、チェルシーFCのフランク・ランパード氏、リヴァプールFCのスティーブン・ジェラード氏、ASローマのフランチェスコ・トッティ氏などが相次いで現役を引退した。
引退時点の所属クラブが自身がバンディエラであったクラブと違う選手もいるが、彼らの引退に際しては多くのクラブのサポーターが別れを惜しんだ。

2017年時点で現役を続行中のバンディエラでいうと、バルセロナのアンドレス・イニエスタ選手、ユヴェントスのジャンルイジ・ブッフォン選手、ユナイテッドのマイケル・キャリック選手、Jリーグでは楢崎正剛選手らが挙げられるだろうか。
彼らはいずれもキャリアの終盤を迎えているが、引退する時はもう少し先であってもらいたいし、引退するならバンディエラとなったクラブであってもらいたい。そう願うサポーターが多いのではないだろうか。

選手の活躍の場はピッチだけではなくなった

当たり前のことだが、サッカー選手はサッカーをして金を稼ぐ。
そして多額の給与を受け取り、その給与で豪華な豪邸を構え、スポーツカーに乗り、悠悠自適な暮らしを送る選手が大勢いる。放映権料の増加による恩恵は選手にまで浸透しており、後に後述するサッカー界のボーダーレス化も、選手たちの懐を潤しているかもしれない。

そんなサッカー選手は、サッカーだけでなく様々な分野で活躍するようになった。知名度や人気の高さを軸に、企業の広告塔になる選手も多い。
また、自身でファッションブランドを立ち上げたり、ミュージシャンになったり、クラブや育成組織の運営に携わったりと、自身のプレーとは直接関係しない分野での仕事が増えている。「副業収入」といったところだろうか。

ロナウドは年間で約100億円の収入を得ているとされるが、4割近い金額がスポンサーからの収入で占められている。彼の場合は単に副業とは言い切れない部分がある。サッカー選手であることと関連したビジネスであり、「兼業」という言葉の方がふさわしいかもしれない。

サッカーの楽しみ方がボーダーレスになった

「サッカーを楽しむ」というと、少し前までは試合を観に行くということや、スポーツ新聞を読むことなどが最もスタンダードな方法だった。
しかし時代は変わり、サッカーはスタジアムでの観戦だけではなく、インターネット通信によってTVやパソコン、スマートフォンでの観戦が可能になった。活字にしても、インターネット上のメディアなどで読むことができるようになった。
しかもこれらには、ハイライト映像や試合データまでもが付随されており、より深く、より自由に楽しむことができる。

もし、サッカーに魅力を感じられない場合でも、小さな楽しみ方から始めることができる。動画投稿サイトを少しだけ覗いてみても良い、サッカー好きの友人とサッカーゲームをしてみるのも良い。もっと原始的な方法を挙げるならば、近所の公園やスポーツ施設でボールを蹴ってみるのも良いだろう。

方法も時間も場所も、誰とどう楽しむかも個人の自由だ。誰でも世界のサッカーの魅力を取り寄せることができる。極めてボーダーレスな時代の幕開けだ。