「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

J1参入プレーオフ1回戦は東京Vが勝利 昨季降格クラブはJ1復帰ならず

2018 11/26 17:40中山亮
サッカーボールⒸShutterstock.com
このエントリーをはてなブックマークに追加

今季からJ1“参入”プレーオフへ

2012年から始まったJ1昇格へのラスト1枠をかけた「J1昇格プレーオフ」が今季から「J1参入プレーオフ」へとフォーマットが変更された。

「J1参入プレーオフ」に参加するのは、J2で3位の横浜FC、5位の大宮、6位の東京Vの3チームと、12月1日のJ1最終節で決まるJ1 16位チームの4チーム。11月25日にJ1参入プレーオフ1回戦としてNACK5スタジアム大宮で大宮対東京Vの試合が行われた。

戦術的駆け引きで上回りペースを握った東京V

リーグ戦での対戦は共にホームゲームで勝利している両チーム。

大宮はマテウスと大前が前線で並び、最終節のレッドカードで出場停止となった嶋田に代わって右SHに富山を起用した4-4-2の布陣。一方、攻撃の核となる泉澤とドウグラス・ヴィエイラを負傷で欠く東京Vは、1トップに林、シャドウに渡辺と佐藤が入る3-4-2-1となった。

試合が始まると序盤から東京Vが主導権を握っていたが、大宮が無策だった訳ではない。立ち上がりから茨田、富山の大宮の両SHがインサイドに侵入。2トップの下に2人の攻撃的MF。さらにその後ろに2人の守備的MFが立つ、4-2-2-2とも言えるポジションを取っていた。

この布陣は、東京Vが敷く3-4-2-1に対抗する為の代表的な形の1つ。SHが中にポジションを取ることで、東京VのWBはマークする選手が眼の前から消え、逆に守備的MFは大宮のMF4人に囲まれる形となる。つまり、東京Vの選手達は、誰が誰を捕まえればよいかがはっきりしない状態に陥ってしまうのである。

そんな大宮に誤算があったのは守備面。守備時にはSHが中央からサイドに戻り4-4-2とし、2トップの2人は東京Vの守備的MFのラインに配置されていた。これに対し東京Vは、3バックの両サイドがフリーでボールを持てるため、ビルドアップの起点としてサイドチェンジを使って攻撃を組み立て始める。すると、逆に大宮の守備陣が、誰が誰を捕まえるのかがはっきりしない状態に陥ってしまった。

その結果、前半は東京Vがボール支配率67%を記録したように圧倒的にボールを支配。東京Vのボール保持の前に大宮は両SHが自陣に押し下げられていたことでボールを奪っても2トップが孤立状態。攻撃で狙っていた形にまで持ち込むことが出来なくなっていたのだ。

前半途中から独力でボールを運ぶことができるマテウスをSHにまわすも効果は出ず、後半開始から守備時にはマテウスが最終ラインにまで戻るマッチアップを合わせる形へと変更。しかし、これにより当初大宮が狙っていた攻撃の形は出せなくなってしまった。

攻勢から一転、ピンチを迎えるもセットプレーがチームを救った東京V

試合を支配されてしまっていた大宮だったが、幸運だったのは東京Vがチーム内得点王ドウグラス・ヴィエイラと抜群の突破力を持つ泉澤という攻撃の核となる2人を怪我で欠いていたことだろう。

大宮は押し込まれながらも前半をなんとか守りきることに成功し、後半に入っても0-0のまま。さらに59分には東京Vの内田が2枚目のイエロカードを受け退場。引き分けでも勝ち抜けが決まる大宮にとっては願ってもない展開となる。

数的優位を得た大宮は徐々に落ち着きを取り戻し、カウンターを中心に相手ゴール前まで攻め込む場面を作り始めた。

ここまでの攻勢から一転、ピンチを迎えることとなった東京Vだが思わぬ形で試合を動かす。チームのピンチを救ったのはセットプレー。厳しい展開が続いていた71分に佐藤のFKから平が頭に当て、値千金のゴールを奪い、数的不利となった東京Vが先制に成功する。

これで後がなくなった大宮は絶対的な高さを持つシモビッチらを投入し、シンプルにゴール前にボールを入れる形で東京Vゴールに迫るが、立ちはだかったのは東京Vの粘り強い守備。

90分には無人となったゴールに大宮の酒井が頭で流し込もうとするも、ゴールライン直前で今季5試合目の出場となる東京Vの若狭がクリア。さらにアディショナルタイムには大宮のシモビッチの強烈なシュートもポストに弾かれた。

内田の退場から大きく試合の流れが変化した一戦は0-1のまま終了。東京Vが勝利し横浜FCが待つ2回戦へと駒を進めることとなった。

大宮がプレーオフ一回戦で敗退したことで、昨季降格した3チーム全てが1年でのJ1復帰を逃すこととなった。これはJ1が18チームとなった2005年以降では2009年以来2度目となる。