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栄光と挫折のロッソネロ、ACミラン変革の日々

2017 5/17 09:55dada
ACmilan
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セリエAの名門、ロッソネロは今……

ACミラン(以下、ミラン)は、セリエAを代表する名門クラブだ。ミランは1899年にミラノ在住のイギリス人らによって創設された。クラブカラーは赤と黒で「ロッソネロ」の愛称で親しまれている。ロッソネロの他には、イタリア語で悪魔を意味する「ディアボロ」などでも呼ばれている。ちなみに「ビアンコネロ」で有名なのは、黒と白のライバルクラブ、ユヴェントスFCだ。
ミランを「ミラノ」というようにイタリア語で呼ばないのは不思議な感じがする。長友選手が所属するインテルは、正式には「インテル・ナツィオナーレミラノ」だからだ。 この背景には前述のイギリス人によって創設されたという歴史が関わっている。その歴史に基づき、英語呼びの「ミラン」がそのまま残ったとされている。
ミランは1990年前後にはセリエAで無類の強さを誇るも、2000年代に入ると安定感を失う。そして2010−11シーズンのタイトル(スクテッド)獲得以降、財政は急激に悪化しクラブは未曽有の不振に陥るようになる。

ベルルスコーニが牛耳ったクラブ

ミランのオーナーは1986年からシルヴィオ・ベルルスコーニ氏になった。彼は実業家と政治家という二つの顔を持ち、後にはイタリアの首相にもなっている。 ミランのオーナーになってからは、多額の資金を投資し有力選手を獲得。クラブの黄金時代を築くのに大いに貢献した。
ただ、ベルルスコーニ氏もすでに80歳を超えている。ミランの財政が急激に悪化したのは、氏のサッカーへの熱意が無くなったとする声や、そもそも「ミランのオーナーになったのは、自分の宣伝のためだった」との声も強まっている。今、再び多額の資金を投じる必要はないというわけだ。
財政が悪化して以降は、フリーでの選手獲得が増えたり、ビッグネームがやってくることが無くなるなど、陣容に面白味が欠けるようになっている。 当然、戦力ダウンとなっているわけだから、CLでの活躍はおろかセリエAで中位よりも少し上あたりの位置を争う程度になってしまった。上位争いはすでに遠い昔のことのような話だ。

ズラタン・イブラヒモヴィッチが在籍していた頃

2010−11シーズンが直近で獲得した唯一のリーグタイトルだ。この頃にはズラタン・イブラヒモヴィッチ選手やロビーニョ選手、マルク・ファン・ボメル選手などそうそうたるメンツが揃っていた。ディフェンス陣にはレジェンドのアレッサンドロ・ネスタ選手やチアゴ・シウバ選手など。
彼らは常に高いクオリティを維持し、タイトルの獲得に貢献していた。しかし、クラブが財政悪化ともなれば、彼らの高額の給与を維持することは難しいだし、売却することによって得られる収益でクラブの財政を立て直さなくてはならない。
2012−13シーズンのミランに彼らの顔はなかった。いずれも他クラブへ放出されてしまった。

いなくなったトサカトリオ

財政悪化後のミランにも希望が失われたわけではなかった。小刻みかつスピードのあるドリブルが持ち味の、ステファン・エル・シャーラウィ選手はその代表格だった。 チームではマリオ・バロッテリ選手やエムベイェ・ニアン選手らとトリオを結成。3人揃ってトサカヘアーがよく目立ち、チームの新たなシンボルとなりつつあった。
しかし、彼らは2016−17シーズン現在、それぞれが別のクラブでプレーしている。ニアン選手はレンタルでの放出となっているが、買い取りオプションが付いており、完全移籍となる可能性もある。 エル・シャーラウィ選手に至ってはライバルクラブであるASローマでスタメンに定着。リーグでは敵となって戦う。
彼らはそれぞれにサッカーに対する、パフォーマンスやモチベーションに問題があり放出されたというのもあるが、やはり節約志向のクラブ方針によって放出されたとする見方も強いだ。ミランの復活の糸口はなかなか見えてこない。

超新星ドンナルンマも放出候補?

近年のミランで最も注目されている逸材がジャンルイージ・ドンナルンマ選手だ。生まれた年はなんと1998年。セリエAへのデビューは16歳8ヶ月の頃だった。 それ以降はクラブの正守護神としてスタメンに定着。 驚異の反応速度で多くのシュートを防ぎ、ミランの失点を抑え続けている。
「ジャンルイージ」と聞くと、ユヴェントスFCやイタリア代表でお馴染みのジャンルイージ・ブッフォン選手を思い出す方も多いだろう。彼は1978年生まれだから、ドンナルンマ選手の倍くらいの年齢になる。サッカー界ではどんどんと新しく若い逸材が現れるが、改めて考えてみるとこの年齢差は驚きだ。
ドンナルンマ選手とブッフォン選手はイタリア代表でもすでに顔を合わせており、ドンナルンマ選手が誕生日の際にはブッフォン選手が「大人の世界を楽しんでくれ」といったコメントを寄せるほど関係は良好なようだ。もう数年すれば、イタリア代表正守護神のバトンタッチもあり得るだろう。

しかし、その前に心配なのがミランからドンナルンマ選手が放出されることだ。彼の代理人はミーノ・ライオラ氏が務めている。ライオラ氏は多くのスター選手のマネジメントを行っているが、クラブには高額の契約金を求めることで有名で、「くせ者」扱いされることもしばしば。彼が絡んでいることにより、ミランに求められるドンナルンマ選手の契約金も跳ね上がることが予想され、いずれはもっと資金に余裕のあるクラブに渡ると噂されている。
ライオラ氏はドンナルンマ選手の価値を「約200億円」と述べている。さすがにそこまでの高騰はあり得ないだろうが、今後20年近くに渡って第一線で活躍できるであろうこの逸材には、多くのビッグクラブが関心を寄せていることだろう。

ミランに足りないものはたった一つ

不調を極めるミランにおいて足りないものはたった一つ。「チームの柱」だ。財政悪化以降は節約に節約を重ねているミランだが、ここ数シーズンは中国の投資グループに買収されるという噂もたっている。2017年現在3月現在も難航はしているものの交渉は続いているようだ。
この売却が現実のものとなれば、クラブの節約経営は終わり、再び多額の資金を投じることができるようになるだろう。その時には数十億円〜百億円近い規模での投資も敢行すべきだ。 金額の大きさが選手の良し悪しを決めるわけでは決してないが、結果を出せる可能性は高いし、チームのシンボルにすることもできる。
チームのシンボルが一人でも増えれば、離れかけているサポーターの心を繋ぎとめることもできるし、買収元である中国やアジアからの新規サポータ—の獲得も狙えるだろう。
長かった不調が終わり、真の名門クラブに舞い戻る時はすぐそこまで近付いている。