「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

スペイン人指揮官対決は期待以上の内容に J1開幕第1戦C大阪対神戸

2019 2/25 15:37中山亮
サッカーボール,イメージ画像,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

「期待はずれ」か「期待以上」か

ホームチームが1-0で勝利した、2019年明治安田生命J1リーグオープニングマッチ。セレッソ大阪対ヴィッセル神戸の一戦は「期待はずれ」とも取れる試合だった。

一昨季のルーカス・ポドルスキ、昨季のアンドレス・イニエスタ。そして今季はダビド・ビジャ。これだけの選手がJリーグの同じチームでプレーすることはこれまでのJリーグの歴史では無かったことだ。

その3人が初めて公式戦顔をそろえることとなったこの試合。期待が集まらないはずがない。しかし結果的に神戸は彼ら3人だけでなくチームとして無得点で敗戦。「期待はずれ」と捉えた人も多いだろう。

しかし彼ら3人を擁する神戸が無得点での敗戦に終わったのは、彼らのコンディションに問題を抱えていたからでも、チームとしてのまとまりを欠いていたからでも無い。

スペインで数々のチームを率い、その見識からグアルディオラ監督が師匠と仰ぐファン・マヌエル・リージョ監督が率いる神戸はチームとしての戦術的クオリティは高く、コレクティブにまとまっていた。

そして今季からC大阪を率いるロティーナ監督もスペインで長年に渡ってチームを率いていた人物である。そのロティーナ監督が神戸を下すために戦術的にも組織的にも完成度の高いチームを作り上げてきた。

そんな両チームがぶつかりあった試合である。「期待はずれ」と捉えてしまうのは少しもったいない。

キックオフ前から行われていた駆け引き

C大阪の布陣は3-4-2-1。東京V時代にも使っていた布陣ではあるが、プレシーズンではほとんどの試合で4バックだったこともあり、この試合で3バックを使ってくることを予想した人は少なかっただろう。

神戸の布陣は4-3-3(4-3-1-2)。これは十分予想できた布陣ではある。驚いたのはこの試合での配置。4-3-3の前線中央に入ったのはイニエスタ。両サイドのビジャとポドルスキはサイドで高い位置に張り出し中央に入るイニエスタは中盤に降りてくるという、ちょうどビジャがプレーしていた時のバルセロナがよくつかっていた偽9番の形。キックオフの前から両チームの監督による戦術的駆け引きが行われていたのだ。

この試合、ボール保持率でC大阪の38%に対し神戸が62%と大きく上回った。神戸はもちろん、今季のC大阪もポゼッション重視のチームとなっているが、最初の駆け引きでは神戸が上回った。

C大阪は、選手の質的に考えて神戸にボールを握られるかも知れないという考えはあったはずだ。しかし神戸は積極的にボールを奪い返す守備はしない。ある程度はボールを握る時間が作れるという計算だったのか。

しかし神戸の4-3-3の偽9番という布陣によりボール保持率に大きな差がついた。

神戸の戦い方に対応してみせたC大阪

神戸の取ってきた4-3-3の偽9番という形は、神戸が中盤でボールを保持している時間のほとんどでC大阪の3CBは対面に誰もいないという状況を作る。

これは一見C大阪にとって楽な状況に思えるが実は罠。神戸はボールを保持しながら、3CBの誰かが不用意にボールを奪いに来るタイミングや、DFラインが乱れるタイミングを虎視眈々と狙っているのだ。

そのために配置されているのが、ビジャとポドルスキの両WG。右利きのビジャが左サイド、左利きのポドルスキが右サイドに配置されているのは、そこから中に入ってシュートを狙えるからである。

しかしこの試合ではC大阪の3CBは不用意にボールを奪いに行くこともなくラインを維持し、最後まで守るべきポジションを守り続けた。ボール保持では後手を取ることとなったが、それを受け入れた上でやるべきことを最後まで全うした。

神戸はこの状況を打破しようと、C大阪の3CBを動かすために守備的MFの三原に代えCFに古橋を投入するが、結果的にはこれが裏目。神戸が守備的MFを減らしたことでC大阪はカウンターを繰り出せる様になり、最後はCKから山下が決めC大阪が決勝点を奪った。

ロティーナ監督、リージョ監督は共にスペインのリーガ・エスパニョーラで何年にも渡ってチームを率いてきた監督である。

スペインで監督をするということは、世界トップレベルのチームであるレアル・マドリードやバルセロナなどと日常的に対戦するということ。巨大な相手からどうやって勝ち点を奪うのかという難題と常に対峙し続けてきた。

そんな厳しい環境で鍛え上げられた両監督の駆け引き、戦術的ぶつかり合いを見られた開幕カードは、期待以上の試合だった。