「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

ダービー・マッチを知ろう イタリア セリエA編

2017 8/25 10:07跳ねる柑橘
milano derby
このエントリーをはてなブックマークに追加

ダービー・マッチ:プライドが激突する特別な一戦

どんなスポーツにも、他と一線を画す特別な試合というものがある。サッカーでは、ライバルクラブ同士の対決やダービー・マッチがその一つといえ、クラブが同じ都市や域内でのNo.1の座を争うものや、強豪同士の直接対決などがある。
毎回ダービー・マッチは、その地域のみならず国中や世界中からも大きな注目を集める。選手同士、サポーター同士の激しい気持ちのぶつかり合いやハードな展開がお約束で、サッカーファンであれば盛り上がること間違いなしの一戦だ。
今回紹介するのはイタリアのトップリーグであるセリエAだ。強固な守備や高い戦術性で知られるセリエAにはどんなダービー・マッチがあるのか、早速見ていこう。

サッカーを愛するカルチョの国イタリア

イタリアは地方ごとの独自性が強く、人々は自身の出身地に対して強い誇りを持つ。それはサポーターも同じで、コアなサポーター集団は毎試合スタジアムに通い、ゴール裏からクラブ首脳陣や選手たちに強烈なメッセージを投げかける。
また、街角のカフェやバルでもサッカーに対する話題で持ち切りで、批判や暴言も少なくない。しかしそれは、ひとえにクラブに強くなってほしいからなのだ。イタリアという国の日常に、カルチョ=サッカーは文化として根付いている。

もう一つイタリアの特徴として、スタジアムのほとんどをクラブではなく市などが所有している。そのため同一都市のクラブの多くは、同じスタジアムをホームスタジアムとしている。今回取り上げるダービーのうち、イタリアダービー以外は同じ都市内のライバルクラブだ。
「このスタジアムは俺たちの家だ」「この街の真のクラブは俺たちだ」そんな威信をかけたダービーは、毎回大きな盛り上がりを見せるのである。

ミラノダービー(ミラン対インテル)

【初対戦1909年 通算218試合 ミラン75勝 ドロー66 インテル77勝】
まずはミラノダービーだ。
大都市ミラノを本拠地とするACミランとインテルナツィオナーレ・ミラノはどちらも世界的に人気を誇り、UEFAチャンピオンズリーグ優勝経験があるビッグクラブだ。そんな2クラブが同じ街にあるとは、なんと贅沢な話だろう。

ホームスタジアムは8万人収容の巨大なスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ(ミランがホームの際はサン・シーロと呼ばれる)。ミラノダービーの際は、北側のゴール裏“クルヴァ・ノルド”にインテルサポーターが、南側の“クルヴァ・スッド”にミランサポーターが集結し、自チームにゲキを、相手に激しいブーイングを浴びせ続ける。世界中が注目する一戦だが、スタジアム内はどこよりも熱くピリピリした空気に包まれる。
強豪同士の対戦とあって、これまでの戦績はほぼ互角。ダービーの最多得点者は、ミランで計8シーズンにわたり活躍した元ウクライナ代表選手アンドリー・シェフチェンコ氏で、インテル相手に14ゴールをあげている。

ローマダービー(ローマ対ラツィオ)

【初対戦1929年 通算184試合 ローマ69勝 ドロー63 ラツィオ52勝】
続いて首都ローマで行われるローマダービーを紹介する。ASローマとSSラツィオはともに熱狂的なサポーターで知られ、ダービーも数々の暴動や差別的表現が何度も問題とされるなど、色々な意味で注目の一戦である。ローマ、ラツィオともミラン、インテル、ユヴェントスの“北のビッグ3”を敵対視することでは共通しているが、それ以上に「首都ローマの真のクラブは我々だ」と、ご近所さんに対するライバル意識の方が強いようだ。

両クラブともスタディオ・オリンピコをホームスタジアムとする。熱狂的なサポーターたちはミラノダービー同様にスタンドの南北にサポーターがわかれ、北にラツィオサポーターが、南側にはローマサポーターが集結する。
過去の戦績はローマが一歩優勢で、ダービーにおける最多得点記録は、2016-17シーズンを最後に引退したローマの王子様、フランチェスコ・トッティ氏だ。トップチームに所属した24年で11ゴールをあげている。

トリノダービー(ユヴェントス対トリノ)

【初対戦1907年 通算236試合 ユヴェントス100勝 ドロー63 トリノ73勝】
イタリアでも最古のダービー・マッチといわれるのが、このトリノダービー。北部の都市トリノに本拠地を構えるユヴェントスとトリノFCの一戦だ。
2006年まではともにスタディオ・デッレ・アルピをホームとしていた。現在、ユヴェントスはイタリア初のクラブが所有するスタジアム“ユヴェントススタジアム”が本拠地。一方のトリノは、市が所有するスタディオ・オリンピコ・ディ・トリノをホームとしている。

ユヴェントスの元会長が、内紛の末にクラブを離れ作ったのがトリノFCであるため、敵対意識は強い。ユヴェントスは欧州でも指折りのビッグクラブとして知られているが、トリノもセリエAを7度優勝した経験を持つ古豪だ。
しかし現在は戦力差があり、近年はトリノがセリエBに降格していたことでダービー開催がなかったことのほか、開催されたダービーでもユヴェントスの勝利が続いている。

イタリアダービー(インテル対ユヴェントス)

【初対戦1909年 通算236試合 ユヴェントス107勝 ドロー56 インテル73勝】
インテルとユヴェントスによる一戦は、イタリアを代表する一戦としてイタリアダービーと呼ばれている。この呼び名がつけられたいきさつは、1967年にさかのぼる。
セリエAでは、スクデット(セリエA優勝のこと)を10回獲得すると、チームはユニフォームのエンブレムの上に“ラ・ステラ”と呼ばれる星のマークを入れることが許されている。1967年当時、このラ・ステラをつけていたのはインテルとユヴェントスだけであった。イタリアを代表する強豪クラブ同士の対戦ということでイタリアダービーとされたのだ。

最多得点者はインテルのレジェンドで、ホームスタジアムの名前の由来となっているジュゼッペ・メアッツァ氏と、ユヴェントスの伝説的選手オマル・シヴォリ氏の12ゴール。戦績はユヴェントスが大きく上回っているが、この一戦ではイタリア最高のチームの威信をかけて両者白熱した戦いを繰り広げる、注目のビッグマッチだ。

灯台ダービー(サンプドリア対ジェノア)

【初対戦1947年 通算96試合 サンプドリア37勝 ドロー35 ジェノア24勝】
最後に紹介するのは灯台ダービー。港町ジェノヴァにあるサンプドリアとジェノアの一戦だ。ジェノヴァの港湾地区にある大灯台“トッレ・デッラ・ランテルナ”にちなんで名づけられた。

両者の初対戦は1947年。ジェノヴァがイタリアでも最古のクラブの一つである一方、サンプドリアは第二次大戦後に生まれた若いクラブである。そのため通算試合数も96試合と少なめ。新旧クラブということもライバル関係を焚きつけている理由の1つだ。
ビッグクラブ同士のダービーに比べ盛り上がりは限定的だが、それでもダービーの日はジェノヴァの町がお祭り騒ぎとなる。
2016-17シーズンのセリエAではサンプドリアが57年ぶりにダブル(リーグ1シーズンで同じチーム相手に2勝)を達成した(セリエBでは2002-03シーズンにダブルを達成)。

”一番”を決める一戦を見逃すな

イタリアはかつて都市国家が多く存在したこともあり、現在でも都市レベルでの帰属意識が強いといわれている。自身が応援するクラブと、同都市内のライバルクラブとの戦いはまさに「この街で一番」を決める特別な試合であり、サポーターの応援にも特に力が入る。
観戦の際には気合の入った選手たちはもちろん、ヒートアップするスタンドにも注目してみてほしい。きっとその激しさに圧倒されることだろう。