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ゼロックススーパーカップから見えた川崎F、浦和の今季の展望

2019 2/18 15:05中山亮
サッカー,ⒸShutterstock
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川崎Fの最大のストロングポイントは攻→守

Jリーグ開幕の前週に開催されるゼロックススーパーカップ。2018年Jリーグチャンピオン川崎フロンターレと第98回天皇杯チャンピオン浦和レッズが対戦した今季のゼロックススーパーカップは川崎フロンターレが勝利。Jリーグ史上11クラブ目のスーパーカップウィナーとなった。この試合から今季の両チームの戦い方を展望する。

昨季はリーグ戦で逆転優勝を果たした川崎F。どうしてもパスワークに注目が集まるが、中盤以降の快進撃の原動力となったのは、攻撃から守備への切り替えだった。そしてゼロックススーパーカップでは、攻撃から守備への切り替えが昨季以上にスピードアップし、強度も高まっていた。

ボールを失ったとしても、1トップに入った注目のレアンドロ・ダミアンも献身的な守備を見せた。中央からサイドに押し出すことを何度も繰り返し、浦和の3バックの右に入る岩波と右WBの橋岡の所でボールを奪ってみせた。 試合の立ち上がりから、川崎Fがボールを保持する形となっていたが、その傾向をより高めていったのは川崎Fの攻撃から守備への切り替え。作ったチャンスのほとんどがこの切り替えから生まれていた。

躍動したレアンドロ・ダミアンとマギーニョ

この試合で触れないわけにはいかないのが、決勝点を奪ったレアンドロ・ダミアンだ。ポストプレーで組み立てに参加し、ダイナミックにフィニッシュの場面に関わってくる活躍を見せた。ロンドンオリンピック得点王の肩書きが伊達ではないことをたった1試合で証明した形となった。

中でも可能性を感じさせたのは、188cmの高さを活かしたプレーだった。昨季までの川崎Fは前線に高さがなく、流動的な動きだしとパスワークによる崩しで攻撃を作っていたため、中央を固めて、スペースを消す守備を行うチームには苦戦する傾向があった。しかし、足下のスペースは消すことができても、高い空中戦でのスペースを消すことは不可能。決勝点となった場面でもレアンドロ・ダミアン自身がヘディングで落としたところから始まっていた。

そしてもう1人。こちらは予想以上ともいえる活躍を見せたのが右SBにはいったマギーニョだ。今季の川崎Fに不安点があるとすれば、昨季までチームを支えた右SBのエウシーニョが退団したこと。DFでありながら中盤、前線でも高いクオリティを発揮してきたエウシーニョは大きな存在だった。

しかし、この試合でその右SBに入ったマギーニョは、昨季までのエウシーニョに負けないプレーを披露。抜群のスピードとエウシーニョ以上の突破力で右サイドを何度も切り裂いた。このプレーを継続できれば、エウシーニョの穴はカバーできるのではないだろうか。

崩される場面がほとんどなかった浦和

一方の浦和にとっては、川崎Fにボールを支配され続け、シュートまで持ち込む場面もごくわずかとかなり厳しい試合となった。 しかし、全く良いところがなかったわけではない。浦和はこの試合で5-3-2の布陣を取り、川崎Fの守備的MFのラインから2トップが守備を行う様な形を取っており、この守備はまずまず機能していた。

川崎Fに一方的にボールを持たれる展開となったが、その要因はボールを奪い返した後のプレーだった。川崎Fの攻撃から守備への切り替えの速さと岩波、橋岡のプレッシングにうまく対応できず、何度もボールを奪い返された。ただ、守備全体ではよく守れていた。実際、前半の川崎Fはボールを保持する時間は長かったが、チャンスの場面をほとんど作れていなかった。

前半途中からは、最終ラインの岩波から前線でスペースに走る杉本へ直接長いパスを入れることで、川崎Fのプレッシングを徐々に回避していった。期待の興梠と杉本の2トップには、前半チャンスらしいチャンスはなかったが、オリヴェイラ監督もシーズン中であればハーフタイムでの交代はなかったと語っている様に、前半の終わりに見え始めていた形を後半も継続していればチャンスはあっただろう。

そして、後半開始直後の失点シーンは、2トップや中盤からの守備が定まり切らず、守備のブロックがズルズルと下がってしまったことが原因だった。その後、ここまで下がってしまうことはなかったので、このあたりにも選手交代の影響が感じられた。

チャンスすらほとんどない展開となってしまったため、前線の良し悪しをはかることはできなかったが、興梠、杉本の2トップは他チームの驚異となることは間違いない。シーズンが始まれば、川崎Fに劣らず、浦和も強力なチームとなっている可能性が高い。