史上5チーム目となる連覇
J1第32節、首位川崎フロンターレは苦手なセレッソ大阪に敗れたものの、同時刻に行われたサンフレッチェ広島対ベガルタ仙台の試合で2位広島が敗れたため、2018年明治安田生命J1リーグの優勝が決定した。
シーズン序盤戦から昨季降格圏ギリギリの15位で残留した広島が史上最高レベルのペースで勝ち点を獲得する独走状態となった一方、ディフェンディングチャンピオン川崎FはACLの影響もあり勝ちきれない試合も多く、一時は首位広島と勝ち点差13まで広がった時期もあった。
ワールドカップによる中断期間以降、特にシーズン折り返してからの後半戦に入ると、川崎は広島との勝ち点差をみるみると詰めはじめ、第28節で逆転首位に立つ。その後はその差を広げていき、残り2試合を残した第32節に優勝を決めた。
J1が18チームとなった2005年以降、2ステージ制だった2015年、2016年を除く昨季までの11シーズンで最終節の優勝決定は9回。最終節前に優勝が決まったのは、3試合を残して優勝を決めた2010年の名古屋と、1試合を残して優勝を決めた2012年の広島の2チーム。ここに川崎Fが加わることとなった。
これで川崎Fは連覇を達成。1993〜94年のヴェルディ川崎(当時)、2000〜01年・2007〜09年の鹿島アントラーズ、2003〜04年の横浜F・マリノス、2012〜13年のサンフレッチェ広島につぎ5チーム目の連覇達成チームとなり、Jリーグ開幕からのオリジナル10以外では初の連覇達成チームとなった。
攻守でリーグトップのスタッツ
川崎Fといえばやはり圧倒的な攻撃力。第32節終了時点でのスタッツをみると、得点数こそ横浜FMに1点及ばず53得点でリーグ2位だが、シュート数、枠内シュート数は共にリーグトップ。パス数、パス成功率、アタッキングサードプレー数、敵陣30mプレー数、ペナルティエリア内プレー数と攻撃面でのスタッツは軒並みリーグトップ。
過去トップクラスのアタッキングフットボールで連覇を達成するという、美しさと強さを兼ね備えたJリーグ史上に残る名チームだと言えるだろう。
今季の川崎Fで印象的だったのは攻撃だけではない。26失点はリーグ最少。むしろ目立つのは守備面の進化である。
先程攻撃でリーグトップのスタッツを記録している項目を上げたが、守備でリーグトップのスタッツを記録している項目もそれと同じようにある。
それは被シュート数、被枠内シュート数、被パス数、ディフェンシブサード被プレー数、自陣30m以内被プレー数、被ペナルティエリア内プレー数の5項目だ。
つまり、川崎Fは最もパスをつなぎ、相手陣内深くに侵入し、多くのシュートを放つチームであると同時に、最も相手にパスを繋がせず、相手に侵入させず、シュートを打たせず、失点が少ない理想のポゼッションサッカーをするチームでもあるのだ。
戦いの幅が川崎Fを真の強者へ押し上げる
そしてこの守備力は戦い方の幅も産むことになった。
ボールを保持する戦い方が特徴的な川崎Fだが、第32節まででボール支配率が50%を下回った試合が第9節の鹿島戦、第11節の神戸戦、第26節の札幌戦と3度ある。
しかし、この3試合はいずれも勝利。高い守備力を持つことで、ボールを保持することがベースにあるチームでありながら、ボール保持率が相手よりも下回った試合でも抜け目なく勝利を奪うことを可能にしている。
1つの戦い方だけを追求するチームは魅力的ではあるが、その戦い方ができなかった場合、結果につながらないことが多い。
本当の意味での強いチームとは戦い方に幅があるチームである。川崎Fがついに真の強者の域に達しはじめた。