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FC東京、最速最短の攻撃で開幕4戦負けなし 進化した速さのカギは久保建英にあり

2019 3/29 15:00中山亮
サッカーボール,ⒸSPAIA
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最速で最短でまっすぐにゴールに迫る

川崎Fがボールを保持するポゼッションサッカーでリーグ連覇を達成する中、多摩川を挟んだ東京都をホームタウンとするFC東京は全く異なるスタイルで、悲願のリーグ初タイトルをつかもうとチャレンジしている。

FC東京のサッカーの特徴がよく表れているのは、パスに関するスタッツだ。1試合平均パス数は382.5本でリーグ15位。最多パス数を記録する神戸の704.8本の54.2%とおよそ半分で、リーグ平均494.7本と比較しても100本以上少ない。

382.5本中、前方パスが157.0本で全体の41.0%とリーグ2番目の高さ。リーグ平均34.5%よりも7ポイント近く上回っている。この高い前方パス比率から考えると、中盤の選手もこの水準でパスを出しているということになる。

通常プレッシャーがかかりにくい前方パスは、前に低いポジションの味方選手が多い方が出しやすい為、GKやDFの選手の比率が高くなり、MF、FWと順に比率が低くなる。

しかしFC東京の場合、これまでMFでプレーした6人(久保、橋本、高萩、東、大森、ナ・サンホ)の合計パス数691本に対して前方パス数は274本と、合計パス数の39.7%を占めている。この割合は、チームの1試合平均前方パスの41.0%とほとんど変わらない。

つまり、左右へのパスを中盤で使いボール保持を安定させるという手順を飛ばし、奪ったボールを前方縦に真っすぐ送り、最速最短でゴールに迫るのだ。

大きな成長を見せる橋本拳人

縦に速いプレーが得意なFC東京で、今季大きな成長を見せているのが昨季ポジションを掴んだ橋本拳人だ。

昨季までは中盤のバランサーだった橋本。主な役割は、ピッチの中央で攻撃スピードを加速させ、前方パスを送る高萩の隣でバランスを取ることだった。成功率が低い前方パスをカバーしていた。

しかし今季は高萩と並び、前方パスの起点としてプレー。ここ4試合の前方パス数は高萩の70本を超える71本を記録し、前方パス比率はチーム平均を上回る42.8%にも達している。プレーエリアでも、開幕の川崎F戦ことミドルサードでのプレーが76.6%、アタッキングサードはわずか6.3%と、まさにバランサーらしい数字となっていた。

さらに、アタッキングサードでのプレーが2節には26%、3節には21.8%、4節には16.2%と上昇。ディフェンシブサードでのプレー比率も15.0%〜32.4%とキープしており、まさに自陣ペナルティエリアから敵陣ペナルティエリアまでをカバーできる「ボックストゥボックス」の選手へと成長。日本代表に選出されたのもうなずけるプレーを見せている。

タメを作る久保建英

今季のFC東京を見る上で外せないのが横浜FMへの期限付きから復帰し、右SHのレギュラーポジションを獲得している久保建英だ。久保の前方パス比率は45.3%と、今季MFで先発出場している4選手(久保、橋本、高萩、東)の中で最も高く速さを体現している選手の1人といえる。しかし、久保が担っている役割はそれだけではない。

他の3選手よりパス数が少ないということは、パスにかけるプレー時間も他の3人に比べて少ないということになる。その理由は別のプレーを行っているからで、チーム最多13回のドリブルを行っている久保。このドリブルがFC東京の攻撃の中で大きなアクセントとなっている。

永井、ディエゴ・オリヴェイラ、今季鳥栖から加入した田川と、爆発的スピードを持っているFC東京のFW。高い前方パス比率は、このスピードを活かすためでもあるのだが、前方パスだけで攻撃を組み立ててしまうと、単調な攻撃になり90分間で相手もそのスピードに慣れてしまう。

当然、ドリブルはパスよりもスピードが遅い。しかし、あえて久保が右サイドでドリブルすることで、タメと時間ができ変化が生まれる。そこから加速すると、対戦相手はさらに速さを感じる。

昨季のシーズン前半戦では快進撃を見せながら、後半戦で失速してしまったFC東京。昨季よりもスケジュール的に余裕があることを考えると、橋本や久保という新たな中心選手が誕生した今季は悲願のリーグ初タイトルに手が届くかもしれない。