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川崎Fを軸に鹿島、浦和が絡む優勝争い【J1展望】

2019 2/20 12:00田村崇仁
川崎フロンターレ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

22日のセレッソ大阪‐神戸戦で開幕

2019年のJリーグはJ1開幕戦となる22日のC大阪‐神戸を皮切りに各地でスタートする。優勝争いは盤石の戦力で3連覇を狙う川崎Fを軸に、昨季悲願のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)優勝を果たした鹿島、天皇杯全日本選手権を制した浦和が絡む展開になりそうだ。元スペイン代表の点取り屋、ダビド・ビジャらを大型補強し、世界屈指のMFイニエスタら国内外のタレントがそろう神戸も勢いに乗れば初の頂点を狙える底力は十分にある。

最多得点、最少失点だった川崎F

昨季の川崎Fは2位の広島に勝ち点12差をつけての独走と、強さが際立っていた。34試合、21勝6分7敗で57得点はリーグ最多、27失点はリーグ最少。1試合平均得点は1.68、1試合平均失点は0.79でいずれもトップと、攻守の安定感が圧倒的な強さでの2連覇につながった。

得失点表,SPAIA

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シュート数の453本もリーグ最多だった一方、被シュート数は235本でリーグ最少。軽快なパス回しで相手を崩す自慢の攻撃スタイルが確立されており、高い位置でボールを奪ってシュート自体を簡単に打たせない意思統一された守備力の高さも川崎Fの強さとして数字が証明している。

シュート数表,ⒸSPAIA

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過去3シーズンの年間最優秀選手に輝いた中心選手の中村憲剛、小林悠、家長昭博は健在。J1で2007~09年の鹿島以来となる史上2度目の3連覇を目指す今季は元ブラジル代表で12年ロンドン五輪得点王に輝いた188センチの長身FWレアンドロダミアンを補強し、攻撃陣に新たなアクセントを加えそうだ。ACLと天皇杯、YBCルヴァン・カップを含めた全4冠を目標に掲げる。

鹿島は節目の20冠を達成、狙うは全冠制覇

ACL制覇で節目のクラブ通算20冠を達成した鹿島は昨季リーグ戦は3位。国内タイトルは過去2シーズン獲得していない。通算50得点、39失点はともにリーグ6位だったが、無失点試合数15は川崎Fと並んでリーグトップと手堅い試合運びは健在だ。3季ぶりの王座奪還へJ1優勝を含めた全冠制覇の目標達成には、引退した小笠原満男らの穴をどれだけ埋められるかが鍵になる。

今季から新主将は内田篤人が引き継ぎ、常勝軍団の歴史と伝統を継承。10番を背負う昨季のベストヤングプレーヤー賞に輝いたFW安部裕葵も創造性あふれるプレーで期待の存在だ。ワールドカップ(W杯)ロシア大会出場のDF昌子源がトゥールーズ(フランス)、昨季ベストイレブンのDF西大伍も神戸へ移籍し、懸念材料があるとすれば最終ラインになる。

浦和は2冠へ補強、大物外国人トリオに注目の神戸

昨季5位の浦和は積極的な補強でC大阪から187センチのFW杉本健勇らを獲得し、戦力に厚みが増した。リーグ、ACLとの2冠を目指す。興梠慎三、武藤雄樹に、高さのある杉本が加わった攻撃陣には昨季以上の得点が見込めそうだ。

中盤にも柏木陽介ら経験豊富な実力者がそろい、新進気鋭の山中亮輔が加入したサイドバック、屈強な鈴木大輔が入ったDF陣もレベルが高い陣容となった。攻守のバランスがかみ合えば06年以来の優勝が見えてくる。

鳴り物入りで神戸に昨季途中から加入し、J1で初の開幕を迎えるスペインの英雄イニエスタは今季も主役になりそうだ。オフには同国の元代表FWビジャが加入し、元ドイツ代表のポドルスキと大物外国人トリオでの連係プレーが注目される。

W杯2大会連続出場のMF山口蛍らも加入し、豪華アタッカー陣を後方からサポートできれば厚みが増す。昨季10位から巻き返し、目標のACL出場権獲得、悲願のJ1制覇へ目が離せない存在だ。

伏兵は札幌とFC東京

ダークホース的な存在は札幌とFC東京か。攻撃面で見ると、札幌はトップ3を見据える陣容だ。昨季はペトロヴィッチ監督による攻撃サッカーが機能し、クラブ史上最高成績となる4位に躍進。昨季のシュート数でも川崎Fに次いで2位と積極性が目を引いた。

効果的に補強した今季はブラジル出身で新加入のルーカス・フェルナンデス、長崎から移籍したFW鈴木武蔵に得点力が期待でき、昨季リーグのベストイレブンに輝いたタイ出身のチャナティップの存在感も増しそうだ。

FC東京は就任2シーズン目の長谷川健太監督のもと、激しいプレスと速攻のスタイルで上位をうかがう。昨季は夏場まで2位と好位置につけたが、そこから失速して6位。リーグ2位タイの34失点と堅守を誇ったが、得点は39で13位と伸び悩んだ。総得点数を55に引き上げることを目標に設定し、決定力不足の打開へエースFWのディエゴ・オリベイラをサポートできる態勢を目指す。

巻き返し図る広島、C大阪、G大阪

昨季2位の広島は、終盤に大失速して優勝を逃した雪辱を期す。昨季リーグ20得点のパトリックに頼りがちだった攻撃の幅を広げ、ボールを保持するスタイルからもう一段進化させられるか。ACLも控えており、選手層の厚さも課題となる。

開幕戦に登場する昨季7位のC大阪はロティーナ新監督を迎えて巻き返しを期すが、ユース出身の生え抜きで日本代表経験者の山口、杉本ら主力が移籍した影響がどう出るか。得点力不足解消には元日本代表の柿谷曜一朗、故障の多い清武弘嗣がシーズンを通して活躍することが不可欠である。札幌から新加入した昨季12得点のFW都倉賢にも期待がかかる。

昨季9位のG大阪は宮本恒靖監督の下、縦に速い新機軸の攻撃サッカーで覇権奪回を目指す。実績十分の遠藤保仁、今野泰幸らベテラン勢と若手の融合が躍進の鍵となる。

横浜FMは中沢の穴埋めカギ

昨季リーグ2位タイの56得点だった横浜FMと清水は、いずれも12位、8位と順位は伸び悩んだ。横浜FMはボール支配率を追求するスタイルを継続し、浦和から元日本代表FW李忠成を獲得。王座奪還へ元日本代表のDF中沢佑二が引退した守備力の安定が鍵を握る。

トップ5を目標とする清水は川崎で2連覇を経験したDFエウシーニョが加入し、DFバンデルソン、MFヘナト・アウグストのブラジル人トリオへの期待は高い。

走行距離表,ⒸSPAIA

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ルヴァン杯を制した湘南は「アクセラレーション(加速)」を今季のスローガンに掲げ、リーグ13位からの巻き返しを期す。昨季のチーム平均走行距離は116.0kmで堂々のリーグトップ。「走り切るスタイル」で上位をうかがう。

復活を期す磐田、名古屋、鳥栖

かつて黄金時代を築いた磐田は多くの故障者を抱えて昨季16位に終わり、J1参入プレーオフを制して辛くも残留した巻き返しを期す。昨季の計35得点はJ1で2番目に少ない数字だが、経験豊富な大久保嘉人や川又堅碁、東京五輪世代の小川航基、新加入のロドリゲスと前線には駒がそろう。背番号10の大黒柱、中村俊輔の復調もチーム再建に欠かせない。就任6季目の名波浩監督の手腕が試される。

昨季の名古屋も最終節でようやくJ1残留を決め、15位と苦しいシーズン。得点王に輝いたジョーの活躍で得点数は上位陣に引けを取らなかったため、リーグ最多タイの失点数だった守備陣の立て直しが求められる。

鳥栖はスペイン人のカレーラス新監督の下で攻撃重視のスタイルへと切り替え、上位を目指す。前線は元スペイン代表FWフェルナンド・トーレス、3年連続2桁得点の元日本代表のFW金崎夢生、今季加入したスペイン出身の快足ウイング、クエンカと豪華な布陣。昨季J1最少29ゴールだった得点力の向上を狙う。

松本、大分は残留が当面の目標

J2で初優勝し、4季ぶりの昇格を決めた松本はハードワークと堅守がスタイル。就任8季目の反町監督が前回昇格時に果たせなかったJ1残留を最低限の目標とする。6季ぶりのJ1となる大分もJ2を席巻した攻撃力が通用するか。総合力を上げて残留を目指す。