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名古屋が4発で快勝 攻撃力の裏には前線からの守備徹底

2019 4/2 11:00中山亮
サッカーボールⒸSPAIA
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札幌を圧倒

代表ウィークによる中断期間を経て、2週間ぶりに行われたJ1リーグ。好調の名古屋グランパスが、本拠地豊田スタジアムに北海道コンサドーレ札幌を迎えての一戦は4-0で快勝。首位に浮上した。

快勝の立役者は、今季リーグ戦初先発となった長谷川アーリアジャスールだった。起用されたポジションは、昨季最もプレー機会が多かったセントラルMFでも、本来のポジションである攻撃的MFでも無く、ジョーと並ぶ2トップの一角。中盤以降は前節と同じメンバーを起用し、今季初黒星となったFC東京戦から長谷川のみが入れ替わった形だ。

長谷川起用の効果は、前半の立ち上がりから直ぐに見られた。札幌のDFラインに対して、ジョーと長谷川の2トップを中心に、高い位置からプレッシングをかける名古屋。札幌の3バックに対しては、この2トップに加えてSHのガブリエル・シャビエルも参加。守備的MFの1人を下げて4バック化する動きに対しては、さらにもう1人のSHである和泉まで加え、とにかく前線からのアプローチを徹底してきた。

札幌の監督ペトロヴィッチの戦術に対して、前線からのアプローチを徹底するというのは代表的な対策の1つ。尹晶煥がC大阪や鳥栖でもこの手法を用い、ペトロヴィッチ監督率いるチームに勝ち越している。

しかし、リスクもある。それは、前線に人数をかけるぶん後方は手薄になり、札幌の攻撃を加速させてしまうということだ。

「相手がボールを奪いに来た時にできるスペース」を使う動きを徹底しているペトロヴィッチ監督の戦術。守備でスイッチを入れる動きが、札幌の攻撃スイッチを同時に入れることにもつながる。その結果、お互いが攻め合う激しい試合展開になっていくことが多い。

このプランを90分間完遂するには守備陣がハードワークし、1対1のデュエルで勝つことはもちろん、デュエルの回数自体を減らすことが必要。そのためには、マイボール時に前線で時間を作ることと、試合を早く決着させることが重要になってくる。

今試合で、この2つに成功した名古屋。前線で時間を作ったのは、守備でも奮闘していた長谷川だった。ジョーよりも少し低い位置で確実にボールを収め、他の選手が上がってくる時間を作り、前半で3得点、50分に4得点目を奪い試合を決めた。

躍進を支える前線からの守備

前線からの守備がポイントとなり快勝、首位浮上となった名古屋。この試合にかかわらず、今季名古屋躍進の鍵となっているのは、前線から守備ができるようになったということだろう。

実際にアタッキングサードでのタックル数は昨季の1.8回/試合に比べ、今季は開幕から3回・4回・6回・5回、そして今節の8回で5.3回/試合と増加。相手ボール時に弱かった昨季は簡単にボールを運ばれ、リーグワーストの59失点となった。

ところが、リーグ2位タイとなるわずか3失点の今季。リーグワーストだった被シュート数も、昨季の12.6本/試合からリーグで2番目に少ない9.0本/試合(第4節まで)と、大幅に改善。高位置から守備することで相手の前進を食い止めることができ、シュートまで持ち込ませない。

川崎Fは、風間監督が積み上げた攻撃のエッセンスに鬼木監督が守備組織を持ち込み、圧倒的な攻撃力と高位置からの守備を武器にリーグ2連覇を達成した。名古屋がこのまま勝ち点を積み重ねていく可能性は十分ある。