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変わりゆく今と未来、ハメス・ロドリゲスの青写真

2017 6/30 12:56dada
ハメス・ロドリゲス
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求めた栄光、掴んだ挑戦、2014年W杯

2014年のW杯は感慨深かった。
思い起こせばこの大会は、開催国ブラジルが惨憺たる結果に終わり、ドイツの圧倒的なまでの強さが世界に示された大会だ。ブラジル代表のネイマール選手は、大会途中に負傷離脱を余儀なくされ、多くのブラジル国民が涙した。そんな状況下でチャンスを掴んだ選手もいた。コロンビア代表のハメス・ロドリゲス選手(以下、敬称略)である。
ハメスは、負傷離脱していたラダメル・ファルカオ選手に代わり同国を牽引。ここぞという場面でいくつものゴールを決め(計6得点)、大会得点王のゴールデンブーツを獲得。
ハメスにはかねてより、レアル・マドリードCF(以下、マドリード)から関心が寄せられていた。また、彼自身が「僕の夢はマドリードでプレーすること」と語ったこと、そしてW杯での活躍が後押しし、遂にマドリードへ移籍が実現した。着用するユニフォームの背番号は10で、メスト・エジル選手以来の10番の誕生にマドリードサポーターは熱狂した。
余談ではあるが、彼はプレースタイルだけでなく甘いマスクも大きな武器だ。「背番号10×甘いマスク」、これほどユニフォームが売れる要因が揃うことも珍しい。
彼のユニフォームは入団決定から48時間以内に約35万枚も売れ、その売上額は約36億円とされている。マドリードは獲得に要した約110億円ともされる金額の約30%を、あっという間に回収した形となった。

世界最高峰!万能型のトップ下、それがハメス・ロドリゲス

ハメスはトップ下の位置でプレーすることが多い選手だ。
味方へ繰り出すパスはどれも正確で、機を見たパスばかり。無駄が一切なく、妥協も一切ない。創造性に溢れるこのパスから、多くの味方選手が美しいゴールを生み出している。
ただ、ハメスも得点感覚に優れている。自分より前のFW選手のシュートが決まらない、あるいはマークがあまりにも執拗でシュートが放てないような状況下では、ハメスが顔を出す。シャドーストライカーとして、いとも簡単に得点を重ねていくことができるのだ。
シュートの威力とコースも素晴らしく、ゴール前へ飛び出すまでのドリブル技術も素晴らしい。スピードよりはタイミングとタッチに秀でたドリブルで、相手DFのマークを外していく。このドリブル技術の高さはシュートとパス双方で役立つ。ハメスはトップ下として非の打ち所がない万能型である。
1つの技術だけに秀でていても、マドリードでは必要とされない。ハメスのマドリードへの移籍は、W杯でのブレイクがきっかけではあるが、実力に裏打ちされたものと考えて良い。

マドリードでの歓迎、始まった新たなキャリア

マドリードの本拠地、エスタディオ・サンティアゴ・ベルナベウでは、約4万5000人ものサポーターが大賑わい。ハメスのために開かれたお披露目会に集まっていた。観客席を見渡せば、マドリードの白いユニフォームだけでなく、コロンビア代表の黄色のユニフォームを着たサポーターの姿も目立つ。
マドリードのコロンビア大使は「ハメスはコロンビアサッカーの歴史を変えた」とコロンビア大統領のメッセージを披露。マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長も、「ハメスは恋人」と話し、これから始まるハメスとマドリードとのキャリアが始まった瞬間となった。
このお披露目会では、ハメスがボールを観客席にボールをプレゼントする場面もあったのだが、サポーターの一部がピッチに乱入し、ハメスに抱き付いてしまった。当然、警備員からものすごい勢いで引き剥がされることになるのだが、ハメスはこのサポーターをかばい、ボールを手渡しでプレゼントしたのだった。

変わりゆく状況、レジェンド監督の誕生は吉か凶か

マドリード加入1年目のハメスは、負傷離脱もあったものの公式戦で17ゴール18アシストを記録。持ち前の万能さを存分に発揮した素晴らしいシーズンとなった。この活躍にはサポーターも満足した様子で、翌シーズンの更なる飛躍が期待された。
ただ、翌2015-16シーズンのマドリードは状況が一変する。同シーズンから指揮をとることとなったラファエル・ベニテス監督は就任から1年を待たずして解任。国王杯での規約違反や、宿敵FCバルセロナとのクラシコでの悲惨な結果が原因だったようだ。
後任にはクラブの偉大なレジェンド、ジネディーヌ・ジダン監督(以下、敬称略)が就任。マドリードのBチームの位置付けであるカスティージャの監督からの昇格だった。
彼が就任してからのマドリードは攻守で安定を取り戻し、リーグを2位でフィニッシュ。CLではウンデシマ(11度目の制覇)を達成。
翌2016-17シーズンでは公式戦40戦無敗という記録を残し、ジダン政権は順調に進行している。 ただ、ハメスが起用される機会はベニテス政権時よりも明らかに激減している。マルコ・アセンシオ選手、ルーカス・バスケス選手、そして一番のライバルであるイスコ選手らとのスタメン争いが激化しているためだ。
次第にジダンとの不仲説や練習時の怠慢、体重の増加、車運転時のスピード違反騒動等の問題が相次ぎ、移籍が取り沙汰されるようになった。
2017-18シーズンはジダンの下でプレーすることはあり得ないのでは?という見方が強まっている。

ハメスの行く末と敏腕代理人の思惑

2017年5月、各国リーグは終盤を迎え相次いでリーグ王者が誕生している。来シーズンのCLやEL出場クラブも決定し始めており、そろそろ夏の移籍市場がどうなるかをサポーターも本格的に見定める時期に入っている。
ハメスは、連日のようにマンチェスター・ユナイテッドFC(以下、ユナイテッド)への移籍が取り沙汰されている。
その背景にはユナイテッドの象徴である、ウェイン・ルーニー選手の衰えと、モウリーニョ監督の繋がりがあるためだ。
モウリーニョ監督とハメスの代理人は、数多の顧客を抱えるジョルジュ・メンデス氏で、両者はこの代理人を介して容易に繋がることができる。
マドリード側は彼の放出を認めない構えだが、ポジションを争うイスコ選手とは契約延長との報道もあり、ハメスの待遇の改善は見込めない状況だ。おそらくユナイテッドが大金を積みさえすれば、ハメスの移籍は決定する可能性が高い。この瞬間にはメンデス氏に莫大な手数料が舞い込むことから、この代理人も彼の値付けに妥協はしないだろう。
ただ、モウリーニョ監督自身はハメスの守備貢献への甘さを嫌っているともされ、ユナイテッドの移籍が実現するかどうか、あるいは実現したとしてもスタメン起用が当たり前になるかはまだわからない。
コロンビア発、世界的なトップ下、ハメス・ロドリゲスの未来に注目が集まる。