「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

静岡ダービーで今季初勝利を挙げた清水 ここからの巻き返しとなるか

2019 4/19 11:00中山亮
サッカー,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

万全の準備から思わぬ低迷

前節までの清水を見て、「こんなはずじゃない」という思いが強かったファンも多いのではないだろうか。

昨季もシーズン中盤までに2度の3連敗があり、決して安定した戦いをしていたわけではない。だが、シーズン終盤のラスト7試合は4勝3分の無敗で終えていた。ヨンソン監督の戦術である奪ったボールを素早く前線に運び、一気にゴールを奪うダイレクトプレーが徹底され、終わってみれば川崎Fに次ぐリーグ2位の56得点を記録した。

そして今季の開幕前、昨季の布陣をベースに守備的MFのヘナト・アウグスト、CBのヴァンデルソンをブラジルの名門クラブから獲得。前線には昨季シーズン中に加入し、14試合で11得点のFWドウグラスがすでにいることを踏まえると、中央の布陣は万全である。そこに、川崎Fからリーグナンバーワンの右サイド、エウシーニョが加入し、前線には日本代表の北川もいることを考えると、陣容としてはかなり評価が高かったはずだ。

しかし、いざフタを開けてみると、ドウグラスの病気というアクシデントに加え、ヴァンデルソンが日本のサッカーにフィットできず、第6節終了時点で0勝2分4敗。リーグ唯一の未勝利で、最下位に沈んだ。6試合で8得点と毎試合得点は奪えていたのだが、失点も毎試合重ねリーグワーストの16失点。1試合平均2.7失点ともなると、勝つことは難しい。

スタッツでもこの状況を象徴するような数字が出ており、被シュート数は1試合平均16.33本でリーグワースト2位。さらにシュートあたりの失点率、被決定率も18.4%とかなり厳しい結果となっていたのだ。

チーム不振の原因は守備的MF

厳しい結果となっていた原因は、相手に簡単にボールを前線に運ばれていたことだろう。

昨季の終盤は、ドウグラスと北川の2トップに金子と石毛の両SHが前線から激しくプレッシングをかけることで、相手の攻撃を制限していた。さらにそこで奪うことができれば、ショートカウンターを繰り出すことができるため、この形がチームに好循環を生み出していたのだ。

ところが、今季はこの前線からのプレッシングがうまくはまらず、簡単に1列目の守備をかわされ、ゴール前にボールを運ばれる場面が多々見受けられる。特にシーズン序盤の3バック時には、前線の3人、北川、金子、中村の1トップ2シャドウが相手のビルドアップにうまくアプローチをかけられていなかった。

第3節以降は昨季の4-4-2に戻し、さらに第5節からは北川と鄭大世の2トップとなったことで、徐々に前線からの守備は安定するようになったが、それでも第5節の湘南戦では、守備的MF2人の間を松田に抜かれ、自陣深くに切り込まれる場面があった。

また、第6節のFC東京戦でも、同点に追いつかれてからは中央から攻め込まれる場面が多かった。ディエゴ・オリヴェイラに決められた逆転ゴールはまさに守備的MFの間を縦パスで通されたところからだった。

静岡ダービーでは問題点が改善されていたが

そんな状況で迎えた静岡ダービーだったが、この試合の清水は今季の問題点が大きく改善されていた。

まず、北川と鄭大世の2トップ、そして金子と中村の両SHによる前線からの守備は機能し、磐田のビルドアップを苦しめた。前線で中村がボールを奪い、北川が決めたこの試合の2点目は、磐田・山田のミスパスとも言えるが、その象徴的なシーンだっただろう。

これ以外にも相手の大久保と山田がボールを欲しがり下がってしまう場面が目立ったのは、2トップと両SHの守備によるものだったといえる。この2人を低い位置に下げることができれば磐田の攻撃力も半減する。さらに磐田の1トップ、アダイウトンに対する清水の守備的MF、CBの対応もすばらしく、簡単に間を通させなかった。

また、清水の1点目となる鄭大世のゴールはGK六反のキックから始まったのだが、ゴールネットを揺らすまで地面にボールがついたのはわずか1度。これも状態がよかった時の清水が行っていた、一気にゴールを目指すダイレクトプレーそのものである。

このように、静岡ダービーで清水はこれまでの問題点を改善できていたのだ。

だが、それも途中までだった。磐田がロドリゲス、エレン、荒木と立て続けに投入したラスト30分は磐田がペースを握り返した。2点のビハインドで前がかりになったこともあるが、磐田は簡単に前線までボールを運ぶことができるようになり、71分にはロドリゲスの得点で1点差に詰め寄った。清水は六平を投入することで、守備的MFを3人にし何とか逃げ切ったが、開幕からの連続失点は続き、さらにあわやの場面も作られている。

先制点を決めて叫んだ鄭大世、試合終了後に泣き崩れた立田。清水が静岡ダービーにかける想い、未勝利から脱出したいという強い意気込みははっきりと感じられ、実際に試合内容も改善していた。

しかしその中で、終盤に不安定な姿を見せたのも事実。昨季終盤のように勝ち点を積み上げることができるチームになれるかは、90分を通して安定した戦い方ができるかどうかにかかっている。