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横浜FM vs 仙台戦はエキサイティング 戦術かみ合い乱打戦が続く

2018 10/2 13:29SPAIA編集部
サッカーボールⒸShutterstock.com
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多くの得点が決まる横浜FMvs仙台ベガルタ

台風で2試合が延期となったJ1第28節。土曜日に行われた横浜FM対仙台の一戦は5-2で横浜FMの勝利。両者合わせて7得点が決まるエキサイティングな試合となった。

この対戦はルヴァンカップ、天皇杯をあわせて今季5度目となるのだが大量得点は珍しくない。

最初の対戦となった3月のルヴァンカップこそ0-0に終わったものの、2度目の対戦となる5月のルヴァンカップ再戦ではホームの仙台が4-2で勝利。7月のリーグ戦第16節ではアウェイの横浜FMが2-8の記録的スコアで勝利。8月の天皇杯ラウンド16ではアウェイの仙台が2-3で勝利ととにかく互いに点が入るのだ。

今季J1平均得点が1.3点。つまり数字上では2点を奪えば勝利か引き分けが狙えるのだが、いずれも負けたチームが2得点。このカードがこういった展開になるのには理由がある。

相手を引き込む仙台と敵陣でボールを保持する横浜FM

かつては共に守備に特徴があったが、仙台は渡邉監督、横浜FMはポステコグルーの下で現在は攻撃的なサッカーを繰り広げている両チーム。

この2チームには共通点も多く、攻撃では両者共にピッチを5つのレーンに分け、それぞれのレーンに選手を配置することでポジショニングで優位性を作り出す。

簡単に言うと、複数の相手ディフェンスの間に挟み込む形で選手がポジションを取ることで常に相手ディフェンスに2択を迫り、判断が遅れた隙にパスをつないで攻撃を仕掛ける。そのためどちらも得点は複数のパスで連動する鮮やかなゴールが多い。

しかしこの攻撃に持ち込むまでのアプローチは正反対。

仙台は効果的に攻撃を行う為に相手に攻めさせる。攻めさせるとボールを奪い返す位置が低くなるが、その分敵陣にはスペースができる。攻撃のスタート位置が低くなったとしても、空きスペースへ速攻できる攻撃の形があるからこその選択だ。

今季ここまでの対戦相手のアタッキングサードプレー比率は27.6%とリーグで5番目に高い数値が記録されている。

一方の横浜FMは積極的なボール奪取で敵陣でのボール保持時間を長くなる傾向がある。敵陣に長く滞在するため空きスペースが出来にくく、ゴールを奪う難易度も上がるが、執拗なまでに奪取を繰り返し回数でカバー。ボール保持率がリーグトップの58.6%を記録しているのはそのためである。

このカードは攻撃の為にできるだけ敵陣にいたい横浜FMと攻撃の為に相手を一旦自陣に引き込みたい仙台という、両者の思惑がきれいにかみ合った対戦なのだ。

仙台の思惑を砕いた山中の左足と仲川のドリブル

今回の対戦は、前半2-1で横浜FMのリードで折り返したが、仙台にとっても悪い内容ではなかった。

山中の鮮やかなミドルシュートで横浜FMに先制を許したが、その2分後には仙台がパスワークで横浜FMを完全に崩しきりオウンゴールを誘って同点に追いつくことに成功。

ボール保持率は横浜FMが上回っていたが、仙台も奪ったボールから前線の石原や阿部を起点に両サイドの蜂須賀、関口が絡み敵陣に迫る。両チームの狙いからすると共に一歩も引かない展開だった。

仙台にとって想定外だったのは横浜FMの先制点も、そして追加点となった仲川の得点も相手の個人技でやられてしまったということだろう。

仙台が攻撃の為に相手を引き込むのは当然ながら守り切ることが前提である。そのために守備時は穴のできにくい5-4-1の布陣で人数をかけて守っている。

しかしそこで、穴を突かれた訳ではなく個の勝負で失点してしまうと戦術の前提条件が崩れてしまう。それが1度であればまだしも前半だけで2度となると焦りが生まれる。

2失点目以降、徐々にだが仙台は自陣で奪ったボールを運ぶ際にミスが散見されるようになっていた。

横浜FM vs 仙台ベガルタは今後も白熱

後半は少し仙台が高い位置から守備を行う場面が増える。

ビハインドで前半と同じ状況が続くと相手は人数をかけて攻める必要がなくなり、仙台の相手を自陣に引き込むというゲームプランが崩れてしまう。その為にできるだけ早くに追いつきたい仙台だったが、51分に仲川のヘディングシュートで横浜FMが追加点。守備の意識が前に出たところを完全に崩されてしまった。

この失点が試合を決定づけた。

点差もさることながら横浜FMは人数をかけて攻める必要がなくなり、仙台は自陣で待っているだけでは相手を引き込めなくなったからだ。

仙台は選手を2人交代させ自分たちが普段から取り組んでいる戦い方ではない、高い位置からボールを奪いに行き、敵陣にスペースが無い中でも人数をかけて攻めるしかない状態に追い込まれる。

そしてこれは横浜FMにとっては願ってもない状態。

仙台の無理をせざるを得ないビルドアップに対して横浜FMのアタッカー陣はタイミングを見計らってプレッシャーをかけ、ウーゴ・ヴィエイラがシュミット・ダニエルからボールを奪い追加点。さらに試合終盤にも追加点を決めて5点を奪うと、仙台の反撃をPKによる1点に抑え試合終了となった。

リーグ戦前回対戦時ほどではないものの5-2の大差で横浜FMが仙台を下し連勝。前節の試合までは一時的とはいえ17位に順位を落としていた横浜FMは11位に。

仙台にとってはリーグ戦では2試合続けて大差での敗戦となったが、この両チームに力の差があったわけではない。 今回での仙台は同点に追いついたあと得点のチャンスもあった。5月のルヴァンカップの時の様に先に仙台が2点目を奪っていればスコアが逆になっていてもおかしくなかった。

今季はこの2チームによる対戦はこれで終わりとなるが、今後も同じスタイルを続けるのであればこのカードは今後も得点を奪い合うエキサイティングなカードとなりそうだ。