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東京Vに立ちはだかったカテゴリの壁 J1ラスト1枠で磐田が残留

2018 12/10 11:27中山亮
サッカー,ⒸShutterstock
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J2・6位からの下剋上ならず

J1参入プレーオフにギリギリの6位で進出し、1回戦では5位の大宮を、2回戦では3位の横浜FCを劇的な勝利で下し決定戦に進出した東京V。しかし決定戦で対峙したJ1・16位の磐田には及ばず0-2で東京Vに敗れ、下剋上はならなかった。

磐田の布陣は4-2-3-1。J1最終節から全てのトレーニングを非公開としてこの一戦に向けての準備を重ねてきた磐田は今季多くの試合で3バックを採用していたが、この試合では4バック。さらにチーム内得点王の川又がベンチスタートで1トップには小川を採用。大久保がトップ下に入り左SHには怪我で長期離脱していたアダイウトンを起用してきた。

一方の東京Vは、磐田の出方に対応できるように3バックでも4バックでも対応できるメンバーとなっていたがキックオフ時の布陣は3-4-2-1。1トップにドウグラス・ヴィエイラ、シャドウに林と佐藤。中盤のセンターに井上と梶川が入るJ1参入プレーオフ2回戦横浜FC戦の流れを汲んだ形である。

東京Vを襲った磐田のインテンシティ

東京Vは試合の立ち上がりからピッチ内にバランス良く選手を配置することで磐田の守備を広げ、局面での数的優位を作る。レギュラーシーズン及びJ1参入プレーオフ1、2回戦と同じくボールを繋ぎながら試合をコントロールしようという意図が見えた。

しかし磐田のプレッシングがそれを許さなかった。

東京Vの選手が取るポジショニングは論理的かつバランスが取れており、磐田の選手にとってズレを感じてしまうような難しい位置にいる。

しかし磐田はその絶妙なポジショニングに対してCBが本来のポジションから動くリスクを背負ってまで徹底的にアプローチをかける。

この磐田のアプローチが始まる判断のスピードと激しさ、いわゆるインテンシティが、東京Vの選手達が普段体感している強度を遥かに超えていたのだろう。

磐田が積極的に前線からプレッシングをかけるということは後ろの人数は減る。そのため東京Vは最初のアプローチさえ外すことができればビッグチャンスを作ることができる。

しかし最初のアプローチのところでことごとく捕まってしまったのだ。

特に厳しかったのが中盤のセンター。井上も梶川でもJ2では常に対戦相手から名前が出るほどのグッドプレーヤーである。

しかしその2人が磐田のプレッシャーに苦しみ何度もボールを奪われた。

磐田の先制点は41分でGK上福元が磐田のFW小川を倒してしまったPKによるものだったが、PKがなくとも得点は時間の問題だった。

早期の選手交代も戦局打開かなわず

後半に入り東京Vは梶川、ドウグラス・ヴィエイラに代えて渡辺、レアンドロを投入し前線を2トップ、中盤はアンカーに井上が入りその前に佐藤と渡辺が並ぶ3-1-4-2へと変更。

磐田が先制したことで東京Vが前半よりも少しボールを持てるようになったものの、勝負どころでインテンシティの強度の差でチャンスを作れず。後半唯一の決定機ともいえるレアンドロのシュートも磐田のGKカミンスキーがセーブした。

64分に東京Vはさらに李栄直を投入し4-4-2へ変更。この早い時間で交代枠を使い戦局の打開を図るも、80分には田口にFKを直接決められリードを広げられるとそのまま2-0で試合終了。磐田のJ1残留、東京VのJ1参入プレーオフ敗退が決定した。

ここまで劇的な勝利を重ねてきた東京Vだったが、この試合では磐田の前にほとんど何もさせてもらえなかった。

これまでの大宮や横浜FCとは異なり今季1年間J1で戦ってきた磐田には、東京Vの選手が普段体感していないJ1の壁がそこにあった。