フォーメーションを見る
いよいよ2019年のJリーグも開幕間近。週末にリーグ戦が行われる日常が戻ってくる。選手のスーパープレーに酔うも良し、結果に一喜一憂するも良しとサッカー観戦の楽しみ方は十人十色。本記事では開幕を前に、少しマニアックな、戦術からサッカーを楽しむこととその際のポイントを解説する。
サッカーで各チームの戦術を考える際に、まず把握すべきなのが選手の配置を表すフォーメーションだ。
試合中は状況に応じてピッチの中を移動するので、選手の位置は刻々と変化していくのだが、選手同士がスムーズな連係を取るために、基本の立ち位置となるフォーメーションが決まっていることがほとんどだ。
このフォーメーションには様々なパターンがあるが、ジャンケンのようなはっきりとした優劣は無く、現代のサッカーではフォーメーションがそのまま戦術を表しているわけでも無い。
しかし、フィールドプレイヤー10人の中でDF、MF、FWをどのように配置するかといった点では必ず戦術的理由がある。戦い方の意図を読み解く上で、欠かせない情報となるのがフォーメーションなのだ。
試合中のフォーメーションは1つではない
フォーメーションを見る上で注意しなければならないのは、フォーメーションは決して1つではないということだ。これは試合ごとに3バックや4バックを使い分けるという意味や、試合が進む中で例えば前半は4バック、後半は3バックという形で変えるという意味だけではない。
近年は状況ごとにさらに細分化され、ボールを持っている局面、持っていない局面でフォーメーションを変化させる「可変フォーメーション」を取るチームが増えているのだ。
ボールを使ってゴールを奪い合うスポーツであればサッカーに限らず何でもそうだが、守備は狭く、攻撃は広くというのが基本である。
その相反する動きを成立させるためにボールを持っている局面、持っていない局面でフォーメーションを変化させるという戦い方が広がっている。
フォーメーションを見るためにはこの2つの状況を踏まえ、相手がボールを持っていて相手DFが低い位置でボールを持っている時、自チームがボールを持っていて自チームのDFが低い位置でボールを持っている時の両方をチェックするとわかりやすいだろう。
第3、第4の局面、切り替え
サッカーにはボールを持っている時、持っていない時の間に存在する重要な場面がある。その重要な場面とはボールを奪われた瞬間、ボールを奪い返した瞬間のトランジション(英語で推移、変遷という意味)と呼ばれる攻守の切り替えのタイミングだ。
これもサッカーに限らないが、ボールを奪われた瞬間に起こる攻撃から守備への切り替えの場面が最も窮地に陥りやすく、ボールを奪い返した瞬間に起こる守備から攻撃への切り替えの場面が最もチャンスを生みやすい。
ここで注目すべきは、ボールの保持、非保持でフォーメーションを変えるチームなのかどうかという点だ。
ボール保持、非保持でフォーメーションを変えないチームは、ボールを奪われても同じ形のまま守備をすることができる。つまり攻守の切り替えの時間を速くすることは比較的容易だ。しかしボール保持、非保持でフォーメーションを変えるチームはこの切り替えの瞬間に選手の移動が必要となる。つまり移動するための時間が必要となる。
この攻守の切り替え時に必要となる時間をどのように作っているのか、その中でどのようなフォーメーション(配置)にしてこの時間をできるだけ短くしようとしているのかが注目すべきポイントとなる。
そしてこの攻守の切り替えで注目すべき点は、配置はもちろんだがその回数。
例えばボール保持、非保持でフォーメーションを変えるチームの場合はボール保持の時間を長くすることで攻守の切り替えの回数自体を少なくしようとする傾向がある。例えばバックパスを使うことで攻撃をやり直すことや、相手を動かす横パスを多用する。ボール保持の時間が長いチームは成功する可能性が高い左右へのパスやバックパスの本数が増える。
一方ボール保持、非保持でフォーメーションを変えないチームの場合は攻守の切り替えの回数自体を増やそうとする傾向がある。このやり方の場合は相手にボールを奪われることはそれほどリスクだとは捉えていない。成功する可能性が高いか低いかよりも、重要視しているのは相手陣内に攻め込む回数。パス数合計における縦パス数の比率が高くなるのだ。
これらは戦術的部分のほんのきっかけに過ぎないが、チームの戦い方や特徴がわかることで新たな試合を楽しむためのポイントとなるだろう。