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サガン鳥栖、コンセプトを戻し約2か月ぶり勝利 最下位脱出へ必要なものは

2019 5/15 11:00中山亮
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サガン鳥栖が約2か月ぶりの勝利

J1第11節、正式に金明輝(キン・ミョンヒ)監督となったサガン鳥栖はガンバ大阪に3-1で勝利。3月17日の第4節磐田戦以来となる2勝目を挙げ、第5節横浜FM戦以来3試合目となる勝ち点を獲得した。

カレーラス前監督が率いた(不在の第10節も含む)10試合でわずか1得点と深刻な得点力不足に悩んでいたが、前半16分にイサック・クエンカのヘディングシュートで先制すると、豊田、原川も得点を決め、これまでのうっ憤を晴らすかのように得点を量産。

試合終了間際に食野の技ありプレーで1点を許したが、それ以外はG大阪の反撃をしのぎ快勝した。

「鳥栖らしい」サッカー

走行距離はG大阪の105.425kmに対して鳥栖は109.381km。スプリント数はG大阪の144回に対して鳥栖は172回。タックル数は前節までの10試合では20.8回/試合に対してこの試合では25回。ハードワークをベースにしたアグレッシブな戦い方でG大阪にほとんど何もさせない。G大阪戦の鳥栖は従来の「鳥栖らしい」チームになっていた。

それもそのはず。金明輝監督は鳥栖がJ1昇格を決めた2011年に鳥栖で現役を引退すると、その翌年から下部組織のコーチとして指導者をスタート。その後一貫して鳥栖の下部組織やトップチームで指導者としてのキャリアを積んできたからだ。

そして昨季もフィッカデンティ氏が監督を退任したあとを受けトップチームの監督に就任。ハードワークをエースにしたアグレッシブな戦い方でラスト5試合を3勝2分の無敗で乗り切り、チームをJ1残留に導いている。

コンセプトの変化を目指した今季

ロティーナ監督(C大阪)、リージョ監督(前神戸)、リカルド・ロドリゲス監督(徳島)と近年はJリーグに急激にスペイン人監督が増えている。そしてそんな中の1人が今季開幕前に鳥栖の監督に就任したルイス・カレーラス前監督だった。

就任直後は現役時代にバルセロナでプレーしていたことで、パスサッカーやポゼッションサッカーを目指すという形で報じられていたが、実際にカレーラス前監督が取り組もうとしていたのはポジショナルプレー。

リージョ前神戸監督の言葉を借りるとポジショナルプレーとは「コンセプトであり評価基準」である。つまりカレーラス監督は、攻撃的だとか守備的だとかではなく、「ボール支配率を上げる」や「パス数を増やす」という現象でもなく、新たな基準を植え付けることでチームのコンセプトを変化させようとしていたのだ。

しかしこの目論見はわずか10試合で終了した。

チームに新たな基準を植え付けること、コンセプトを変化させることは当然ながらかなりの時間を要する。しかし10試合で1勝1分8敗という成績ではさすがに時間を与えることは難しかった。

カレーラスに同情できる点も

こうしてわずか10試合で鳥栖を去ることになったカレーラスだが、同情すべき点もある。

10試合でわずか1得点という得点力不足に注目が集まりがちだが、16失点もワースト4位と失点数も多かった。

しかし、ジョアン・オマリ、キム・ミンヒョクという昨季レギュラークラスだった2人に加え、左SBの吉田、GKの権田というDFラインの中心選手が何人も抜けるとさすがに影響は大きい。

DFの新加入選手でポジションをつかんだといえるのは原1人しかいなかった。攻撃面では、チャンスメイカーとストライカーはいるがチャンスメイカーにボールを届ける選手がいなかった。

この2つは編成面での問題である。

クラブとして本当に監督がやろうとしていることを理解していたのか、適切なサポートができていたのかという部分には疑問が残る。

金体制となり従来のコンセプトに戻した鳥栖。久々に勝利を挙げたとはいえ第11節終了時点で最下位なのは変わっていない。ここから上昇気流に乗せるには監督だけでなく、クラブとして適切なサポートができるかどうかが重要となるだろう。